異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

139、カース、動く

公開日時: 2022年7月16日(土) 10:38
文字数:1,674

結局手本引きをすることなくラグナは動き出した。私はひとまず辺境伯家に行ってみよう。まずはダミアンと話す必要があるだろう。




着いた。門番さんは快く通してくれる。セバスティアーノさんはいないようだ。勝手知ったる辺境伯家。ダミアンの部屋はギリギリ覚えていた。お、ここだ。

ノックもせずにドアを開ける私。部屋の中ではメイドさんが……寝そべるダミアンの上に乗っていた。こいつ……


「きゃあ!」

「おおカースか、まあ待てよ。もう少しだからよ。」


「邪魔したな……」


何が『もう少し』だこの野郎……おぞましい光景を見そうなので一旦外に出る。帰ろうかな……


五分後、身嗜みを整えたメイドさんが出てきた。私に会釈して何食わぬ顔で去って行ったな。


「呑気にお楽しみかよ。ダミネイト一家の奴らはあたふたしてるぜ?」


「おう、オメーにも心配させたか。すまねーな。ちぃとばかり恨みを買っちまったみてーでよ。親父殿の力も借りて対策してるところよお。」


「辺境伯閣下が動いてんのか。俺も好きに動くからよ。その辺りを伝えに来たってわけだ。」


ついでにラグナのことや毒針のことも伝えておく。


「そうかよ。オメーも動いてくれるんなら俺も心強いわ。頼りにしてんぜ?」


「まあ、いくらお前でも死んだら寝覚めが悪いからよ。情報があったらしっかり出せよ? 相手が何人かも分からねーんだからよ。」


「おお、そのラグナだっけ? そいつもここに入れるようにしておくからよ。気軽に来るよう伝えておいてくれや。」


「おう、お前も気を付けてな。ここにいれば安全とは思うがよ。じゃあな。」





さて、私はどうしよう。こんな時どう動けばいいかなんて分からないんだよな。たいていは『隠形』を使って怪しい奴の後をつけるだけだったもんな。その怪しい奴が見つからないと、やることがない。

あっ、狙われてる理由を聞くのを忘れてた。恨みを買いすぎたとか言ってたな。他の闇ギルドを領都から叩き出した件かな? もはやダミアンが狙われていることなど瑣末なことだが。


貴族ネットワークは辺境伯が動いている以上万全だろう。

闇ギルド関係のネットワークもダミネイト一家がばっちり押さえているはず。そこにラグナが加わればより確実と言える。

同様に、冒険者関係も押さえているだろうから私の出番などないか?

いや、私にしかないネットワーク……それは子供ネットワークだな。これ系の情報に詳しい子供と言えば……セルジュ君かな? さっき別れたばかりで行きにくいが、寄ってみよう。




到着。思えば一人でセルジュ君の部屋に来るのは初めてかな。ノックしてもしもし。


「はい?」


帰ってきたばかりで来客かよ、面倒だなって声だ。


「やあセルジュ君。さっきぶり。」


「カース君!? どうしたの? まあ入ってよ。」


おお、セルジュ君は机に本を広げて勉強をしていた様子だ。まさか夏休みの宿題じゃあないよな?


「実はセルジュ君に情報を探って欲しいと思ってね。ダミアンなんだけど……」


簡単に事情を説明する。


「なるほど……ダミアン様も大変なんだね。分かったよ。あれこれ聞くだけ聞いてみるね。何か分かったらカース君ちに知らせに行くよ。」


「ありがとね。なんせ敵の数も素性も分からなくてさ。しかもなぜか『毒針』にムカついてしまってね。絶対仕留めたいんだよね。」


「カース君がそんなに敵意を剥き出しにするなんて珍しいね。僕も気を付けながら探ってみるよ。」


「安全第一で頼むね。ラグナが毒針は超一流って言ってたからさ。あ、これ費用ね。こんな場合はお金を惜しむと上手くいかないらしいからさ。」


金貨で百枚。これだけあれば足りるだろう。


「こんなに!? 多過ぎるんじゃない!?」


「いいのいいの。どうせ後でダミアンに払わせるから。気にせずガンガン使ってね。」


「そう? なら遠慮なく……カース君って友達想いだよね。」


そうかな。そうかも。セルジュ君を危険なことに巻き込んだ気もするけど、まあ問題ないな。セルジュ君だってクタナツの男。見た目は丸々してても心はクタナツなんだから。


さて、これで私に出来ることはもうないか?


うーん……

古い話、昔話の情報を集めるには……クタナツだ!

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