異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

192、ご馳走ならず

公開日時: 2021年5月10日(月) 10:32
文字数:2,389

南の城門にてスパラッシュさんにご祝儀を渡して別れる。情報料も込みなので少し多目にしてある。

いつもありがたいことだ。


それにしても、あのノワールフォレストの森に日帰りとは……我ながらよくやったものだ。無事に帰ってきただけで大金星に違いない。


そして今気付いた。この木材だが、誰に加工を頼んだらいいんだ……?


まあいい、困った時は母上に聞こう。





「ただいまー。」


「おかえりなさいませ。ご無事でなによりです。」


「いやーホント無事でよかったよ。ところでマリー、ラセツドリって捌ける?」


「また……坊ちゃんは……ラセツドリは食べられませんよ。坊ちゃんなら食べても死なないとは思いますが死ぬほど不味いと思います。」


何だとー! 強い魔物は美味いってのがお約束ではないのか。


「それは残念。ならコーちゃんも食べないよね。何か使える素材ってあるかな?」


「全身使えますので、ギルドに売ることをお勧めいたします。」


「なるほど。そりゃそうだね。無理に食べることに拘らなくてもいいか。ありがとね!」


ちょうど夕飯のタイミングだ。今夜帰って来るかどうか分からないって伝えてたけど、私の分もあって嬉しい。コーちゃんも嬉しいよなー。


「ねー母上ー。マギトレントを手に入れてきたけど、どこに頼んだらいいかな? お風呂にしたいんだよね。ついでにうちの湯船もマギトレントにしてしまおうよ。」


「まあカースったら。なんて親孝行なんでしょう。いい子ね。マギトレントの加工を頼むなら一番街の『クランプランド』がいいわね。木工ならそこよ。」


「やっぱり母上は何でも知ってるね! 明日行ってみるよ! まあまあ多めに取れたと思うんだよね。」


今思えば帰りのポーションは要らなかったな。でもあれを飲んでなかったら危ない魔物と遭遇してたかも知れない。きっとあれでよかったんだ。


いやーそれにしてもハードな一日だった。早く寝よう。

ちなみにコーちゃんは晩御飯を食べたらそそくさと自分のねぐらに行ってしまう。学校には付いて来たがるのに家ではあそこが定位置なんだよな。

たまには一緒に寝たりしたいのに。

精霊の考えることはよく分からん。







ノワールフォレストの森から帰った翌日、パイロの日。私はアレクと連れ立ってギルドに来ていた。マリーのアドバイスに従いラセツドリを売るためだ。


「お疲れ様でーす。」

「お疲れ様です。」


そろそろ私達も新人を卒業だろうか。私達より年下もいるにはいるらしいが。


受付にて。


「買取をお願いします。ラセツドリです。」


「ではこちらに。ほぉーやりますね。では査定いたします。待たれますか? 一時間もかからないと思いますよ」




「じゃあアレク、そこで何か飲んで待ってようか。」


「そうね。何があるかしら。」


子供向けのメニューなどないかと思えば、ミルクセーキがあるではないか。意外だ。

二人ともミルクセーキを飲んでご満悦だ。


酒場あるあるとしては、ミルクセーキやホットミルクなどを頼むと他の客にバカにされて喧嘩になるというイベントがある。今回は何も起こらなかった。帰ってママのおっぱいでも吸ってなって言われるアレが……




査定が終わったようだ。


「金貨九十三枚です。胴体の傷がなければ二百枚近かったと思いますよ。次から気をつけてくださいね」


すごいな。トビクラーやコカトリスとは段違いだ。それだけ厄介かつ貴重なんだろう。

受付横の本で調べてみると……爪、嘴、羽は全てアクセサリーとなり、血や肉は毒薬の原料となる。対魔物用の奥の手だったりするのか。




さあ次はお待ちかね。クランプランドだ。

アレクと手を繋いで街を歩く。到着。

おっ、ファトナトゥールの隣の隣だ。


「こんにちはー。」

「こんにちは。」


「……おう。」


「マギトレントで風呂、作れる?」


「……おう。」


二日酔いかな? そうは見えないが、元気ないな。


「木材はどれぐらいあればいい? 二つ作って欲しいんだが。」


「……サイズは?」


「一つはこれ、もう一つは木材次第かな。取り敢えず木材を出したいけど、どこに置いたらいい?」


そう言って私は紙を渡す。自宅の風呂のサイズを書いておいたのだ。


「……こっちに。」


まずは一本分。


「これがもう五本ある。足りそう?」


「……十分だ。この紙のやつは一本で足りる。……もう一つはかなり大きく作っても足りるだろう。」


「そいつはありがたい。では贅沢に五メイル四方で深さは一メイル、そしてこれの上に作ってもらえるかな。」


私は銀ボードを取り出した。これを底に敷いておかないと、金操で浮かせられないからな。浮身だけだと登り始めが不安なんだよね。

その場で銀ボードを五メイル四方に延ばしておく。


「……分かった。急ぎか?」


「いや、お任せで。いくらかかる?」


「……二つ合わせて一ヶ月半で金貨六十枚ってとこだ。」


「決まり。俺は四番街のカース・ド・マーティン。小さい方を先に作って欲しい。設置はこちらでやる。」


「……モコスア・ボンドゥだ。小さい方だけなら今月中には出来るだろう。」


「分かった。なら金はその時に全額払おう。で、木材は何本置いていけばいい?」


「……四本、だが残りの二本も置いていくならタダにできる。」


「そいつはありがたい。では全部出しておこう。頼んだ。では月末にまた来る。」


「……毎度。」


職人って色んなタイプがいるもんだな。それにしてもラッキーだったな。現物で支払いが済んでしまった。ミスリルで金を使ってしまったから財産が半減してたんだよな。



「あの大きなお風呂が完成したら空中風呂に招待するよ。きっと最高だよ。」


「え、ええ、い、一緒に入ってあげてもいいんだから!」


おおー、久々のツンデレ? なのか?


「お風呂用の服を用意するから大丈夫だよ。一緒に入ろうね。」


適当に麻とかで湯浴み着を発注しておこう。


「う、うん。楽しみにしてるんだから!」


私も楽しみだ。十月末ぐらいかな。

今月末と言えばアッカーマン先生! 

まだかなまだかなー。

アッカーマン先生まだかなー。

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