さて、今日からアレクは冬休みだ。私達は珍しく早起きをした。朝食を済ませたらすぐに出かけよう。肉と野菜はバッチリ買い込んである。足りないのは魚と貝なのでタティーシャ村に寄らないといけないな。
タティーシャ村のみんなは元気そうだった。ツウォーさんも村長も。
雲丹、鮑、栄螺など。それ以外にも見知らぬ貝の数々。ホタテも交ざってるかな。あれこれとたっぷり獲ってもらった。私も沖合で適当に魚を釣った。ちょっと大物を狙ってみようか、とも思ったのだが少しでも早く楽園に行きたいのでやめた。さあ、お昼もご馳走になったことだし、いざ楽園へ!
道中のスティクス湖にて。この間植えたイービルジラソーレはどうなったかな?
おおおー! 生き残ってる! 数は増えてないが枯れずに立派に生えてるじゃないか! こんな過酷な環境なのに、すごいな。やっぱ水場があると違うのかな。私達が近づくとマシンガンのように種を飛ばしてきやがった。かなり元気じゃないか……
「あれってイービルジラソーレよね? なぜこんな所に生えているのかしら?」
「あはは、僕が植えたからだよ。グリードグラス草原から丸ごと持ってきちゃった。砂漠に緑が欲しくてさ。」
「カースったら……意味が分からないわ。ここに水を飲みに来る魔物も大変ね。」
「そうだね。そのうち湖をぐるりと囲むように生い茂ってしまうかな。それはそれで見応えのある景色かもね。」
「ピュイピュイ」
あの種を食べたいって? お腹こわさないでね。コーちゃんの腹から芽が生えてきたら嫌だよ。
ヘルデザ砂漠の岩石地帯で巨岩の補充をして、ついに楽園に到着した。
いつぶりだろう。そこまで久しぶりではないはずだが、やけに懐かしく感じる。
掘立小屋も多少増えているようだ。中には小屋と呼ぶには立派な建物もあるではないか。家賃割増にしようか。
「ピュイピュイ」
汚れ銀の湯船に魔力を込めて? いいとも! 久しぶりだもんね。ほいっ。
うーん。昔は小さい汚れ銀でも満タンにするのに四日ぐらいかかってたもんな。それが今では一割も魔力が減らない。地道に鍛えてきてよかったよなぁ。
「ピュピュイピュイー!」
おお、魔力が豊潤で最高? よかったよ。じゃあ後で夕食にしようね!
あ、落ち着いたら思い出した。母上に手紙を渡すのも忘れたし、おじいちゃん達のことも聞くのを忘れてた。まあダミアンが私に何も言わなかったってことは領都周辺には来てないってことだな。どこをウロウロしてるんだろうな。少し心配になってきたぞ。まあいいや。冬休みが終わってから考えればいいや。とにかく今はアレクとの冬休みを全力で楽しむんだ! さしあたって、まずは風呂だ! 楽園の邸宅自慢の大浴場、マギトレントの湯船だ!
「あぁ……領都のカース邸の湯船もいいけど……こっちの湯船もいいわぁ……」
「だよね。外は寒かったし、芯から温まるよね。」
通常は湯船の外で体を洗うのだが、このマギトレントにはお湯の浄化作用がある。だから湯船の中で体をごしごし洗ったとしても全く問題がない。つまり私は今、湯船の中でアレクを洗っている。いつものことだがアレクの肌はすべすべだ。
「カ、カース……そろそろ交代よ……」
そうはいかない。
「カ、カース……寝室に……」
そうはいかない。
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「ピュイピュイ」
コーちゃんによって起こされてしまった。ここは寝室か。いつの間にか寝ていたようだ。もう夕方かな。コーちゃんは空腹か。私もだ。
「う、うぅん……カース?」
「起きた? 夕食にしよう。お腹すいたよね?」
「あっ、私が作るわ! カースはゆっくりしてて?」
おおっ! アレクの料理! 久しぶりだ! これは嬉しい!
「ありがと。楽しみだよ。」
そしてアレクはコーちゃんと連れ立って台所へと向かった。
よし、待ってる間はいつも通り錬魔循環でもしてようかな。ここにいる間は魔力放出はできないからな。いくらアレクがいるからってこんな危険な場所で魔力を空っぽにするわけにはいかない。
「ピュイピュイ」
おっ、準備オッケーだね。コーちゃんありがと。アレクの料理は旨いからなぁ。あぁ楽しみ。
やはり最高だった。何やら元気が出る薬を入れたって話だったが、その効果はいつも通り……
アレクは悪い子だ。楽園初日だってのに……
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