異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

169、ムリーマ山脈で狩りをしよう

公開日時: 2021年12月8日(水) 10:46
文字数:1,676

ケルニャの日。今日はアレクと狩りに行く予定だ。国王から色々と貰ってしまったし、いい獲物がいたらお返しをするつもりなのだ。

ちなみに昨夜の夕食はやはり大騒ぎだった。特にシャルロットお姉ちゃんが「アンタ王妃様に失礼なことしなかったでしょうね!」と喚いていた。我ながら普通に対応できたと思うぞ。


「じゃあおばあちゃん、行ってきます。」

「行って参ります。」

「ピュイピュイ」


「気をつけてね。夕食までには帰っておいでなさい。」


ちなみに本日の目的地はムリーマ山脈の西部。ワイバーン狙いだ。アレクと相談したところ、王族への贈り物ならワイバーンがちょうどいいのではないかという結論に達したのだ。


さて到着。

ムリーマ山脈の西部と言っても広すぎる。だから西端からコツコツと攻めていこう。

少しずつ高度を上げていくとポツポツと魔物が見えてきた。集団で狩りをしている赤い狼、そこから逃げる青黒いオーガ。上空から急降下してオークを狙うハーピー達。ここも弱肉強食のようだ。


「魔境でもないのに魔物が多いね。昔はここも魔境だったんだよね。」

「そうね。今のところ強力な魔物はいないようだけど油断はできないわね。」

「ピュイピュイ」

コーちゃんはオークを食べたいそうだ。少し待ってね。


だいぶ標高が上がってきた。そろそろこの辺りの頂上に着くのではないだろうか。ん?

遠くの方に何やら飛行する群れが見える。『遠見』

いた! ワイバーンだ! しかし数が多すぎる。あんなに大量のワイバーンなど相手にしきれない。場所を変えよう。南側に回ってみよう。


「さすがにあれだけのワイバーンを相手にするのは無理だね。他に行こう。」

「それがいいわ。少なくとも百匹はいるものね。」

「ピュイピュイ」

え? ワイバーンも食べたい? 分かったよ。でも待ってね。あれは無理だから。

最近のコーちゃんは食欲旺盛だな。成長期かな?



ひいぃひょうぉぉ



何だ今の気持ち悪い鳴き声は?

「カース……」

「どうした?」


アレクの顔が真っ青だ! あの声のせいか!?


魔物か! 襲って来た! すごい衝撃だ! ミスリルボードが木の葉のように揺れてしまう! しかも動きが速すぎて姿が見えない!


ひぃぃひょぉおぅぅ


「カース……」アレクがブルブル震えている。


『榴弾』


ホーミングなんだから見えなくたって構うものか! ミンチになりやがれ!


ぐわっ! 全ての榴弾が私に命中した……

実際には自動防御で防いだのだが。自分の魔法ながら恐ろしく魔力を消費させられてしまった。返されたのではなく、榴弾のルート上に私を置くように避けたってことか。なんて頭が回る魔物だ。周りを飛び回りながら魔法もかなり撃ってきている。しかしやたら雷系が多いようで私達には無意味だ。それにしても体当たりだけは厄介だ。


『吹雪ける氷嵐』


広範囲を猛吹雪で覆ってやる! これなら当たるだろ!

よし、動きが鈍ったな。


見えた!


こいつは……ヌエか? 顔は猿、手足は虎で尾は蛇。胴体はけむくじゃらだ。なるほど、鳴き声がキモいわけだ。アレクにまで効くほど魔力が込められた魔声ませい、怪鳥音というわけか。


『魔弾』


ミスリルの弾丸による狙撃をこう呼ぶことにしている。見事に額をぶち抜いた。死んだよな?

地面に向かって真っ逆様に落ちていった。


『重圧』一応動けないように押さえておく。そして足元からさっと近付きさっと収納。よし! バッチリ死んでた。


「危なかったね。まさかヌエが出るとは思わなかったよ。具合はどう?」


「よくないわね。まるで氷漬けにされたように寒いわ。カース……」


分かっているとも。きつく抱きしめてあげよう。ポーションは口移しだ。本日の私達は用心深くサウザンドミヅチのコートを着ている。私が黒、アレクは白だ。私のだからアレクには少し大きいがワイバーンを相手にするつもりなのだから当然の用心だ。

それなのにヌエの魔声は全く防げなかった。声だから当たり前か。こればっかりは自分の魔力で対抗するしかないだろう。もしかしたら『消音』の魔法が効くかも知れないが、次回の課題だな。


アレクが回復したようなので、再び南側を目指す。やはり上級の魔物には『隠形』が効きにくいようだ。用心しなくては。


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