第六から第八試合と順当に終わり、二回戦へと舞台は移った。
スティード君達の出番だ。この分ではスティード君達はヒイズルの奴らとは対戦できないか。悪いがあの刀は私がいただくとしよう。
『さあ! 決勝トーナメント二回戦を行います! 第一試合は! 王国一武闘会魔法なし部門の覇者! スティード選手と! 相棒のターブレ選手の入場です!』
『対するは! 前回でも好成績を修めました極蔵院流の槍使いカジミール選手! そして同じく極蔵院流からスラン選手の入場です!』
『ほぉう? 賭け率は三対二かぃ。意外に拮抗してるねぇ。』
カジミール選手は見覚えがあるぞ。確か前回はシフナート君と対戦してたよな? 用心棒貴族シフナート君……てっきり今回も参加しているのかと思ったが。
『それでは二回戦第一試合を始めます! 双方構え!』
『始め!』
素早く間合いを詰め寄るスティード君とバラデュール君。どっしりと構えるカジミール選手達。少し長めの槍を使うようだ。
スティード君が珍しく剣を投げつける。いきなり勝負に出たのか? カジミール選手は落ち着いて弾き飛ばす。隙などできない。それでも正面から詰め寄るスティード君。もう槍の間合いだ……無数の突きがスティード君を襲う、まさに槍衾だ……剣のないスティード君はどうするんだ!?
『おーっとお! カジミール選手の槍がどんどん短くなっていくぅー! 長剣を捨てたと思ったスティード選手! いつの間にか手に短剣を握っているぅー!』
『かなりの業物だねぇ。カジミール選手の槍もそれなりの業物だが、桁が違うねぇ。』
おお、あれは! 国王から貰ったテンペスタドラゴンの短剣! さすがスティード君、出し惜しみなんかしないんだな。きっとカジミール選手が強敵と見て、早々と切り札を使ったんだろうな。カジミール選手は槍を使いながらも水球の魔法も使っているが、全てスティード君に斬り裂かれている。そしてなす術なく胸に致命傷をくらった。
『おーっと! 早くも勝負あったかぁー! 恐るべき切れ味だぁー!』
『あの短剣はヤバいねぇ。欲しくなっちまうよぉ。ムラサキメタリック以上だねぇ。』
一方バラデュール君はスラン選手を引きつけていたようで、どうにか負けない戦いをしている。そこに後ろから斬りかかるスティード君。やはり容赦ないな。
『勝負あり! スティード・バラデュール組の勝利です!』
『結構歳の差があるようだがねぇ。それでも圧勝かい。やるもんだねぇ。』
『カジミール選手達はスティード選手達の八歳上ですね。しかもカジミール選手は六等星の冒険者ですが、現実は厳しいですね。さあっ! 第二試合です!』
やはり子供武闘会なのに年齢制限なしかよ。ダミアンが出てるぐらいだもんな。ガバガバかよ。
『うちのボスの出番だねぇ。相手はヒイズルの二人かい。ちっとは楽しめるといいんだがねぇ?』
ラグナのやつ、解説する気あるのか? ただの観客じゃないか。
『さあさあ! 第二試合を始めますよ! 一組目は言わずと知れた魔王カース選手と重荷のダミアン選手! しかし、ここまではハンデが全く効いておりません! ヒイズル組の実力は未だ未知数! 恐ろしく切れる剣、いや刀を持っていることもあり健闘が期待されます! おや? カース選手、珍しく腕まくりをしていますね? なぜ……あれは籠手でしょうか? 前腕に木でできた籠手をしているようですが……』
『ふぅん、アタシも見たことぁないねぇ。ボスのことさぁ、きっと普通の籠手じゃないんだろうさ?』
ラグナ正解。これは私がいつも身につけているエルダーエボニーエントの籠手だ。フェルナンド先生ですら斬れない籠手だぜ。
「ようセキヤ。お前の刀が欲しいからよ。俺が勝ったらくれよ。お前が勝ったらこの籠手をやるからさ、片方な。」
「あぁーん? そんな籠手だぁ!? しかも片方じゃとぉ? 賭けになんねぇぞ、おぉ?」
「ふふっ、試してみるか? ほれ、斬ってみろ。」
そう言って私は左手を前に出す。
「おめぇ……試合前に片手になっても知らんけぇのぉ……はっ!」
『何をやっているんですかカース選手! 無防備に差し出した左腕を! セキヤ選手に斬らせたぁーーー!』
『へぇ? やっぱボスの装備だけあるねぇ。よく見てご覧よ?』
『あああーーーっと! 切れてない! 斬ったと思ったのに切れていません! ムラサキメタリックの剣でも切れない籠手を装備しているぅー!』
『正確にはさっき装備したんだろうねぇ。防具の規定があるからねぇ。』
「くっ、おめぇそりゃ何じゃあ! 俺のムラマサでも切れんなんぞぁ初めてじゃあ!」
「賭ける気になったか? 賭けるならクワナも賭けてもらうぜ? 籠手は二つあるからな。」
「僕は賭けたくないんですがね。」
「情けねぇことを言うんじゃねぇ! 俺らぁヒイズルもんは逃げねぇんじゃあ!」
「よし、なら約束だぜ? お前らが勝ったらこの籠手をくれてやる。俺が勝ったらそのムラマサ、二本とも貰うからな?」
スティード君に一振りあげよう。
「おおっぐっがぁ……」
「はいっぐぉ……これが魔王の契約魔法ですか……」
私のことも知っていたようだし、契約魔法のことも知っていたのか。
『賭けております! 互いの武器、防具を賭けております! 公衆の面前で賭け事とはけしからん!』
『みんな金賭けてるじゃないかぁ……アタシは解説だから賭けに行けないけどさぁ。おっと賭け率は十五対一だねぇ。少しはヒイズル組に勝ち目があると見た奴もいるんだろうねぇ。』
『さあ! 準備はいいですか!? 二回戦第二試合を始めます! 双方構え!』
『始め!』
『氷壁』
ダミアンをがっちりガードして……
『榴弾』
ギリギリ胴体には当てないように数百発の鉄球が襲う。両手両足がほぼミンチだ。お互い防御が紙だからよく効くよな。
ただまあ、ついフェルナンド先生やアッカーマン先生を相手にするつもりでやってしまったのは、さすがにやりすぎだったな。後でポーションを差し入れてやろう。
『しょ、勝負あり! だから少しは盛り上げてくださいよ! 運営の苦労も考えてください! 見てください! 観客が冷え切ってるじゃないですか! 明日の大会だってあるんですよ!?』
『明日はボスには参加をご辞退願うかねぇ。絶対盛り上がらないよ?』
確かに明日の賞品を考えたら参加しない方がいいな。それより早くこいつらを運んでやれよな。手足が治らなくなっちまうぞ?
「お、おいカース……さみぃぞ……死ぬかと思ったじゃねーか……」
「おお悪い悪い。あいつらの刀だと氷壁も簡単に斬られちまうからさ。分厚くする必要があったのさ。」
五メイル四方の氷で覆っておいた。しかもダミアンが身動きできないほどギチギチに。一分もすれば窒息だろうな。
「それより、今のうちにあいつらに魔法尋問やっちまえ。どうもヒイズルはローランド王国を侵略しようとしてるからよ。洗いざらい吐かせてしまいな。」
「おお、だからあそこまでボロクソにしたのか?」
「半分はな。もう半分は用心しすぎただけさ。」
「まあいいさ。ちょいと行ってくらぁ。」
そして私は刀をゲット。わざわざフランティアまで何しに来たんだろうねー。
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