アッカーマン先生の墓もスパラッシュさん同様に鉄で作ろうと思っていたのだが、直前で気が変わった。私の魔力庫には石も大量に入っている。やはり墓と言えば石。というわけで石で作ることにした。
形はスパラッシュさんと同じ。和風の墓だ。私にかかれば石材の加工も慣れたものだ。スパスパゴリゴリ切ってやる。
一時間とかからず終了。
よし、次は墓碑銘だな。スパラッシュさんの墓碑銘は『勇士スパラッシュ・ド・ハントラ男爵』だ。ならば先生の墓碑銘は……
『達人コペン・アッカーマン師』これしかないな。横に先生の命日を刻んでおくか……
毒針スパラッシュ……毒針アイギーユ……奇しくも新旧の毒針の墓が隣同士とはね。
もう、これ以上毒針が生まれることもないだろう。何が神の呪いだ……ふざけやがって……
気が変わった。城壁を作ろうと思っていたが、それだけでは済まさない。村を丸ごと更地にしてやる。そしていつの日か、代官がこの村を誰かに下賜する時のためにきれいにしておいてやる。私が代官にくれと言えばくれるのだろうが、そのためには貴族にならなければならない。最低でも騎士爵に。どちらも望めばもらえるだろうが、せっかくの自由な暮らしがなくなってしまうからな。せめて次の領主には大事にして欲しいものだ。
そうと決まれば……
「金目のモンはあったか?」
「少しだけな。ないよりマシさ。貰っちまっていいんだな?」
「ああ、構わんさ。それとこいつはほんの気持ちだ。取っておいてくれ。」
盗賊を売った代金の一割だ。そんな義理は全然ないのだが、ただの気持ちだ。スパラッシュさんの墓前に酒を供えて手を合わせてくれたのが嬉しかったりするんだよな。
「お前……魔王だよな……?」
「あ? 今さら何言ってんだ?」
「い、いや、超あぶねぇーって聞いてたからよ……ビクビクしてたんだぜ?」
「人を狂人みたいに言うなよ。筋は通すタイプだと自分では思ってるぜ? 六等星ほどのモンがはるばるクタナツから歩いて来たんだ。手ぶらじゃ帰れないだろ?」
「そうかよ……気ぃ使ってもらってすまねぇな。それより魔王よぉ、まだここに用はあるのか?」
「ああ、まだまだあるぞ。」
「そんなら手伝うぜ? 何でも言ってくれよ。なあお前ら?」
アルケイディアの全員がなぜかやる気になっている。それなら頼んでしまおうか。
「今からここを平らな更地にする。井戸だけはそのままにしておくから全員で井戸の周辺を守っておいてもらえるか?」
「ん? 守る……とは?」
「村ごと全部焼く。それから平らに均す。そして最後に城壁で囲うのさ。まずは燃やすから井戸の周りで水壁か氷壁でも張っておいてもらえるか?」
「あ、ああ……なるほど……」
この村に井戸は四ヶ所。五人いるから問題なく防いでくれるだろう。
『燎原の火』
村ごと全部燃やす。たぶんスパラッシュさんの実家とかもあるんだろうが……燃えてしまえ……
こうやって全体的に燃やしながらも、建物は個別に……『火球』しっかり燃やす。
「おっ! おい魔王! ちっと待ってくれ!」
「こっちもだ! やべぇ!」
「俺もだ! 勘弁してくれよぉ!」
「魔力強すぎぃぃいいーー!」
「あちちちちぃぃーーー!」
あれ?
「どうした? まだ全部焼けてないが?」
「火が強すぎなんだよぉーー!」
「こっちまで焼けちまう!」
「勘弁してくれやぁー!」
「魔力強すぎだってぇのおおおー!」
「あっじぃぃいいいーー!」
仕方ない。魔力オフ。すでに燃えている建物までは消えないが、村の地面を覆っていた火は消えた。一気に済ませたかったんだがな。
仕方ない、戸別にコツコツと焼いていくか。
「適当に警備しといてくれるか? たぶん魔物が来るからさ。」
「お、おお……」
さて、全部燃えたな。すっきりだ。ずいぶん狭く見えるもんだな……
やれやれ、次は城壁だ。
まずは魔力庫内の岩を適当に外周に並べてと。
二ヶ所ほどは出入口だとして、それ以外を全て塞ぐ。自家製コンクリと、適当な砂利で……
総延長でおよそ二キロルもない。高さは三メイルぐらいかな。地面に置いただけで、杭打ちなどもしてない城壁の完成だ。私もすっかり土木工事の腕が上達してしまったな。水路や圃場整備もたぶんできるな。
では最後の仕上げだ。
あいつらが見てないうちに……
アッカーマン先生の死体を魔力庫から取り出して……『火柱』
先生……ナマス・アミターバ……
私を殺そうとした先生。
アレクの体を貫き私の心臓に刃を突き立てた先生。心臓を刺されて生きてる私も大概だが……母上が治してくれなかったらあのまま死んでたよな。おそらく深さが足りなかったと見える……
そんな先生を篤く弔うとは、私が変なのか?
そもそも心の中でさえ先生と呼ぶことすら変なのか? でもどうしても憎むことができない……
クソ針め……
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