異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

247、男爵との夜

公開日時: 2022年11月21日(月) 10:59
文字数:1,105

私達が戻ってみると、酒も肉もなくなっていた。


「ガウガウ」

「ピュイピュイ」


二人して肉も酒もお代わりを所望か。


「男爵、お酒をお願いできますか? 私は肉を焼きます。」


「ああ、お任せください。少し強めの酒を出しましょう。」


それにしても不思議な気分だ。スペチアーレ男爵はどう見ても父上より歳上、ゼマティスのおじいちゃんよりは歳下かな。それなのに気が合う。今日が初対面なのに飲んでいて楽しい。私の中身がおっさんだからだろうか。




「お待たせしました。『ゾリゲン・スペチアーレ』の十年物です。」


「ピュイピュイ!」


私より先にコーちゃんが食いつくんだよな。


「いただきます。」


まずは一口。やはり旨い。スペチアーレシリーズって全体的にウイスキーかブランデーのどちらかに近い味わいなのだが、これなんかは特に顕著だ。まるで正統派ウイスキー、グレーンに近いのかな。


「ピュイピュイ」


コーちゃんもお気に召したようだ。


「ガウガウ」


カムイは肉を焼けとうるさい。生でも食べるくせに。




「ところで男爵、樽にこだわりはありますか?」


あるに決まってるだろうけどね。


「もちろんありますよ。そもそもここを領地としていただいた理由の一つは木材です。一番の理由は水ですけどね。」


「いい木が多いんですか?」


巨大なムリーマ山脈だもんな。色んな木が生えていてもおかしくはない。


「ええ。ナラーやカッシーの木が多く生えているのが魅力的ですね。たまに半ば魔物と化した木もありますので、注意が必要ですがね。」


「マギトレントに興味はありませんか?」


「マギトレントですか!? あるに決まってます! まさか! お持ちなのですか!?」


「いえ、手持ちにはありませんが、ノワールフォレストの森での群生地を知っています。何本か切ってお持ちすることは可能ですよ。」


「お願いします! ぜひ! ぜひとも! 報酬はいくらでも!」


ふふふ、想定通り。


「報酬にはお酒が欲しいですね。どれをお渡しくださるかはお任せします。私が持って来たマギトレントを見てご判断ください。」


「いいですとも! いつですか! いつお持ちいただけますか!」


顔が近い! 酒臭い! たぶん私もだろうけど。


「では、来月半ばでいかがでしょうか。遅くとも来月末にはお持ちしましょう。」


「おおお! ありがとうございます! もう靴を舐めるだけでは追いつきませんよ! 何をしましょうか! 背中を流しましょうか! ありがとうございます!」


作戦成功。これでもう酒に困ることもない。やはり来てよかった。


この夜はどこまでも男爵と酒を飲み続けよう、と思ったら男爵は私より先に潰れた。仕方がないので、適当な部屋に運び込んでおいた。酒は山ほどある。さあコーちゃん。一緒に飲もうね!


「ピュイピュイ!」

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