パーティー会場でいきなり意味不明なことを喋りだした青髪変態野郎。見た目がイケメンなだけに違和感がすごいな。ダミアンが最低野郎と言うだけあるのだろうか。
「難しい話は分かりませんが、私はアレクサンドリーネ一筋ですよ?」
「うふふ、そうですね。野暮なことを申しました。おっと、こちらは成人のお祝いです。どうぞお納めください。」
そう言うと変態は魔力庫から彫像を取り出した。こ、これは!
「いつぞやのパーティーで私が落札したアレクサンドリーネ嬢のミスリル像です。もう十分愛でさせていただきましたので、あるべき所へ帰してやりたくお持ちしました。」
「まあ! ありがとうございます。懐かしいですわ。」
「ピュイピュイ」
「ありがたくいただきます。」
コーちゃんも喜んでるな。初モデルだもんな。それより十分愛でたって言葉が気になるな。まさか実用したわけでもあるまい……まあいいや。ならばこのアレク像は寝室にでも飾ろうかな。玄関だとアレクが恥ずかしがるからな。
それからもパーティーは盛況だった。楽団の演奏が始まり、ダンスが始まり。時に余興も挟まれた。踊り方など知らない人々も気の向くままに踊っている。これは見ていても楽しいものだな。
アレクの同級生や後輩、セルジュ君や貴族学校の見知った何人かも来ていた。スティード君とアイリーンちゃんは来ていないようだが。というか騎士学校からは誰も来ていない。喪中か。
そしていつしか夜の帳が落ち始めた。そろそろお開きかと思ったその時だった。
「さーてカース。いよいよ本日のメインイベントいくぜ。」
「ん? まだ何か用意してんのか?」
「おお、まあ用意したのはお前とも言えるんだがよ?」
「俺が? 覚えがないが……」
「へへ、まあいいさ。おい、奴を連れてこい!」
ダミアンが配下に命令すると、そそくさと薄汚れた男を連れてきた。縛られているな。
「サダーク……っ!」
「リリス、知ってんの?」
「旦那様に、賞金をかけていただいた……あの男です……」
あ、思い出した。走れメロス的な結婚詐欺をやった奴だったな。さすがに白金貨一枚の賞金はよく効いたようだな。それにしてもこんな汚い格好してるのによく本人だと分かったな。
「リリスっ! 俺だ! サダークだ! あの時迎えに行けなかったのは悪かったと思ってる! だが聞いてくれ! これには事情があるんだ!」
何言ってんだこいつ?
「旦那様、お願いがございます。私は真実を知りとうございます。」
「まあリリスがそう言うなら。」
少し張り切ってみるかね。
「お前、サダークって言ったな。今まで苦労してきたんだろう? もう大丈夫だからな。正直に言えばきっと楽になるさ。約束する。悪いようにはしないさ。ほら、これ飲むか?」
「あ、ああっぐぶぉ……」
そう言いながらも私の手から酒をひったくるようにして飲んだ。しばらく飲まず食わずだったと見た。そして契約魔法はしっかりかかった。酒に合わせてイエスと言わせる作戦はいいアイデアのようだ。
「どうだ? 旨いだろう? さてと、では答えてもらおうか。当時お前はリリスのことをどう思ってた?」
「お堅い、面白みのない女だが、俺のことを信じきってて、都合がよかった、ち、違う、そうじゃない! 今のはう、嘘、うそじゃない?」
「無理だな。お前は真実しか語れないんだよ。そんな女を弄んでさぞかし面白かったろう?」
「おもしろかった、俺のためなら、何でもするって女が、あちこちに、いて……」
最低な奴だな。それはそうと、こいつがもし捕まったら質問しようと決めていたことがある。
「お前は他にもたくさんの女を奴隷に落としたよな? スカイ・アジャー二って覚えてるか? かなり高額の借金を持ってたが。」
いつだったかダミアンに連れていかれた奴隷オークションで最高値がついた女の子だ。私にしてはよく覚えている。
「たくさん、儲かった……スカイなんとか、わ、分からない、と、特徴を言ってくれ……」
そんなの私が覚えてるはずがない。名前を覚えてるだけで奇跡だろうに。
「オメーが金貨五百枚の借金を背負わせた十六歳だ。髪の色は金だぜ。」
おお、ダミアン分かるのか。やるじゃないか。
「うぐっ、知ってる、売り飛ばした……」
ほー。大した色事師だこと。
「どうだリリス、まだ何か聞きたいことはあるか?」
「ございません。お手数をおかけ致しました。」
「ま、待てリリス! 助けてくれ! お前は今でも俺のことが好きなんだろう! 分かってる! 今度は大事にする! 女はお前一人だ! 一生大事にするから助けてくれぇぇぇぇ!」
すごいなこいつ。よくここまで恥を捨てられるものだ。色事師ってのはこんなもんなのか。
「あれから私は様々な経験をしました。」
「リリス! 俺が悪かった! 一緒に傷を癒していこう! な! な!?」
「その経験から言えることがあります。サダーク、あなたは小さくて早い。しかも下手くそです。少し顔と口がいいだけの三流以下の男です。旦那様の足元にも及びません。」
「ギャハハハ!」
「ゲハハハハ!」
「ヒーッヒッヒッ!」
「ダッセー!」
周囲から様々な笑い声が漏れる。
「なんだよカース、お前リリスに手ぇ付けてんのかよ?」
ダミアンがボソッと聞いてくる。
「そんなわけねーだろ。リリスが適当コイてるだけだろ。」
私にわずかの動揺もない。反対にサダークは黙り込んでしまった。
『さぁーて! いよいよ見世物の始まりだぁ! お前ら! 魔王カースの千杭刺しの噂は聞いてんだろ!? でも実際に見た奴はそうそういねぇよな!? どうだ、見てぇかあーー!?』
なるほど。処刑イベントね。娯楽のない大昔は結構賑わったって言うしな。ローランド王国だと死刑をしなくなってから随分経つって話だし、人々も珍しいものは見たいわな。事実、かなり盛り上がっている。
アレクの成人祝いにはどうかと思うが、今日はリリスの新たな誕生日ってことでサービスしてやるかな。さて、どのスタイルで執行しようか……
リリス・キスキル©️オムライスオオモリ氏
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