私はセルジュ君に呼ばれ、慌ててコロシアムに戻った。キアラも連れて。
「つまりスティード君はバーンズさんにやられたってこと?」
「そうなんだよ! 手も足も出なかったんだ!」
「それでスティード君を治すのに魔力が足りないんだね?」
「そうなんだよ! 治癒魔法使いさん達はもうこれ以上ポーションを飲めないそうなんだ!」
無理もない……あれだけ治癒魔法を使い続けたんだもんな……
やはりキアラを連れて来てよかった。
「キアラ、あのお姉さんにゆっくり魔力をあげてくれるか? ゆっくりだぞ?」
「いいよー!」
「はあ? 魔力をー!? はっ、ぐあっばがぁっ!?」
キアラの魔力譲渡。これも私にはできない。ナーサリーさんや母上みたいに吸い取ってくれるのならいいんだが。そんなことがそうそうできるはずもない。だからキアラが頼みだったんだ。
「うぷっ、ぐぇ……ふぅ……よーし。魔力はバッチリよー。治してやるさー。治ったらガッツリ払ってもらうからねー!」
「いいですとも! いくらでも払います! きっちり元通りに治してくださいよ!」
スティード君のためならいくらでも払ってやるさ! それにしてもバーンズさん……容赦ないな……あ、違う、スティード君が相手だからか。そりゃ手加減できないわな。でも一言文句言いに行こう。
「キアラー。あのお姉さんの魔力が減ったら渡してやってくれるかー?」
「いいよー!」
よし、これでここは大丈夫だな。バーンズさんはどこだー?
「セルジュ君、ここを頼むね。」
「う、うん!」
おや? あいつ何やってんだ?
「おいラグナ。こんなことで何してんだ?」
「あぁボスぅ。いやー参ったさぁ。あのスティードの相手をしてやろうと思ったらさぁ。あっさり負けちまったよぉ。末恐ろしいガキだよぉ。まぁボスほどじゃあないけどねぇ。」
「もしかして、スティード君の胸元にあった十字傷はお前か?」
「あぁ、あれかい? 四つ斬りにしてやるつもりだったんだけどねぇ。全然だめだったさぁ。あんなしょぼい傷しか付けられなかったねぇ。」
へえ。スティード君に傷を付けるなんて。ラグナのくせにやるもんだな。
「バーンズさんはどこにいる?」
「さあ? ダミアンのとこじゃないのかぃ?」
ああ、ダミアンとバーンズさんは仲良かったもんな。会場はえらく盛り上がってるな。もう終わったんじゃないのか? とりあえず放送席に行ってみるか。
『本日の予定は以上でーす! 明日もまた来てくださいねー!』
黒百合さんのアナウンスが聞こえた。全て終わったんだな。
「おーダミアンいるか?」
「おうカース。まだいたのか。スティード君の具合はどうよ?」
「問題ない。それよりバーンズさんは?」
「もうすぐ来ると思うぞ?」
「ようカース。俺に何か用か?」
いいタイミングじゃないか。
「お疲れ様ですバーンズさん。文句を言いに来ました。」
「文句? スティードの腕を切断したことか?」
「いいや、バーンズさんの大人気ない行動にです。もう少しぐらい手加減してくれてもよくないですか?」
「おいおい無茶言うなよ。あのスティードが相手だぞ? お前がやるんなら手加減しても勝てるかも知れねー。だが俺にぁ無理だ。あいつは手加減して勝てる相手じゃねー。」
やはりか……結構嬉しい……さすがスティード君。このことを伝えてやったら喜ぶかな?
そもそも五等星が何で参加してんだって話でもあるが……
「そうですか……バーンズさんが大人気ないってことに変わりはありませんが、少し納得しました。明日は出ないでくださいよ?」
「当たり前だ。今回だってカースがいないのをいいことに出てみただけだからな。」
バーンズさんは私を警戒しているのか。またまた嬉しい。
「そんでダミアン? 明日はどんなルールになってんだ?」
「まあ焦んじゃねーよ。明日になりゃあ分かるさ。今度は勝てよ?」
「おう。まあルール次第だけどな。」
魔法なしって言われたら勝ち目がなくなるぞ?
文句言ってスッキリしたことだし、医務室に戻ろう。無事に治ってるといいが……
治療は難航していた。ただ切断されただけでなく、傷口が焼け焦げているからだ。ここで意外な力を発揮したのはキアラだった。率先して治癒を行っているでないか。そりゃそうか、キアラだって治癒魔法が使えるんだもんな。本当にすごい妹だ。
「カー兄ー、魔力ちょーだーい。」
「も、もちろん! 好きなだけあげるさ!」
キアラのやつ、渡すも吸うも自由自在かよ。
ぬうぉっ? 一気に二割ぐらい抜かれた……キアラめ、やるなぁ……それに、これでスティード君が治るなら安いもんだ。
今さらだが、腕が切断されても翌日には治ってるって……うちの母上でなくとも普通にそれができる治癒魔法使い達か……凄いものだ。
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