お昼前、おなじみの店内BGMに包まれて、いつものスーパーに来ています。
お仕事忙しいけど、それはそれ、これはこれで家事もやらないとねー。
「おねーちゃん。今日は、変なのが安いみたいだよ」
すっかり店の名物、幸運の座敷童子と化したアメリちゃんが、スマホの画面を見せてきます。
「ゴーヤ……ほほー、もうそんな時期かあ!」
「なーに、これ?」
「とってーも、苦いお野菜。でも、美味しいのよ」
とっても苦いという言葉に、耳を垂れ、嫌そうな顔をする愛娘。
「あー、ごめんごめん。脅しすぎた。ピーマンの倍ぐらいの苦さと思ってもらえれば」
「おお……それでも苦そう……」
「沖縄には、ゴーヤチャンプルーっていう、これを使った名物料理があるんだけど、食べてみる?」
今度は、私がスマホで画像を見せる。
「……美味しい?」
「私は好きだけど……どうする?」
悩むアメリ。
「昨日、優輝おねーちゃんが、『何でも体験ですよ』って書いてた。だから、食べてみる!」
昨日のLIZEで書いてた、悪趣味映画の布教ね……。ちょっと子供に見せるにはアレすぎて、由香里さんと久美さんに怒られてたけど。
でも、それはそれとして、体験第一というのはいい心構え。ではアメリちゃんを、ゴーヤワールドに連れて行ってあげましょう~。
まず、肝心のゴーヤ。半切りのやつ。ポーク缶はうちにあるから……お豆腐でしょ、あとは三種の神器に……。アメリちゃんの口直しに、食後のデザートでも買ってあげようか。
「アメリちゃん。食後にデザートつけようと思うんだけど、何がいい?」
「ん~……プリン!」
ほいほい。私も買おっと。あとは、ミケちゃんとクロちゃんがお昼過ぎに来るから、みんなでつまめるおやつが欲しいね。ミニどら焼きなんて良さそう。
お茶請けがどら焼きだから、今日はアイス緑茶を作ればいいね。コーラとマスペはなし。
晩ごはんは……アユとかいいなあ。苦いのが続いちゃうけど、アメリがダメなようなら、ワタを取ろう。お味噌汁の具は、こっちも豆腐でいいか。
「アメリシェフ、朝食はいかがなさいますか?」
「おお? うーん、ナポリタン!」
ほいほい。冷凍庫にソーセージ入ってるし……ピーマンと玉ねぎを、一個ずつインしとこう。こんなもんかしらね?
じゃあ、お会計~。
◆ ◆ ◆
ただいま~! っと。
さっそくだけど、仕分けの後は、お手々洗ってうがいして、調理に入るですよ。ごはんもよく炊けてるね。しゃもじで切っておこう。
「さて、アメリちゃん。ゴーヤの下処理をしていきましょう。こんな感じにですね、ワタと種を取るですよ」
調理動画を見せる。聞いたところによると、ワタと種も美味しいんらしいんだけど、以前試してみたところ、う~ん……という感じだった。実と皮以上に苦味が強くて、かなり人を選ぶという感触。なので、もったいないけどポイで。
「おおー、やってみる」
すとんと半分に割り、一緒にそれぞれのワタと種をほじる。
ほじり終わったら、さくさく切っていくですよ。しかし我が娘は、本当に包丁さばきが鮮やかになったもんだ。
ゴーヤを切り終わったら塩で揉み、さらに塩水に十分浸けると、苦味が薄まるのです。というわけで、塩水のボウルにイン!
あとは、アメリにポーク缶を任せ、私は豆腐を切っていく。
豆腐は、キッチンペーパーで包んで軽くレンチンして、水分を切る。
ここで、ゴーヤが十分経つまで、二人で暇つぶし。好奇心旺盛なアメリちゃんの質問に、可能な限り答えていく。
さすがに、今回はダークエネルギーがどうとかの質問が飛んでこなくて良かったけど、芋虫がどうやって蝶に変態するのかについて、訊かれたりしました。たしか、一回どろどろに溶けるんだっけ。
……食前にする話題じゃないわね。
そんなことを話してたら十分経ったので、ザルに揚げて洗い、さらに水切り。
ここで、調味液作成!
お醤油大さじ一杯半、料理酒とオイスターソース大さじ一杯、和風だしをティースプーン一杯。ヨシ!
「アメリシェフは、残りのお豆腐で、お味噌汁作ってもらえますか?」
「らじゃー!」
というわけで、作業分担。
私の作業~。
オリーブオイルで、軽く焦げ目がつくまでお豆腐を炒めます。炒めたら、一度フライパンの外へ。
ごま油を入れて、切られたポークとゴーヤを炒めまーす。ここで、胡椒を少々。
お豆腐を再投入して、調味液と混ぜまして……。
「できたよ~!」
「はーい、ありがとー! 私も、あとちょっと~」
アメリシェフ、一足先に完成。私も頑張りましょ。
溶き卵を回し入れて、鰹節をぱらぱら~っ。踊ってますねえ。全体に絡めたら、完成~!
「おまちどうさま~。じゃ、よそっていこうか」
「うん!」
というわけで、それぞれお皿とお椀へ。ごはんも、お茶碗にイン!
あとは、麦茶を注いでプリンを用意すれば、配膳も完成~。
「「いえ~い!」」
おなじみハイタッチ!
さあさあ、いただきましょう。
エプロンを外し、対面に着席。
「「いただきます!」」
合唱&合掌。
ぱくっ! う~ん、苦美味しい~。アメリちゃんは……?
あ、「苦」って顔してる。
「口に合わなかった?」
「苦いけど、ダメってほどじゃないと思う。美味しいよ」
「無理しなくていいからね」
「だいじょーぶ~」
そういって、麦茶を飲み飲み、ちょこちょこ食べていくアメリちゃん。
とりあえず、お味噌汁も……。うん、美味しい!
「お味噌汁、美味しいよ~」
「ありがとー!」
良き哉良き哉。
……だいぶ先に、食べ終わっちゃったな。愛娘の食事を、のほほんと眺める。
少しずつ、食べるペースがアップしてる。苦味に慣れてきたかな?
そして、無事ゴーヤチャンプルー完食!
アメリを待って、一緒にプリンをいただく。
「おお~。ごちそうさまでした!」
「はい、ごちそうさまでした。じゃ、洗い物と歯磨きね~」
「はーい」
というわけで、アメリちゃんのゴーヤチャンプルー初挑戦は、無事終了!
めでたし、めでたし。
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