異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

27、上級貴族アレクサンドリーネ

公開日時: 2020年12月10日(木) 10:26
文字数:2,280

髪をかき上げながら声をかけてきたのはアレックスだった。


「マーティン君だったわね。貴方さっき面白いことを言ってたわよね。狼ごっこ無敵とか。

あれは私に対する挑戦よね? 受けて立つわ!」


できる女は行動が早い!

ふふふ、面白い!


「やあアレックスちゃん。挑戦じゃないよ。お誘いだよ。一緒に狼ごっこしようよ。」


少々馴れ馴れしいが子供なんだし別にいいだろう。

付かず離れずを決意したことなど忘れよう。


「むむっ! 初対面で愛称呼びとは……さすが好色騎士アラン卿のご子息ね。

しかもお誘いだなんて……」


マジか、父上ってそうなのか。

いや、若い頃の話かも知れない。


「公職? 騎士はみんな公職なんじゃないの?」


五歳に好色を理解できるわけないだろ。

まあ公職もなお理解できそうにないが。


「騎士はみんな好色ですって? そんなことあるわけないわ!

そんなの王都の西や南方の騎士だけよ!」


そうなのか。


「ふーん。そんなことより狼ごっこしないの? みんなでやらない?」


「み、みんなでやる、で、ですって!? 何て破廉恥な!」


だめだコイツ、五歳でどんな発想してんだよ? 姉上に近いのか……


「はれんち? って何? 狼ごっこやらないの?」


「そ、そうよね! 狼ごっこの話よね! もちろんやるわよ! 明日の放課後よ!

他に誰か呼んでもいいのよ!」


「うん、みんなでやろうね!」


やっぱり友達がいないのか。

セルジュ君達に声をかけておこう。


「じゃあアレックスちゃんまた明日ね。

僕のことはカースでいいよ。」


「ふふん、いい心がけですわ。カースと呼んであげます。ではまた明日、御機嫌よう。」




呼び捨てかよ! 確かにそう呼べとは言ったけど!

今度こそ帰ろう。父上とマリーが待っている。


「父上お待たせー。ちょっと話し込んじゃった。」


「おおーもう友達ができたか。えらいぞ。

セルジュ君達以外なんだろう?」


「うん、アレクサンドリーネちゃんて言う女の子。アレクサンドル家だって。明日狼ごっこするの。」


「おっ、女の子とはやるじゃないか。

しかもアレクサンドル家ってことは騎士長の娘さんだろうな。」


「へー、アレックスちゃんも父上を知ってたよ。こうしょく騎士なんだって。父上は有名なんだね!」


「う、うむ、昔のアダ名だな。大昔のな。」

(さすが俺の息子、初日で騎士長の娘と仲良くなるとは。まああのオッサンは堅物だからな。娘もどうせガチガチの貴族娘なんだろうな。何にしてもカースが楽しく過ごせそうで安心だ。)


父上がやけにニヤニヤしているな。我が子の入学が嬉しいのかな。





今日から通常授業が始まる。


一時間目は国語だ。

先生が教壇に立ち、白板に黒で字を書いていく。技術的には黒板でも白板でも作れるらしいが、白いチョークを作るより黒いチョーク風の何かを作る方がコスト的に安いらしい。


ウネフォレト先生がローランド文字を五文字ほど書いていく。


「さあみなさん、国語のお勉強をしますよ。

先生が書いたこの字を一緒に声に出して読みましょうね。」


平仮名にあたるのが、ローランド文字。

そして漢字にあたるのか、神代文字である。

神代文字の歴史は古く、ローランド王国の歴史は三百年ぐらい、その前に戦乱の時代、さらにその前の統一王朝時代以前から使われているらしい。


「あ・い・う・え・お」


これは日本語の平仮名のように見えるがローランド文字なのである。

発音も『あいうえお』とは違うが、もちろん楽勝だ。


このように誰も脱落することなく国語の授業は終わった。


次は算数だ。


「みなさんはあまり買い物をしないと思うけど、算数ができないと買い物もできないの。欲しいものが買えなかったりするから、まずは数えることから始めようね。」


貴族が多いクラスだからな、自分でお金を使うことは少ないだろう。私も今のところない。


先生は白板に数字を五つ、その下に丸を数字の数だけ描いていく。


「これは数字と言います。数を表す時はこの文字を使うのよ。

じゃあ声に出して読んでみましょうね。」


数字はアラビア数字そっくりなので私には楽勝だ、ありがたい。

さらに都合のよいことに十進法だったりする。


この授業も脱落者など出ず、全員クリアしたようだ。と言うのも先生は一人ずつ声に出させて読みを、ノートをチェックしては書き方を確認していたからだ。

ちなみに教科書はない、あるのは自前のノートのみだ。


次はお待ちかね、魔法の授業だ。


「今日からみなさんに魔法を教えるナタリー・ナウムです。楽しくお勉強しましょうね。」


入学式で進行をしていたおばさん先生だ。


「今日は最初ですからみなさんの魔力を計っておきましょうね。

これは『標準魔力検査球』と言いまして、これに手を乗せてみなさんの魔力を計ります。

これに手を乗せますと、魔力量に応じて黒色が段々と薄くなります。

早速アレクサンドルさんからいきましょう。」


そう言って先生はサッカーボールぐらいの真っ黒な球を取り出した。


「さあ手を乗せて、心を落ち着かせてください。

はい、アレクサンドルさんの魔力量は五ですね。

では次は…………」


真っ黒な球がガラスのように透明になる様子は中々に美しい。


結果、貴族は全員五、平民組も三、四、五ぐらいで二以下はいなかった。


「みなさん終わりましたね。魔力量は少なくても問題ありませんが、多いと便利です。

次回は半年後に十まで計れる魔力検査球を使いますので、それまでにたくさん増やせるよう頑張りましょうね。

それでは明日からは魔力を増やす授業を行います。大変ですがクタナツ人の皆さんならきっと大丈夫です。

ではまた明日、御機嫌よう。」


なるほど、なるべく差がつかないよう小さく刻んでいくのか。

半年後が楽しみだな。


さあ、お昼の時間だ弁当だ。

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