着いた。懐かしきゼマティス家へ着いた。門番さんに挨拶しよう。
「どうもお久しぶりです。カースです。おじいちゃんかおばあちゃんはいらっしゃいますか?」
「少々お待ちください」
門番さんは中に入っていった。
少ししてメイドさんが出てきた。
「ようこそお越しくださいました。先代様ご夫妻はご不在ですが奥様がいらっしゃいます。どうぞこちらへ」
メイドさんに案内されて中に入る。懐かしいなぁ。
「奥様、カース様とアレクサンドリーネ様がいらっしゃいました」
「ピュイピュイ」
自分のことも忘れるなってか? 分かってるって。
「あら、カース君とアレックスちゃん。よく来たわね。いつ王都に?」
「お久しぶりです伯母様。先ほど着いたばかりです。」
「お邪魔いたします。」
「ピュイピュイ」
「そう。夏休みだものね。うちの子達も遊びに行ってしまったわ。夕方には帰ると思うわ。」
「そうでしたか。ところでおじいちゃんとおばあちゃんはどこかに行かれてるんですか?」
「ええ、旅に出てしまったわ。少しずつあちこち回るんですって。そのうちフランティアにも立ち寄ると思うわ。」
「なるほど。じゃあきっとお元気ですね。安心しました。」
「ところで今回はいつまで王都にいるの?」
「たぶん一週間ぐらいです。あっ、これお土産です。皆さんの分も。」
「あらあら、多いわね。ありがとう。みんなで分けるわね。そろそろお昼だけどお腹は空いてる?」
「ええ、空いてます。」
「私も……」
「ピュイピュイ」
美味しかった。
「ところで伯母様。ラグナとセグノはどうしてます? あいつらとの約束がようやく果たせそうなもので。」
「あぁ二人とも主人が連れて行ってしまったわ。ガスパールの修行に付き合わせるそうよ。」
「あらら、じゃあ夏休みいっぱい帰ってきませんかね?」
「たぶんそうね。ムリーマ山脈に行ってるはずだから帰りにすれ違うかも知れないわね。」
「なるほど。じゃあ帰りに寄ってみますね。」
「寄る? ムリーマ山脈よ? まさかカース君、魔力が……?」
今の私の魔力はこの伯母さんでも感じ取れない程か。我ながら不思議なもんだ。
「そうなんです。最近戻ってきまして大喜びなんです。だから王都にも来れました。」
「そう。それはよかったわ。イザベルさんも安心ね。」
「ところで、ムリーマ山脈でドラゴンゾンビがいたんですよ。ドラゴンの骨って何にするのがいいと思います? 王家に献上でもいいんですけどね。」
「はあっ!? ドラゴンゾンビですって!?」
「ええ、前に虫歯ドラゴンの話をしたじゃないですか? そこにまた寄ってみたんです。そしたらゾンビになってました。だから燃やしておきました。」
「はぁ、カース君たら……イザベルさんが心配するのも分かるわ……ドラゴンゾンビの骨なんてね……献上するといいわ。驚くほどの褒美が貰えるわよ。」
ほほう。そうかそうか。少しは残しておくが、ある程度は献上してもいいな。
「分かりました。ご助言ありがとうございます!」
「ところで、マルグリット様。ウリエンお兄さんの新居はご存知ですか? 後ほど訪ねてみようと思いまして。」
さすがアレク。すっかり忘れていた。
「分かるわよ。うちの者に案内させるわ。馬車で行きなさい。」
「ありがとうございます。甘えさせていただきます。」
「じゃあ早速行ってみます!」
兄上は忙しいとしてもハーレムなんだから誰かいるだろう。
それから馬車に揺られること三十分。城門を一つ出て、第二城壁内エリアへと移動した。行き先は南西部か。
「到着しました。こちらです」
御者さんに言われて馬車を降りる私達。
「ありがとうございました。もう帰られて結構ですよ。」
「ありがとうございました。」
「ピュイピュイ」
結構大きいな。ゼマティス家より大きいんじゃないか?
門番はいない。代わりに呼び鈴の魔道具が設置されている。合理的だな。
「はい。当家に何用でしょうか」
出てきたのはメイドさん。それもお局タイプだ。
「こんにちは。カース・ド・マーティンと申します。ウリエン兄上はご在宅ですか?」
「申し訳ありませんが身元を証明する物を何かお持ちですか?」
マジかよ。警備が厳しいな。まあいいや。
「じゃあこちらで。」
こんな時に使うのはやっぱり国王直属の身分証明書だな。お局様も目の色が変わっ……てないな。
「どうぞお入りくださいませ。旦那様はいらっしゃいませんが、奥様がいらっしゃいます」
この場合の奥様って誰なんだ?
屋敷の中には何人かメイドさんもいた。完全に上級貴族の邸宅じゃないか。
「奥様、旦那様にお客様です」
連れて行かれた部屋はその奥様の自室かな? いい部屋に住んでるな。調度品も高そうだ。
「カース、アレックス、よく来た。歓迎する。」
王太子の二女かよ。
「ティタニアーナ様、お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」
「お邪魔いたします。遅くなってしまいましたが、ご結婚おめでとうございます。」
「ピュイピュイ」
「今日はフェンリル狼がいない。あの子はどうした?」
「カムイなら僕の別荘にいます。エリザベス姉上から聞かれたかも知れませんが、ヘルデザ砂漠の北東にある別荘です。」
「ああ、そんな所に別荘があるなんて。やはりあなたはいい弟。私のことも姉上と呼ぶといい。アレックスも。」
「はい。ではティタ姉上と呼ばせていただきます。」
「恐れ多いことですが私もそのようにさせていただきます。」
「お茶が入りました」
おお、メイドさんか。
「カースからごく微弱な魔力を感じる。もしかして魔法を取り戻した?」
さすが王族は鋭いな。普通は感知などできまいに。
「そうなんです。色々あって幸運でした。ところでドラゴンゾンビの骨が手に入ったんです。王家に献上したいんですが、どうしたらいいですか?」
「ドラゴンゾンビ? 見たい。」
「じゃあ後で庭に出しますね。」
「楽しみ。ところで私はもう王家の人間ではない。だから王城に入れない。ウリエンから届け出てもらうといい。」
へぇ、そんなものなのか。権力の乱用とか分散を防ぐ的なやつかな? 兄上を警戒する勢力とかもいそうだもんな。
ん? 突然ドアが開き乱入者が……姉上だ。
「カース! あんた魔力が!?」
「やあ姉上。そうなんだよ。もう大丈夫だよ。」
「カース……よかった、よかったわ……」
おお、姉上にしては珍しく、私に抱きついて半泣きだ。喜んでくれるのは私も嬉しいな。だいぶ気に病んでただろうしね。
それからはみんなで積もる話を夕方まで続けた。兄上はまだ帰ってこないらしいので、本日はここまでだ。
さて、骨だが今日は見せるだけ。庭に出してみたのだが、かなり驚かれた。ふふん。
後日改めてドラゴンゾンビの骨を持ってくることを約束し私達はゼマティス家へと帰った。
ところで、兄上一家って収入はどうしてるんだ? 兄上一人の稼ぎで維持できる屋敷じゃないもんな。すごいぞ兄上、ハーレムキングだ。
二つ名も模範騎士からハーレム騎士とかになったりしてないだろうな?
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