私は自宅にてマーリンの淹れてくれた紅茶を飲んでいた……コーちゃんと一緒に……
はぁ、アレクが心配だ……ポーションは飲んでくれたのだろうか……
「坊ちゃん、お昼はどうしますか?」
「三人分でお願い。もし余りそうならマーリンも一緒に食べようよ。」
意外とマーリンはフランクだからな。たまに二人で食事をすることもある。
どうしてもアレクと連絡がつかない時はコーちゃんに潜入してもらおう。
そして昼時。アレクは来ない。今夜は辺境伯邸でパーティーがあるのだが、どうしよう。ダミアンと約束があるので行かなければならない。
「坊ちゃん、今日はお嬢様はどうされたんでしょうね?」
「分からないんだよね。体調が悪そうってことは分かったんだけど、女子寮だから入れなくてね。」
「じゃあ私が行ってみましょうか? あそこは女性なら入りやすいですよね?」
「いいの! お願い! これを渡しておいて!」
マーリンにポーション二本を渡す。これはいいアイデアだ! なんとありがたい!
「じゃあ早速行ってきますね。坊ちゃんはゆるりとお待ちくださいな。」
マーリンの見た目なら警戒されにくいはずだ。なおかつメイド服なのでアレクサンドル家の関係者とも思われやすい。ポーションさえ渡してくれれば……あぁ心配だ……
一時間が経とうとする頃、ついに!
「カース!」
「アレク!」
アレクが勢いよく私に飛びついてきた。元気だ。何て嬉しいことだろう。元気が一番だ。
「体調はどう? 遂に首席をとったけど、大変だったって聞いたよ?」
「そうなの。昨日の実技のテストで張り切り過ぎて……首席はとれたけど、魔力は空になるし怪我をするし他にも色々あって……」
「やったね! 頑張ってるもんね! すごいよ! それより怪我って?」
「ううん。もういいの。カースのポーションのお陰で治ったわ。いつもありがとう。」
「よかったよ。じゃあせっかくだからこれも持っておいて。」
私はポーションと魔力ポーションを二本ずつ渡しておく。
「ごめんなさい。受け取れないわ。いくら何でも私は貰い過ぎだもの。そんなのを持っていたら甘えが出てしまう。だから怪我なんか……」
「えらい! さすがアレク! 感動したよ! 僕が甘かったよ!」
「そんなことはないわ。私が甘かったのよ。やっと首席にはなれたけど、その程度で怪我するようじゃまだまだよね。」
「そうだね。まだまだだね。それはさておき、かなり心配したよ。でも無事でよかったよ。女の子達から不審者扱いされたりして大変だったからさ。」
「ごめんなさい。マーリンが来てくれるまでロクに身動きできなかったの。前日のテストだけが原因でもないけど……ポーションが本当に助かったわ。」
つまり、最初の女の子がポーションを届けてくれていたら解決だったのか。ムカついてきた。誰も名前を聞いてないからな。あいつら許さん。
詳しく事情を話しておかねば。
結論から言うと不審者はいないようだ。ならば誰が流した噂か知らないが、私をターゲットにした噂と見える。
「あの三人かしら? 前首席の子の取り巻きに変な三人組がいるの。」
「よく分からないけど、アレクに届けてもらおうと思ったポーションを二本、その子達が没収したらしいんだよね。かなり許せないよね。改めてアレクに届けてくれるように頼んだけど、届けてなかったんだよね。」
「ええ、マーリンからのポーションだけね。きっちり追求しておくわ。許せないわね。」
それにしてもアレクが無事でよかった。これでひと安心だよ。ふぅ……
「よし! 気を取り直して今夜のパーティーのことを考えよう! ダミアンが面白い余興を見せてくれるんだって!」
「ふふっ、楽しみね。本当に仲が良いのね。少し羨ましいわ。」
「アレクをあっと驚かせてみせるよ! 楽しみにしててね!」
「カースと一緒だと驚くことだらけなのよ? 本当にもう……」
あ、辺境伯主催のパーティーなら四男とかもいるのかな。面倒なことになるかな? 以前かけた契約魔法は解いておくか。その方が無難かな。でも次に私の邪魔をしたら……
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