「ぐぎゃぁぁぁあ!!」
(あーあ可哀想)
今、目の前でまたひとり人が死んだ。でも私はその光景に見慣れている。見習いの時に何度も先輩と一緒に研修したからだ。
黒服の男達がぐちゃくぢゃになった男の体を掃除する。あとには血溜まりだけが残った。
そして何事もなかったかのようにゲームは再開され、若い男女がいがみ合う。私はそれを見守る役目だ。
そう、私はデスゲームの運営側の人間だ。
残りは二人。これが最終ゲームになるだろう。
『さぁ、最後のカードを選んで!!』
頭から血を流している気味の悪いパンダの着ぐるみを着て、耳に響く甲高い声を出す人物がゲームを進行する。
私はカードを配る。
そして最後のカードを選び、同時に開かれる。
『3対2』
一人は青ざめ、もう一人は歓喜に震える。
『おめでとう! ゲームに勝ったのは二十代会社員のkさんだーー!!』
このゲームでは、プレイヤーは事前に申請した偽名で行われる。職業とかを書くのは自由だ。嘘を書いても良い。
「やったわーー! これでまたあの人が戻ってきてくれる」
女は椅子から立ち上がって喜ぶ。男は机に顔を伏してすすり泣きしている。
『さて、負けちゃったヒロ君は処刑の時間だよ。さとねちゃん宜しく〜〜」
「はーーい!!」
デスゲームに似合わない、間延びした声を出す少女が返事をする。
最後のプレイヤーを殺すのは、運営側の役目だ。
「よっと……」
私、千堂聡音はチェンソーを持つ。私用なので軽くなっているが、それでも女の子にとっては重い代物だ。
「いっくよーー!」
「ひぃ、やめてくれ。俺には妻と娘がいるんだ、ここで死ぬわけには……」
「だったらこんな所に来ないで、真面目に働くべきだったね」
それーー! と私はチェンソーを振り下ろす。ぶるぶると震えて動けなくなっている男に刃を当てるのは簡単だった。
肉に刃がめり込み、嫌な音をたてながら進む。
「あぎぃひぎぃぐべ」
男から発せられる断末魔を聞きながらゆっくりと切断していく。最初の頃は慣れるまで苦労したものだ。
やがて男の胴と首が離れた。
「ふうっ、終了ーー」
『さとねちゃんお疲れ様ーー。勝者のkさんはボクについて来て』
「ふふっ、お金……お金」
女はぶつぶつと呟いている。もうお金を勝ち取った気でいるらしい。たった1回のゲームに勝ったくらいで10億貰えると本気で思っているのか?
ここはデスゲームだ。
扉の中に入った瞬間、黒服の男達が女をとりおさえ素早く猿ぐつわと目隠しをした。だが諦めの悪い事に女は激しく抵抗した。
「なっ、私は勝ったのよ! 離しなさい!!」
デスゲームのマスコットであるパンダ君と目を合わせ、にかっと笑い、混乱する彼女に言ってやった。
「10億円の切符獲得おめでとうございます。2回戦も頑張って下さいね」
それを聞いた女の顔は絶望に染まっていった。
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