異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

351、サダーク・ローノ

公開日時: 2023年3月26日(日) 10:30
文字数:2,378

パーティー会場でいきなり意味不明なことを喋りだした青髪変態野郎。見た目がイケメンなだけに違和感がすごいな。ダミアンが最低野郎と言うだけあるのだろうか。


「難しい話は分かりませんが、私はアレクサンドリーネ一筋ですよ?」


「うふふ、そうですね。野暮なことを申しました。おっと、こちらは成人のお祝いです。どうぞお納めください。」


そう言うと変態は魔力庫から彫像を取り出した。こ、これは!


「いつぞやのパーティーで私が落札したアレクサンドリーネ嬢のミスリル像です。もう十分愛でさせていただきましたので、あるべき所へ帰してやりたくお持ちしました。」


「まあ! ありがとうございます。懐かしいですわ。」


「ピュイピュイ」


「ありがたくいただきます。」


コーちゃんも喜んでるな。初モデルだもんな。それより十分愛でたって言葉が気になるな。まさか実用したわけでもあるまい……まあいいや。ならばこのアレク像は寝室にでも飾ろうかな。玄関だとアレクが恥ずかしがるからな。




それからもパーティーは盛況だった。楽団の演奏が始まり、ダンスが始まり。時に余興も挟まれた。踊り方など知らない人々も気の向くままに踊っている。これは見ていても楽しいものだな。


アレクの同級生や後輩、セルジュ君や貴族学校の見知った何人かも来ていた。スティード君とアイリーンちゃんは来ていないようだが。というか騎士学校からは誰も来ていない。喪中か。




そしていつしか夜の帳が落ち始めた。そろそろお開きかと思ったその時だった。


「さーてカース。いよいよ本日のメインイベントいくぜ。」


「ん? まだ何か用意してんのか?」


「おお、まあ用意したのはお前とも言えるんだがよ?」


「俺が? 覚えがないが……」


「へへ、まあいいさ。おい、奴を連れてこい!」


ダミアンが配下に命令すると、そそくさと薄汚れた男を連れてきた。縛られているな。


「サダーク……っ!」


「リリス、知ってんの?」


「旦那様に、賞金をかけていただいた……あの男です……」


あ、思い出した。走れメロス的な結婚詐欺をやった奴だったな。さすがに白金貨一枚の賞金はよく効いたようだな。それにしてもこんな汚い格好してるのによく本人だと分かったな。


「リリスっ! 俺だ! サダークだ! あの時迎えに行けなかったのは悪かったと思ってる! だが聞いてくれ! これには事情があるんだ!」


何言ってんだこいつ?


「旦那様、お願いがございます。私は真実を知りとうございます。」


「まあリリスがそう言うなら。」


少し張り切ってみるかね。


「お前、サダークって言ったな。今まで苦労してきたんだろう? もう大丈夫だからな。正直に言えばきっと楽になるさ。約束する。悪いようにはしないさ。ほら、これ飲むか?」


「あ、ああっぐぶぉ……」


そう言いながらも私の手から酒をひったくるようにして飲んだ。しばらく飲まず食わずだったと見た。そして契約魔法はしっかりかかった。酒に合わせてイエスと言わせる作戦はいいアイデアのようだ。


「どうだ? 旨いだろう? さてと、では答えてもらおうか。当時お前はリリスのことをどう思ってた?」


「お堅い、面白みのない女だが、俺のことを信じきってて、都合がよかった、ち、違う、そうじゃない! 今のはう、嘘、うそじゃない?」


「無理だな。お前は真実しか語れないんだよ。そんな女を弄んでさぞかし面白かったろう?」


「おもしろかった、俺のためなら、何でもするって女が、あちこちに、いて……」


最低な奴だな。それはそうと、こいつがもし捕まったら質問しようと決めていたことがある。


「お前は他にもたくさんの女を奴隷に落としたよな? スカイ・アジャー二って覚えてるか? かなり高額の借金を持ってたが。」


いつだったかダミアンに連れていかれた奴隷オークションで最高値がついた女の子だ。私にしてはよく覚えている。


「たくさん、儲かった……スカイなんとか、わ、分からない、と、特徴を言ってくれ……」


そんなの私が覚えてるはずがない。名前を覚えてるだけで奇跡だろうに。


「オメーが金貨五百枚の借金を背負わせた十六歳だ。髪の色は金だぜ。」


おお、ダミアン分かるのか。やるじゃないか。


「うぐっ、知ってる、売り飛ばした……」


ほー。大した色事師だこと。


「どうだリリス、まだ何か聞きたいことはあるか?」


「ございません。お手数をおかけ致しました。」


「ま、待てリリス! 助けてくれ! お前は今でも俺のことが好きなんだろう! 分かってる! 今度は大事にする! 女はお前一人だ! 一生大事にするから助けてくれぇぇぇぇ!」


すごいなこいつ。よくここまで恥を捨てられるものだ。色事師ってのはこんなもんなのか。


「あれから私は様々な経験をしました。」


「リリス! 俺が悪かった! 一緒に傷を癒していこう! な! な!?」


「その経験から言えることがあります。サダーク、あなたは小さくて早い。しかも下手くそです。少し顔と口がいいだけの三流以下の男です。旦那様の足元にも及びません。」


「ギャハハハ!」

「ゲハハハハ!」

「ヒーッヒッヒッ!」

「ダッセー!」


周囲から様々な笑い声が漏れる。


「なんだよカース、お前リリスに手ぇ付けてんのかよ?」


ダミアンがボソッと聞いてくる。


「そんなわけねーだろ。リリスが適当コイてるだけだろ。」


私にわずかの動揺もない。反対にサダークは黙り込んでしまった。


『さぁーて! いよいよ見世物の始まりだぁ! お前ら! 魔王カースの千杭刺しの噂は聞いてんだろ!? でも実際に見た奴はそうそういねぇよな!? どうだ、見てぇかあーー!?』


なるほど。処刑イベントね。娯楽のない大昔は結構賑わったって言うしな。ローランド王国だと死刑をしなくなってから随分経つって話だし、人々も珍しいものは見たいわな。事実、かなり盛り上がっている。


アレクの成人祝いにはどうかと思うが、今日はリリスの新たな誕生日ってことでサービスしてやるかな。さて、どのスタイルで執行しようか……


リリス・キスキル©️オムライスオオモリ氏

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