ギルドに到着。何やら中が騒がしいぞ?
「おらー! 俺らの奢りだぁ! ガンガン飲めやぁ!」
併設の酒場で宴会が始まっていた。アステロイドさん達じゃないか……帰ってきたばかりでいきなり宴会かよ。元気だなぁ。後で顔ぐらい出しておくか。
「こんにちは。十等星カース・ド・マーティンです。組合長への取り次ぎをお願いできませんか?『アイギーユ』に関する話だとお伝えください。」
「はぁ……聞くだけ聞いてみますが……」
いきなりだからね。ダメならダメでいいさ。
「よおカースじゃねーか。王都から帰ってきたのか?」
「バーンズさん! ダミアンのこと、聞かれてませんか?」
「ん? ダミアン? どうかしたのか?」
おっ、もう呼び捨てする仲になってるのか。やはりダミアンのコミュ力はただ事ではないな。
私は軽く説明する。
「なるほどな。ちっ、もう三日ばかり早く知りたかったぜ。しばらく警護の依頼で動けねぇからよ。終わり次第お前んちに連絡を入れる。それまでダミアンを頼むぜ?」
「はい!」
だから何で一回会っただけのダミアンをここまで心配するんだよ! ダミアンの人誑しは勇者級か!?
ん? その理論でいくと、私もダミアンに誑されていることになるか……まあいいや。ダミアンのくせに生意気な。
「カースさん、組合長がお呼びです。こちらへ」
「ありがとうございます。」
よし、話ぐらいは聞けそうだ。
「アイギーユだとぉ!? ジャックから聞いたんかぁ?」
組合長は開口一番、野太い声で聞いてきた。
「そうです。そして組合長なら自分が忘れてしまっていることも覚えているかも知れないと言われておりました。」
「ちっ! 嫌な名前を思い出させやがって! と言ってもワシもジャックと同じじゃあ。ロクに覚えてねぇ。覚えてんのは名前と体躯だ。針のように細くギラギラした目が気持ち悪い奴だったぜ。」
おっと、初情報『ギラギラした目』か。
「あん時のクタナツぁよぉ、クソどもの集まりだったのよぉ。それをジャックの奴は憂いてやがってな。昔からあいつは面倒見がいいからよぉ。だったらオメーが組合長になれって話だよな!?」
「校長先生はなぜ組合長にならなかったんですか?」
「知るかよ! 教育こそが国の未来を作るのです。とか言ってやがったがな。で、今さらアイギーユなんかどうすんだ?」
私はここでもダミアン関連の話をする。今日で何回目だろうか。
「なるほどなぁ、毒針かぁ……スパラッシュの野郎はアランのとりなしと、クタナツ者に手を出してなかったらしいことから目溢ししてやったが……」
「スパラッシュさんはかなりの『仕事』をしたんですか?」
だいたいの話は聞いてるが詳しくは知らないんだよな。
「いいや、あいつの仕業か本物の仕業か分からねぇ。そもそもスパラッシュが毒針だと判明したのもアランの口利きがあった時だ。」
あ、そりゃそうか。つまりスパラッシュさんは父上を狙って失敗するまで正体がバレなかったんだな。
「では組合長も本物の毒針の心当たりはないってことですね?」
「残念ながらのぉ。」
仕方ない、帰るか。おっと、一応参考までに聞いておこうかな。
「もし、組合長ならそのような正体の見えない敵を相手にするならば、どのような方法をとりますか?」
「ほぅ? おもしれぇ質問じゃのぉ。そうさなぁ……馴染みの娼館にでも入り浸るかのぉ。」
おっ? 何やら妙案な気がするぞ?
「そうやって敵が動くのを待つってことですか?」
「そんなとこじゃあ。相手は泥水すすりながら待ち構えてんのに、こっちぁ女の肉布団よぉ。考えただけで笑えてくるぜぇ?」
なるほど……組合長は見た目通り豪快な男なのか……もう六十ぐらいだよな?
「参考になりました。どうもお時間いただきましてありがとうございました。これ、職員の皆さんで召し上がってください。ヒュドラです。」
「はぁ!? ヒュドラだぁ!? マジかよ!?」
これだけあちこちで配ってもまだ半分は残ってるんだよな。
「結構美味しかったですよ。どうぞどうぞ。」
「あ、ありがたく貰っとくわ……いや、ちぃと貰いすぎじゃのぉ……」
組合長は何やら思案しているようだが。
「訓練場に来い。稽古をつけてやる。」
何と!
組合長直々に稽古だと!?
このおっさんは何やら危険な技を使うらしいからな。じっくり勉強させてもらおう。
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