異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

218、スラムの酒場

公開日時: 2022年10月18日(火) 10:17
文字数:1,966

カケィフの後ろを付いて歩く。どんどんスラムの奥へと。


着いたのはとある酒場。よくあるパターンだよな。


「ランディの兄貴はい、いるかい?」


「おおカケィフさん。どうしやした?」


「ちょいとな……兄貴に客人だ……」


こいつすっかりキャラが変わってしまったな。いや、これが本性かな。


「おうカケィフどうしたぃ?」


「兄貴ぃ! 助けてよぉ!」


もはやこいつのキャラが全く分からない。


「ん? どうした?」


「こ、こいつ本物の魔王なんす! 俺こいつにタカリかけて逆にスカンピンにされちまったんだよぉ!」


「あぁ? 魔王だぁ? そいつがかぁ?」


「そ、そうなんす! 助けてよぉ!」


「一応言っとくけど、こいつには絶対服従の契約魔法をかけてある。お前あっちで黙って座ってな。」


これでもう喋れない。さあて兄貴のお手並み拝見だな。


「なあ魔王さんよ。条件を言ってくれねぇか? どうすればこいつを助けてくれるんだ?」


おや、ストレートに来たな。


「うーん、有り金全部貰ったしな。隠し財産は詰まらんもんしかないし。まあ白金貨の一枚も貰っとこうか。」


「おい、今何つった?」


「あ? 白金貨一枚って言ったぞ?」


「その前だ。隠し財産がどうとかよ!」


「隠し財産は詰まらんもんしかないって言ったぞ。現金以外はいらんぞ?」


「ちなみにその隠し財産って何なんだ?」


えらい食いつくじゃないか。


「あー? アレクサンドル公爵領に土地屋敷があるって言ってたな。」


「あの野郎……あん時の! おう魔王さんよ、あいつの身柄はくれてやる。煮るなり焼くなり好きにしてくれや。」


「あらあら。まあ構わんけどな。ところでここは闇ギルドか?」


「いや、ただの地回りだ……」


地回りって言われても意味が分からんぞ。


「ここらに闇ギルドはないのか?」


「あるわけねーだろ。闇ギルド狩り、知ってんだろ? 生き残った奴は地下に潜ってんぞ?」


「闇ギルドに知り合いがいるなら紹介してくれよ。あいつを助けてもいいし隠し財産も吐き出させるぞ?」


「ほう? 下っ端でもいいのか?」


「あー構わん。心当たりがあんのか?」


「一応な。ちっと待っててくんな。」


兄貴ことランディはそこらの奴に声をかけて、誰々を呼んでこいと言っているようだ。


「ここは酒場だよな? 酒をくれよ。一番いいやつな。」


私が飲むわけではないが。


「ほお? 魔王さんは飲める口か。こいつなんかどうだ? 『アムレティア』ってんだ。」


出された酒はすかさずコーちゃんが飲む。


「ピュイピュイ」


「旨いそうだ。すまんがもう一杯頼むわ。」


「魔王の右腕フォーチュンスネイクか……ほらよ。」


「ピュイピュイ」


美味しそうに飲むコーちゃん。どうやら毒は入ってないようだ。




そして五分後。


「兄貴ー、呼んできやしたー」


「ちぃーっすランディさん。何事っすか?」


「おお急にすまんな。こちらの魔王さんがお前に用があるそうだ。」


「は? 魔王っすか? ランディさん正気っすか? こんなガキが?」


カッチーン、とは来ない。もはや慣れたものだからな。


「俺が魔王かどうかはどうでもいい。問題はお前が闇ギルドのメンバーかどうかだ。どうなんだ?」


「あぁ? てめぇ何デケェ口叩いてやがる! ランディさんがいるからって調子に乗ってっと俺ら『ホワイトシャーマン』がぶっ殺すぞ!?」


「よう兄貴? ホワイトシャーマンってのは闇ギルドなのか?」


「ランディって呼んでくれよ……俺は知らん。」


「てめぇマジで殺されてぇらしいな! 表ぇ出ろや! ランディさんの分までこいつブッチめておきますね!」


「あ、ああ……まあ、がんばれ……」




経過は省くが結局こいつを吐かせたところ確かに闇ギルドは存在した。したのだが本拠地はタンドリア領の中心、領主の住む街タンドリーにあるらしい。一気にやる気なくした。成り行きで手を出したけど、そんな面倒なことやってやれるかっての。契約魔法でここのギルドと騎士団詰所で知ってるだけの闇ギルド関連の情報を吐くよう命令しておいた。私の関与はここまでだ。気まぐれにやったにしてはやりすぎだと思う。

絶対働きすぎだ。ワーカホリックかよ。


「さてランディ。手間をかけたな。では約束通りあいつに命令しておくから隠し財産をかっ剥ぐといい。」


「ちんけな阿呆烏が魔王さんに目を付けたのが運の尽きか。アンタと敵対せずに済んで助かったぜ。何かあったら言ってきてくれ。」


「ああ、まあ一週間も滞在しないけどな。もし闇ギルド関連の情報があればギルド経由で知らせてくれ。礼は弾むからよ、こんな風に。」


そう言って私は大金貨を一枚ランディに弾く。


「ほう。手付けかよ。しゃあねぇな。何かあったらだからな。期待しないでくれよ?」


「おう。じゃあまたな。」


やれやれ。結構長居してしまったな。コーちゃんはその分酒を飲んでご機嫌のようだが。


「ピュイピュイ」


さて、早速困ったぞ。スラムすぎて道が分からん……

デルヌモンテ伯爵家なんてますます分からん……

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