「最後は魔法受撃です。私が魔法を二十発撃ちますので、躱さずに防御してください。壁系の魔法で受け止めてもいいですし、球系の魔法で迎撃してもいいです。その場を動かずに魔法で対処するなら何でもいいですよ。魔法は段々強くなります。まずはあの標的をご覧ください。」
ナウム先生が指差したのは標的射撃の時の的だった。
「一発目はこのぐらいです。」
的の真ん中に水球がペチッと当たる。無傷だ。
「そして二十発目はこのぐらいです。」
キィンと鋭い音がしたと思ったら岩の標的に大穴が貫通していた。氷弾かな?
「頭と胴体は狙いませんので、防げなくても死にはしません。でも降参するなら早めにしてくださいね。」
一人目、ホユミチカ校の彼が位置に立つ。直径三十センチもない円の中だ。
彼は水壁を張っている。全て受け止める作戦か。
その結果、八発目で水壁を貫かれ、九発目を肩にくらい円から出てしまった。記録は八発となる。
二人目、サヌミチアニ校の彼は十発目を脛に受け円から出てしまった。記録は九発。
三人目、ソルダーヌちゃんだ。おお、氷壁を張っている! 頑丈そうだ。
十二発目でようやく傷がつき、十三発目で氷壁が割れた。先生が十四発目を撃つまでに修復できるか……『氷壁』間に合った。
しかし、氷壁を貫きソルダーヌちゃんの大腿部に命中。しかし彼女は一歩も動いていない。そのまま十五発目が……肩を貫き、彼女は倒れた。記録は十四発。
うーん、アレクに怪我をして欲しくないな。まあその時は高級ポーションを大盤振る舞いだ。微かな傷すら残さんぞ。
そしてアレクの番となった。やはり氷壁を張っている。薄いようだが、大丈夫なのか?
十発目で氷壁が割れた。しかしすぐに新しい氷壁が張られている。一枚目より少し厚いか?
十一、十二発目、ヒビは入るが健在だ。
十三発目の前に既存の氷壁の前に新しい氷壁ができており、先生とアレクの間を斜めに遮っている。なるほど! 防ぐのではなく弾く。いいアイデアだ。
十四、十五発目を難なくクリア。弾かれた氷弾が観客に向かうが問題ないだろう。残り五発。
十六発目、斜めに配置した氷壁が割れてしまった。
先生が氷弾の角度を変えてきている!
十七発目、目の前に張った氷壁まで割れた!
アレクは動かない。新しい氷壁を構築しようともしない。どうした?
ナウム先生が十八発目を撃つ瞬間、上から金属の標的が落ちてきた。先生の氷弾をそれに当て見事に防いで見せた。そんなに大きくない立方体で、よく防いだものだ。今日のアレクは冴えまくってるな。
十九発目、先生の狙いを読んだのか防御成功。
二十発目を打つ前にアレクは降参をした。
恐らく十八発目以降は五年生のレベルでは防御不可能な威力。斜めに逸らしてもいいが、それでもかなりの頑丈さが必要のはず。そこでアレクはお手軽に風操で先程の標的を流用したと。思考の柔軟さがすごいな。
私なら鉄壁で無理矢理防いだんだろうな。
それでも二十発目は防げないと判断して降参をしたわけだな。賢明な判断、さすがアレク。
「それでは協議に入りますので、しばしお待ちくださいね。」
優勝は協議するまでもなくアレクだろう。他に何を協議するのだろうか。
「やっぱり魔力がギリギリだったんじゃない。あんな手を使うなんて。」
「少し違うわ。私の魔法であの十八発目を防ぐにはあれしか方法が無かっただけよ。それにどうもあの金属の標的はそれを踏まえて用意されてた節があるわ。」
「くっ、そうなの。気付かない私が間抜けだったのね。でも気付いたとしてもあの重量をあんなに正確に動かせたとは思えないわ。私の負け、さすがねアレックス。」
「ソルも領都ではトップなんでしょ? 頑張ってるのね。ところで私は卒業したら領都の魔法学校に行くわよ。あなたはどうするの?」
「本気? アレクサンドル家のあなたが? 私は王都の貴族学校よ。そのまま貴族学院にも行くし。」
「本気よ。たぶん王都の魔法学院にまでは行かないと思うけど。アレクサンドル家と言っても兄上達はいるし、どうせ嫡流じゃないしね。好きに生きるわよ。」
協議が終わる頃、学問部門も終わった。それも含めて校長による結果発表が行われる。
「皆さん、長らくお待たせいたしました。結果を発表いたします。
学問部門、優勝はクタナツ校、サンドラ・ド・ムリスさん!
剣術部門、優勝はクタナツ校、スティード・ド・メイヨール君!
魔法部門、優勝はクタナツ校、アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルさん!
よって総合優勝は、クタナツ校です!」
すごいな。私の友人達はなんて優秀なんだ。私とセルジュ君は手を叩いて喜んでいる。
「それでは優勝校を代表してアレクサンドルさん、一言ご挨拶をお願いいたします。」
いきなりかよ。アレクなら問題ないだろうけど。
「皆さんお疲れ様でした。悔いの残らぬよう全力を尽くされましたでしょうか。今回は私程度の腕で優勝できたことを幸運に思います。もし結果に不満がお有りでしたら各部門の優勝者に挑戦するとよいでしょう。快く受けて立つはずですわ。それではご機嫌よう。」
いきなり挨拶を振られてこれか……
アレクの上級貴族オーラが炸裂している。
「素敵な挨拶をありがとうございました。それでは以上を持ちましてフランティア秋の大会を終了いたします! 」
あー終わった終わった。少し豪華なお昼ご飯を食べたらそれからはお楽しみの時間だ。
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