あれからアレクと少し回り道をして、のんびり歩きながら我が家に着いた。門も玄関も私の魔力で解錠できた。こんな何気ないことでも嬉しいものだ。
さーて、マーリンはいるかな?
「だからカースの奴ってよー。はっはっは。」
「もうー本当に坊ちゃんたら。うっふっふ。」
これはお約束か。すっかり我が家に馴染んでやがる。
「ただいまマーリン。」
「ただいま。ひまそうな人がいますね。」
「ピュイピュイ」
「おおカースじゃねぇか。よく来たな。聞いたぜ? 魔法が使えなくなったんだって? 情けねー奴だな。」
「まあ坊ちゃん! おかえりなさい!」
マーリンはそう言って抱きついてくる。一年ぶりだが、また腹が大きくなってるな?
「ただいま。マーリンの料理を楽しみにしてたよ。ダミアンうるさい。」
「カースが魔法を使えないなんて何の話でしょう?」
「ふふ、そうかよ。使えるようになったんだな? 復活したんだな?」
「ああ、心配かけたな。もう大丈夫だ。」
「別に心配なんかしてねーし。それなら今年はやるか? 子供武闘会をよ?」
「あー、やってもいい。夏休みはダメだけど、それ以降なら。まあ任せるわ。」
「よし、決まりだ。任せとけ。アレックスちゃんもいいな?」
「ええ、いいですわ。面白くなりそうですわね。」
全くだ。どんな大会になることだろう。魔蠍の奴らも参加してくるかな?
「ところでダミアン、今の領都の闇ギルドの情勢ってどうなってんの?」
「あー、面倒なことになってるぜ。誰かさんのせいで王都を追われた奴らが王国中のあちこちに散らばりやがってよ。フランティアにも入り込んでやがるわけよ。」
「おやおや、さすがのダミネイト一家もお手上げか?」
「そんなわけねーだろ。領都からはあらかた叩き出したんだがな。あちこちの村に根を張ってやがってよ。地味に厄介なことになってるのさ。」
「ふーん。そりゃ大変だ。ところで今更だけど闇ギルドの資金源って何?」
「そんなの定番のやつに決まってんだろ。賭博開帳に管理売春、人身売買に奴隷狩り。薬物取引に魔物売買ってとこか。ああ、後スラムがあった時はショバ代取ったりとか高利貸しとかもあったな。」
「でもそれって別に闇ギルドじゃなくてもよくない?」
「そういうこった。賭博も売春も普通に許可を取ればいいだけだしな。人身売買もな。薬物だってそこらで普通に売ってんだしよ。結局ここは辺境だからよ、やるなら奴隷狩りか魔物売買ぐらいしか闇ギルドの出番はないってことだな。まあ情報屋兼ゆすりたかり、それから要人暗殺もあるけどな。」
「だよな。それぐらいしかやってないから取り締まりも難しいってことか。奴らも生き残りに必死なのかねー。」
「だろうな。全く、よくもまあ王都から逃げ切れたもんだぜ。王国騎士団の捜査はザルかってんだ。」
「数が多過ぎて手が足りなかったんじゃないの? まあ金を貰って逃したってパターンもあるかもな。」
「やれやれだぜ。ダメな騎士はどこも同じかよ。」
この辺はフランティアもあまり大きい声で言えなかったりするよな。
「さあさあ夕食の時間ですよ!」
やはりマーリンはタイミングがいいな。
そして、旨い。クタナツより都会なのに安心する田舎のお袋の味。ありがたいことだ。
「マーリン、美味しいよ。いつもありがとう。」
「どういたしまして。坊ちゃんがお帰りになって本当に嬉しいですわ。」
「ピュイピュイ」
コーちゃんも大満足だ。さすがマーリン。
さて、私とアレクはお風呂タイムだ。コーちゃんはダミアンと酒を飲んでる。いいなぁ……あっ、マーリンもか。つくづく変わったメイドだよな。割烹着が似合いそうかな。完全に母ちゃんじゃないか。母ちゃん……
いかんいかん、お風呂だお風呂。私の自慢のマギトレントの湯船。気持ちいいぜ。
「ここのお風呂も久しぶりだわ。たまにマーリンのお茶を飲みに寄ってはいたけど。」
「来てくれてたんだね。もしかして植木もアレクがやってくれたの?」
そう。久しぶりに帰ってみれば庭に何本か植樹されていたのだ。岩しかない庭に彩りが生まれていた。
「いえ、あれはマーリンの旦那さんのオリバーさんがやってくれたの。失くした物が見つかるって意味があるらしいわ。オトワノキって言うんですって。」
「そうなんだ。ありがたいね。嬉しいよ。」
マジで泣きそうだ。どれだけの人が私を支えてくれてるって言うんだ。
「よかったわ。本当に。」
「うん。ありがとう。マーリンにはボーナスが必要だね!」
何にしよう……よし! あれにしよう!
ふふふ、喜んでくれるかな?
それよりもこの夜、久々にアレクと過ごす我が家での夜。燃えないはずがない。私とアレクは燃えて燃えて燃え尽きるまで!
オーマイハニー! オンリーラーブ!
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