本日の夕食でコンスタンタン君のことを話してみた。
すると母上は。
「アジャーニ公爵家は王都で絶大な権力を持っている貴族なのよ。それだけに内部でも色々と揉めやすいらしいわ。
代官のレオポルドン様は優秀なために辺境に来たタイプだけど、コンスタンタン君の父親、コンラッドは王都に居場所がなくなり逃げて来たタイプなの。つまり無能だから気にしなくていいわよ。」
「へー無能なのに威張ってるって変だねー。」
「おいおいカース、だから無能なんだよ。
そんな奴はこのクタナツでは生きていけないからな、いつの間にか居なくなってるさ。」
いつの間にか居なくなる……?
それって……
それから一週間、コンスタンタン君は学校に来ていない。
前世でのクソガキのように不登校だろうか。まあどうでもいいかな。
「結局アジャーニ君は理解できませんでしたか。」
「ええ、校長。チャンスは与えました。このクタナツで生きていくためには『ルールを守る』ことが何より大事だと。個別に言い聞かせました。」
「良い対応です。私も代官にご注進しました。その結果は『校長に任せる』とのことでした。」
いつの間にかコンスタンタンは放校処分となっていた。もう学校に来ることはない。
「なぜですか父上! なぜ私が放校なのですか! 私は貴族として平民どもを導いてやろうとしただけなのに!」
「コンスタンタンよ、お前は正しい。下賤の民のため身を削って貢献しようとしたお前をこの扱いとは、許せん。
代官のレオポルドンには言っておく、任せておけ。」
果たして代官は動くのか。
コンスタンタン一家の命運はいかに?
「レオポルドン! ひどいと思わぬか! 偉大なるアジャーニ公爵家の一門たる我がコンスタンタンが放校などと! たかが辺境の学校教師ごときが勘違いしおって!」
コンスタンタンの父、コンラッドは突然代官府を訪れ、代官レオポルドンの執務室で叫んでいる。レオポルドンはうんざり顔で耳を傾けていた。
そしてため息をつきつつ言葉を放つ。
「いくつか言いたいことがある。一つ、お前ごときが私の名を呼び捨てにするな。確かに血縁上は従兄弟だが、お前のような無能と従兄弟などと虫酸が走る。」
「なっ!貴様レオポル……」
間髪入れず代官は続ける。
「二つ、今回の処分は私の全権委任だ。つまり校長の判断は私の判断でもある。
たかだか一生徒の進退に代官を担ぎ出すのはどうかと思うが今回は致し方ないだろう。」
「ぐっ……!」
「三つ、お前はどのような条件で王都から出ることを許されたと思っている。うまく逃げ出せたのではない、逃げることを許されたのだ。そこを勘違いしているから性根が変わらない。大人しくしていればコンスタンタンは無事成人し、お前は孫を抱くこともできただろうに。」
「ま、待て、話をきっげ」
最後の瞬間、コンラッドの口から飛び出たのは言葉ではなく刃だった。
副官が後ろから延髄を突き刺したのだ。
「ご苦労だった。手間をかけて悪いが掃除の手配も頼む。死体は街の外にでも捨てておいてくれ。こいつは今夜ここには来ていない、行方不明だ。」
「承知いたしました。」
なお、日没後城門は全て閉ざされているが、代官権限があれば開けて通行することは難しくない。
今後コンラッド・ド・アジャーニの残された妻子、使用人達の先行きに関心を持つものはいなかった。
クタナツは犯罪者や横暴な貴族のいない平和な街である。
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