「ちょっと気になったんだけど、召喚の儀式って何?」
「何よアンタ? そんなことも知らないの? ああ、学校行ってないものね。仕方ないわね。教えてあげるわよ!」
ひどい言われようだぜ……
お姉ちゃんの説明によると魔法学校の五年生はみんなやるらしい。卒業試験として。と言っても詠唱まで確立されている召喚魔法なので誰にだって召喚獣は現れる。半ば卒業の景気付けのような意味合いらしい。
「その後、召喚獣だけを戦わせるイベントもあるわ。そこで私のアトレクスは三位になったってわけ。」
優勝じゃないんかい! まあいいけどさ。
「その時優勝したのはどんな召喚獣だったの?」
「……スライムよ……」
「うっわ、それは相手が悪かったね。どうしようもなくない?」
「ええ……私だってアトレクスを戦わせなかったわよ。手に負えるわけないわ……」
うちのカムイも反則だが、スライムはなぁ……魔物同士の対戦だと戦いにくいよなぁ……人間や魔物どころか大抵の物は溶かしてしまうし……
カムイなら勝てるよな?
コーちゃんならどう?
「ピュイピュイ」
スライムは不味いから嫌い? 食べたことあるのね……さすがコーちゃん。
「それよりカースは召喚獣いないの?」
「あれ? 言ってなかったっけ? 僕の召喚獣はカムイだよ。覚えてる? 白いフェンリル狼の。」
「はあ!? あれが召喚獣ですって!? アンタずっと喚びっぱなしにしてたっての!? 同命の首輪だってしてたじゃない!?」
確かに見た目はペットだよな。
「お姉ちゃんなら知ってるよね? あれは具現化だよ。だからずっと側にいたんだよ。」
それなのにあいつはよく一人旅に出るよな……全然具現化された召喚獣じゃないじゃん! 普通の召喚獣と変わんないし!
「具現化ですって!? 本気で言ってるの!?」
「母上が言うんだから間違いないよ。ねーコーちゃん?」
「ピュイピュイ!」
困った時は虎の威を借る狐作戦だな。
「そ、そう……叔母様がそうおっしゃるなら……じゃ、じゃあ何で今ここにいないのよ!」
「それがね。カムイって修行好きなんだよ。たぶん今頃ノワールフォレストの森か山岳地帯で自分を鍛えてるんだと思うよ。ね、コーちゃん?」
「ピュイピュイ」
あいつもストイックな狼だよな。頼もしい。
「そ、そうなの……アンタは相変わらずね……」
結局お姉ちゃんとの対戦で収穫はなかったな。せいぜい今後は土中にも自動防御を張り巡らせるかどうかのきっかけにはなったが。
「それよりお姉ちゃんさ。マルセルとはどうなってんの?」
茶飲み話で伯母さんから聞いたぞ? アジャーニ家のマルセルといい感じらしいじゃないか。
「なっ! アンタ何で知ってんのよ! べ、別に私はマルセルのことなんか……き、嫌いじゃないけど……でもあっちはアジャーニ家だし……大事な時期だし……それより何よアンタ! なにマルセルを呼び捨てにしてるのよ!」
「そりゃあ友達だからだよ。対戦した仲だしね。次期宰相もこの分ならアジャーニ家から出そうだし、お姉ちゃんも安心だね。」
そういやあいつってスティード君に目玉を抉り出されてたよな。色々あったよなぁ。
「そうね。安心ね……あっ! すっかり忘れてたわ! ディオン侯爵家を皆殺しにしたのはアンタなんでしょ! 白状しなさいよ!」
そんな冷蔵庫のプリンを食べたのはアンタでしょ、みたいなトーンで言わなくても。
「僕だったらどうなの? 何か問題ある?」
「いや、な、ないけど……」
開き直ってやった。そもそも母上の頼みなんだから私に文句言われても知らんわい。
「むしろディオン侯爵家とアレクサンドル公爵家の繋がりをマルセルに教えてやったら? 詳しくは伯母様に話しておいたし。」
アルノルフだったかな。アレクサンドル家の大ボスは。あいつには私が契約魔法をかけてあるからな。私がその気になればいつでも殺せる。今のところ解除されてもいないし。
今回の件、アレクサンドル家がキアラを狙ったとは言いにくいな。だが、ディオン侯爵家が全滅したことで奴らも虎の尾、魔女の逆鱗に触れたことには気付いただろう。その上でキアラにちょっかい出したならアレクサンドル公爵領に攻め入ることも視野に入れておこう。アレクサンドル騎士団はまあまあ強いと聞いている。王国最強と謳われるクタナツ騎士団。それに匹敵すると言われる近衛騎士団。少し差がついて三位を狙える位置にいるのがアレクサンドル騎士団だ。数が多い上に連携もかなりのものだとか。
騎士団同士の争いが、もしもあるとするならば……クタナツ騎士団対近衛騎士団の戦いを見てみたいものだ。でもなぁ……クタナツ騎士団にはアレクパパがいるし、近衛騎士団にはウリエン兄上がいるもんなぁ。もしも板挟みになったらどうしよう? 知り合いや関係者が増えすぎるのも考えものだよな……
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