いつもの賭場に到着。この辺りはもうすっかり治安が良くなっている。
「手本引きやってる?」
「いや、今日はチンチロです」
受付の対応もましになってる。ここにもチンチロがあるとは。丁半があるのだからおかしくないのか? まあいいや、どこに座ろうかなー。
「ねえカース、どうやって遊ぶものなの?」
「ああ、あそこの小さなお椀の中にサイコロを三つ落とすんだよ。そして出た目によって勝敗が決まるんだよね。」
あっ、あいつらも来てたとは……
「おーいダミアン。何やってんだ?」
「おおカース。休日の昼から賭場たぁよ? オメーもダメ人間かよ。」
「ボスもチンチロやんのかい?」
ダミアンめ、ちゃんと自分がダメ人間って自覚してんのか。
「例のドラゴンの魔石の件でな。こんな所に何かネタが転がってないかなーなんて思ってな。」
「ここは健全な賭場だぜ? そんなもんあるかよ。その件はダミネイト一家も動いてっけどよー。さっぱり情報ないぜ?」
「だよなー。素直にチンチロ楽しむわ。」
やはりダミアンは弱かった。
「くそっ、倍払いかよ!」
「あっ、カースこれって!?」
アレクはピンゾロを出した。無条件で勝ち確定、賭け金の三倍を貰えてしまう!
「へっ、 倍付けだねぇ。」
ラグナもそれなりに勝っているようだ。
私は……結構負けた……
ダミアンは大負けのようだが。
「イカサマだー! なんでその女三回もピンゾロのアラシ出してんだー!」
「そうだそうだ! おかしいだろ!」
ちなみに同じ目が三つ並ぶことをアラシと言うらしい。アレクは三回もピンゾロを出したんだよな。凄いぜ……
そして暴れ出す客二人。マナーも悪ければ身なりもよくないな。
お、奥から店員が出てきた。
「お客さん、オイタをしちゃあいけませんや。ちょいとこちらにお願いできますかい?」
「うるせぇんだよ! どうせ店ぐるみでイカサマやってんだろ!」
「そうだ! 黙ってて欲しけりゃ金返せや!」
酔ってんのか? こんな真っ当な店にイチャモン付けたらどうなることやら。
素早くなだれ込んでくる他の店員。数人がかりスパッと確保。バカな二人はドナドナされていった。そろそろ夕方だし、私達も帰るとするかな。
「じゃあ帰るわ。ダミアンにラグナ、またな。」
「お先に失礼しますわ。」
「ボスにお嬢、待った。せっかくなんだからどこかで食べて行かないかい? アタシは結構勝ったからさぁ。奢るよ?」
「それがいいな! 行こうぜ!」
ある意味ダブルデートか。悪くないな。
「よし、なら行こうか。焼肉がいいな。ギルドの近くの汚い店。」
「おお、あそこか。久々だな。」
「へえ? ボスが行きたがるほどの店かい。期待しちまうねぇ。」
「いつかエリザベスお姉様と行ったわね。」
到着。相変わらず汚い店だ。でもいい匂い。
「さあボス、好きに注文しておくれよ。」
「おお、すまんな。じゃあ遠慮なく。マスター、ブラックブラッドブルあるー?」
「あるわけねーだろ!」
ないのか……あれのタンはすごく美味しかったのに。
「じゃあお任せのセットでいいや。」
酒と焼肉。わいわいと楽しく堪能していると何者かが店に入ってきた。ダミアンに近寄って来て何やら耳打ちしている。
「おいカース、おもしれーことが起きてんぞ? さっきのあの二人な、盗賊だったわ。」
「盗賊? どこの奴ら?」
「王都で暴れた奴らがいたそうじゃねーか。あの生き残りみたいだぜ。他にも興味深い情報持ってそうだからよ、騎士団で取り調べするぜ。」
「へー、確かあの時の盗賊ってやたら手際がよかったんだよな。幹部連中は捕まってないらしいし。」
「ほぉー、こいつぁおもしれーことになるかも知んねーな。」
「期待してるぞ。何なら王都まで連行してやってもいい。面白くなればいいな。」
そんなこともあったよな。まだまだ未解決な事件が残ってるもんな。面倒なことだ。
でもまあエルネスト君の用が終わったら王都に行ってみるのもいいかもな。
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