治療院、サービスで幹部のセグノも連れてきてやった。両手足を折ってしまったからな。
深夜料金込み、二人で金貨二十二枚か。さすがに高いな。でも骨折をポーションで無理矢理治すと骨が変な付き方をするらしいからな。
「乗れ。」
治療院を出た私達はボードに乗り上空へ。誰にも邪魔されない会議室ってわけだ。
「さて、これでようやく話ができるな。改めて約束だ。お前ら正直に話せよ? そしたら希望者は北の領地、楽園に連れてってやる。」
「あたしは行きたいねぇっうぅ」
「私もっぉうそんな所があるなら……」
うむ、ばっちりかかった。
「さて今日の昼だが、俺らは王城内で命を狙われた。王宮にまで入り込んでる闇ギルドなんてあったりするのか? 何年もかけて入念に準備していたようだったな。」
「ふーむ。潜伏を得意とするのは……『魔蠍』の連中だねぇ。あいつら親子単位で潜伏しやがるからタチが悪いんだよねぇ……」
ほぉーお、そんなことまでするのか。いわゆる『草』ってやつか。なのに一世一代の仕事を失敗して草ってか。
「そいつらのアジトとか分かるか?」
「あぁ、ウチで言う出張所だけならねぇ」
よし、それさえ分かればもういい。後は明日にしよう。
「いいだろう。帰るぞ。そこでさらに約束だ。お前らこれからは心を入れ替えて真っ当に生きろよ。そしたら楽園での仕事にボーナスを付けてやる。」
「ふん、アンタがボスだ。従うっさおっ」
「わ、私も、おっおぅ」
これで安心してゼマティス家に匿える。
「ついでだから自己紹介するか。改めて、俺はカース・ド・マーティン。十三歳。クタナツ生まれクタナツ育ち。現住所もクタナツ。お前らは取り敢えずゼマティス家に連れて行く。楽園行きは来週だな。」
「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドル。十三歳。王都生まれクタナツ育ち。強いカースが大好きよ。」
「ピュイピュイ」
自分も紹介しろって? コーちゃんはかわいいんだから。
「この子はフォーチュンスネイクのコーネリアス。コーちゃんと呼ぶといい。歳は分からん。」
コーちゃん自身もよく分かってない。
「ゼマティス家にアレクサンドル家ねぇ。シンバリーもとんだ相手に狙われたもんだねぇ。あたしはラグナ・キャノンボール。生まれは知らないが育ちは王都。先代のボスに拾われたのさぁ。たぶん三十歳かねぇ」
「わ、私はセグノ・ウラナリア。生まれは知らない。王都育ち。三十五歳ぐらい。先ほどの場所に戻してもらえないか? 部下達を放ってはおけない」
まあいいか。
「お前だけな。ボスはだめだぞ。」
「ボスはアンタだろぅ。ラグナと呼びなぃ」
「私だけでいい。希望者は保護してもらえるんだろうな?」
「保護までする気はないぞ? ボーナスが付くのはお前達だけだ。ただ働きでいいなら連れて行くがな。なんせ魔境だからよ。」
「分かった……それでいい」
到着。あまり傷は付けてないから死んだ奴はいないだろうが……
「明日の夜、ラグナと魔蠍に殴り込むからな。参加したければ来てもいいぞ。」
「ああ……行くさ」
さて、ゼマティス家に帰り着いた。あー疲れた。風呂に入ろう。
「おかえりなさいませ」
「ただいま。おじいちゃんかおばあちゃんは起きてる?」
「はい。お二人とも先ほどお風呂からおあがりになりましたので、起きてらっしゃるかと」
「分かった。ありがと。」
ラグナを連れて来てしまったからな。挨拶させておかないとな。
ノックをしておじいちゃん達の部屋へ入る。
「「ただいま帰りました。」」
「ピュイピュイ」
「おかえり。思ったより早かったのぅ。」
「あら? その子は?」
「ラグナ・キャノンボールって言います。ニコニコ商会のボスです。心を入れ替えて真面目に生きることになりました。昼間の件は『魔蠍』って闇ギルドが怪しいそうです。そこでおじいちゃんにお願いがあります。」
「ニ、ニコニコ商会なの……よくもまあ……」
「で、なんじゃ? 何でも言うがええ。」
「こいつともう一人、来週までここでメイドとして使ってやって欲しいんです。来週帰る時に連れて行きますので、行儀見習いってことで。」
「あ、あたしがメイド……」
「おうおうもちろんいいとも。ラグナとやら、分かったな? カースの役に立つメイドになるんじゃぞ?」
おじいちゃんの魔力が迸る。これが魔道貴族の片鱗か。可哀想にラグナが顔を青くしている。
「あなたったら。女の子をそんなに脅かしてはいけませんわ。ねっ、ラグナちゃん? あなたはカースを裏切ったりしないわよねぇ?」
「も、もちろん、です……」
おばあちゃんだって脅してるじゃないか……冷たく鋭い魔力がラグナに突き刺さるかのようだ。
「契約魔法をかけてあるから大丈夫ですよ。心配ありがとうございます。嬉しいです!」
これで一安心。こんな極悪人なら楽園に置き去りにしても心が痛まない。せいぜい働いてもらおう。
そこにメイドさんがスッと入って来た。いつの間に呼んだんだ?
「カリン、ラグナちゃんを使用人部屋に案内してあげなさい。短い間だけど後輩としてかわいがってあげなさいな。」
「かしこまりました」
「頑張れよ。真人間になるチャンスだからな。」
「ああ、どうせボスには逆らえないんだ。せいぜい使えるメイドになってやるさぁ……」
それから私達は遅めの風呂に入りスローなラブを営んでから寝た。コーちゃんは私達が風呂に入る前にどこかへ行ってしまった。ラグナの所かな?
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