「まずは私からだな。」
いきなり伯母さんかよ。サリーヌさんだったっけ?
『痛痒』
『擽笑』
何かやっているようだが、何の影響もない。自動防御をガチガチに固めているからな。次は私の番だ。
『風弾』
私の狙撃並みの速度で空気の弾を打ち込んでみた。決着だ。
「さすがは音に聞こえし魔王よな。私では相手にならないようだ。ではお前たち、しっかり勉強させてもらえ!」
それからは入れ替わり立ち替わり魔法対戦を行った。自動防御だけでは私の稽古にならないと思い、魔力感誘にも挑戦してみたが中々上手くいかない。なんとか負けなしで終わることはできたが。
そして夕方。エルネスト君とイボンヌちゃんが帰ってきた。
「カース君! 来てくれたんだね!」
「やあエルネスト君。元気そうだね。イボンヌちゃんも久しぶり。」
「お久しぶりです。」
イボンヌちゃんはやはりそっけないな。そして夕食。デルヌモンテ伯爵家の面々が勢揃いだ。
「ようこそ我が家へ。エルネストの伯父プローニュだ。噂の魔王殿とお会いできるとは光栄だな。ゆっくりしていってくれたまえ。」
エルネスト君の母の兄だったな。どことなくエルネスト君にも似ているか。
「はじめまして。カース・ド・マーティンと申します。エルネスト君の力になれれば幸いです。」
「プローニュ。カース君はすごかったぞ。私はもちろん護衛達も相手にならなかった。噂の方が大人しめかも知れんな。」
「ほう、サリーヌがそこまで言うほどか。それはすごいな。さあ夕食だ。どんどん食べてくれ。」
「ええ、いただきます。」
さすがは港湾都市。魚が多いな。
「この辺りでは魚はどうやって獲っているんですか?」
デルヌモンテ伯爵に質問してみる。
「ほとんどが冒険者の仕事だな。釣りをしたり潜ったり、中々大変な仕事さ。」
へぇ、ギルドで見落としてたかな? そんな依頼が出ていたとは。
「それは面白そうですね。エルネスト君の用事が終わったら僕も潜ってみようと思います。」
「え? カース君泳げるの?」
「もちろん泳げるよ。というか魚を捕るのは結構得意なんだよ。鮑とか栄螺とかを獲るのも得意だよ。」
「さすがだね。そういえばアレクサンドリーネ様達と泳ぐ練習とかしてたらしいね。」
えらく懐かしいことを。鉄塊の魔法でプールを作ったりしてたなぁ。
「サカエニナだと? もしかしてカース君、現在魔力庫に入っていたりするか?」
サリーヌさんが食い付いてきた。貴族なのにどうしたことか。
「ありますよ。よかったらどうぞ。」
三つほど取り出してみる。
「おおおおー! ありがとう! お礼にどうだ? 今夜私の寝室に来ないか?」
「サリーヌ……」
伯爵が呆れているぞ。この伯母さんも貴族女性あるあるに当てはまっているな。
「せっかくのお誘いですが、僕には心に決めた女性がいるもので。」
「そうか。それは残念だ。プローニュと二人まとめてかわいがってやろうかと思ったのだが。まあいい、気が変わったらいつでも来るといい。」
王太子妃を思い出すな。あの人もこんなタイプだったような。
ちなみにこの日は何事なく客室で休んだ。メイドさんが夜這いに来ることもなくゆっくり休むことができた。
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