何とか弁当を食べた私達とグランツ君。何人か到着した姿も見える。
私の秘策が効いたのか弁当は腐ってなかったし水も無事、冷たくて美味しいままだ。
水は樽で持って来ているのだが、その樽をおが屑で覆っている。おが屑を作るのは地味に面倒だったぞ。二度とやらん。しかも樽の中身は半分氷にしてある。現時点で無くなった水は三割程度。帰り道に不安はない。干し肉もまだまだあるし。
そろそろ校長先生が出発する頃だ。前半と同じペースで歩かれたらかなりきついが、意地でも付いて行こう。
「よし、みんな! あと半分だよ! 食らいついて行こう!」
返事はない。
みんなもう限界のようだ。十歳になってる子もいるが、九歳児に魔物の現れる灼熱の荒野を延々と歩かせるとは。今更ながら恐ろしい教育だ。いや、男の塾よりマシか?
もう校長先生が見えなくなってしまった。バランタウンを出てから一時間も経ってないのに。帰り道なのでポツポツ同級生とすれ違う。みんな足を引きずるようにして歩いている。座り込んでる者もいた。
そしておよそ二時間経過した頃、威風堂々と腕を組み佇む校長先生を発見した。
「校長先生、何をされてるんですか?」
「先頭の誰かを待っていたのです。私の役割は先導でもありますが、護衛でもありますので先に行き過ぎても意味がないのですよ。」
「なるほど。言われてみればそうですね。よしみんな、休憩しようか。」
みんな無言で座り込む。グランツ君は先程脱落した。ここにいるのは私達五人と校長先生だけだ。
疲れているけどチャンスだ。校長先生に質問をしよう。
「校長先生は何等星だったんですか?」
「四等星です。以前話した山岳地帯から持って帰った獲物のお陰で過分な評価をいただいてしまいました。」
「すごい! その獲物って何ですか!?」
「ベヒーモス、ですが大きさからしてまだ子供でしょう。だから何とか勝つことができました。」
「べ、ベヒーモスですか! どのぐらいの大きさだったんですか!?」
「全長二十メイルぐらいでしょうか。成体は百メイルを超えると聞きます。生き残れて幸運でした。」
「先生だったらノヅチとベヒーモスの成体、どっちが強いと思いますか?」
「マーティン君の質問は困るものばかりですね。どちらも近くで見たことはないですが、やはりノヅチでしょうか。勇者でも倒せなかったことが気になりますからね。」
「……カースだけ……校長、先生と……話すなんてず、るいわ……」
おっ、アレクが起きて来た。
「校長先生の速度に合わせて歩いたらお喋りし放題だよ。そろそろ出発されるそうだし。」
「どうせ先頭は君達なのです。好きな速さで歩くといいでしょう。」
みんな起きて来た。息も絶え絶えに校長先生に話しかけている。心なしか回復しているようだ。ペースもいい感じだし。お喋りしながらの方が歩きやすいとは本当なのか。
そんな時、遠くから何かが近寄って来るのが見えた。あまり大きくないな。犬かな?
「狼のアンデッドですね。噛まれないように注意してください。」
「押忍!」
さすが校長先生。アドバイスをしてくれるとは嬉しい。
「ちょうど五匹だし、一人一匹ね。」
私は虎徹を構え、スティード君は剣を抜く。他の三人は杖を構えている。
私とスティード君が両端を一匹ずつ仕留める。ゾンビなんて頭をカチ割れば終わりだ。
アレクも疲れた体を引きずって真ん中のゾンビ狼の頭を叩き潰した。
サンドラちゃんとセルジュ君は少し苦戦している。噛み付き攻撃に対して杖を噛ませて持ちこたえている状態だ。これだと体力勝負になってしまい不利そうだな。
私とスティード君はその二匹を後ろから仕留めた。動かないから楽勝だったが……
たったこれだけなのに、どっと疲れてしまった。また休憩しなければ。
「校長先生、普段ならこんな死体は焼くか埋めるかですよね? 今日はどうしたらいいですか?」
「好きにしていいですよ。どんな行動を取ろうとも全て評定に反映されます。」
なるほど。甘くないな……
「よし、穴を掘ろう。それとも誰か燃やせる方法がある?」
「ないわね。それとカース君、スティード君助かったわ。ありがとう。」
「助かったよ。二人とも凄かったね! ありがとう! どうやって掘ろうか?」
「すごく嫌だけど、剣や杖でザクザクいくしかないかな?」
そう言って私は虎徹を地面にザクザク突き刺し見本を見せる。スコップが欲しい……
全員で輪になりザクザクザクザク地道に穴を掘る。土を穴から出すのも一苦労だ。完全に埋まるような大穴は諦めよう。
結局、わずか五匹の魔物を埋めるのに三十分もかかってしまった。
「予想以上に時間がかかってしまったね。次からはもう放っておくしかないね。」
やはりみんなバテバテだ。穴掘りってスコップを使っても疲れるんだよな。
残り半分も来ていないのに、心が折れそうだ……
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