異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

65、キアラとプール

公開日時: 2021年1月16日(土) 10:04
文字数:2,402

家に帰ったら早速魔力庫の実験をする。

きっと他の子達も同じことをしているのだろう。


まずは庭にあるものを入れてみよう。使い方は理解できているので、確認だ。


・手や足が触れていれば収納することができる。

・木材は収納できるが、生えている木は収納できない。切り落とした枝や切り倒した木なら収納できる。

・重い岩でも鉄の塊でも収納できる。ただし地面に固定されてないことが条件、埋まっている部分が全体の一割未満なら収納できる。

・動いているものは収納できない。例えば落ちてくる石をそのまま収納することはできない。

・容量は25mプールを上に十個重ねたぐらい、重量的にはそれが全て鉄だったとしても収納できる。

しかし長辺が25mを超えるような物は収納できない。

・生物が触れているものは収納できない。例えば真剣白刃取りをしたとしてもその刀のみを収納することはできない。

・内部をフォルダ分けすることはできないが、内部の物同士は干渉しない。血だらけの死体を入れても他の物が汚れることはない。

・何が収納されているか分かるが、並び替えやサーチはできない。大量に物を収納してしまったら取り出すのがかなり面倒なことになる。

・一定の形を持たない物を入れることはできない。水や砂などは入れ物に入れてからでないと収納できない。


中々複雑なような気もするが、すぐ慣れるだろう。慌てて何かを出し入れすることもそうそうないだろうし。


しかしこれがあれば盗み放題だが、きっと何らかの対策はあるのだろう。するつもりもないが。

まずないとは思うが、魔剣や聖剣などは収納できるのだろうか?

剣自体が魔力を持っていそうだ。そんなものを収納して入れ替わってしまったら恐ろしいぞ……


それにしてもたくさんの魔法を覚えたものだ。楽器を弾く要領で何でも覚えられるという話だったが、明らかに楽器より簡単に覚えてしまっている。

基礎の基礎から母上に厳しく叩き込まれたからなのだろう。やはり『親の言うこととナスゥビの花は万に一つも徒がない』と言うことだ。


最近ではもう循環阻害の首輪が役に立たなくなっている。より強力な物をおねだりするべきか……いやしかし、もう一生分の誕生日プレゼントを貰ってしまったため言いにくい。金策が必要か……




それより魔力庫の活用方法だ。

まずはいつでも暖かい風呂に入れることだ!

さすがに空中風呂はまだまだ無理だが、景色のいい場所に移動してから落ち着いて入ることはできそうだ。

甘いホットミルクも大量に保存できる。

風呂のお湯は少しずつ汚れていくだろうから何か浄水できる魔法を覚える必要はあるな。まあ新しい水で沸かし直せばいいだけではあるが少々面倒だな。


ところで最近キアラが私の露天風呂に興味を示している。入りたそうな顔をしているが絶対だめだ。レディが野外で裸になるなんて認められる訳がない。




いや待てよ?

もうすぐ夏だ。つまりプールだ。すなわち水泳だ。

泳ぎを教えておかないとかわいいキアラが溺れてしまうことがあるかも知れない……


そうだプールを作ろう!

風呂は魔力庫にしまい込んで、新しく大きなプールを作るんだ。

そしてキアラに着衣水泳を教えるんだ!

まずは材料に拘るぞ!




もっとも、プールの材料に拘りたくても私には鉄しか用意できない。

仕方がないから鉄で大きくプールを作り、磨きまくるしかない。

大変そうだがキアラを入れる時点で怪我をさせないように、わずかなササクレもなくなるよう磨きをかける。

角も全て丸く安全に仕上げておこう。


外形は簡単に作れたが、磨きが大変だ。サンドペーパーや砥石なんてないから、そこらの砂や岩や鉄で代用している。

鉄は金操で操ればよいが、砂や岩が大変だ。

ただでさえ魔力をバカ食いする金操なのに、砂や岩を操作するとさらに何倍もの魔力を消費してしまう。


修行にはもってこいだが、これはきつい。

しかも中々きれいにならない。以前空を飛ぶ用の鉄板の底を鏡面仕上げにしたが、面積はあれの百倍以上だ。

形状もあれより複雑なので苦戦している。


ちなみにサイズは横十メイル、縦十五メイル、深さは三段階、半メイル、一メイル、一メイル半だ。




磨き続けること二週間、鏡面仕上げとはいかないが表面が滑らかに仕上がった。

これなら安心してキアラを入れてやることができる。

さあキアラを呼んでこよう。


「カーにい、何これ?」


「ふっふっふー、キアラのために作ったんだぞー。プールと言ってな、キアラのようなお姫様しか入れないんだぞ。」


「いつもカーにいが入ってるあれとはちがうのー?」


「もちろん違うさ。あれよりだいぶ大きいだろ?」


「ほんとだー。大きいー。」


「さあキアラ、服を着たまま入るんだぞ。今日は泳がず水遊びをしよう。ここからあっち側には行くなよー。」


「みずあそびー? どうするのー?」


「簡単だよ。水をバシャバシャかけるだけ。こんなふうに。」


そう言って私はキアラに水をかける。


「あははーおもしろーい。私もやるー。」


キアラはそう言って手足をバタバタ動かし水をかけてくる。

短い手足を一生懸命動かして水を私にかけようとするが、水は上にしか弾けない。

なんてかわいいやつだ。


「いいぞいいぞー。さすがキアラ、もっと来い。」


「おもしろーい! カーにいもっともっと!」


よーし、それなら面白い物を見せてやろう。


水球みなたま


キアラの頭サイズの水球を何個も作り出し、お手玉のようにクルクルと回してみる。


「どうだーすごいだろー。」


「すごーい! どうなってるのー? お水が生きてるみたーい!」


「ふふふーこれが魔法なんだぞー。キアラもやりたかったら母上にお願いするといいぞ。」


「やりたいやりたーい! お願いするー!」


こうして日が暮れるまで私とキアラは水遊びに興じたのだった。

キアラももうすぐ三歳、魔法の稽古を始めたという話は聞いてないので、気になっていた。これで魔法にも興味を示したことだろう。後は母上がうまくやるに違いない。

私に魔法の指導なんかできないしな。

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