異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

323、セクハラ組合長

公開日時: 2023年2月23日(木) 10:42
文字数:2,179

昨夜は父上達と楽しく飲んだ。

ディノ・スペチアーレはあまり飲むわけにはいかないが、王都で買ったラウート・フェスタイバルもある。酒に困ることはなかった。


さて、私が起きたのは昼前だ。一人だけかなり寝ていたらしい。だって疲れてたんだよ。ベレンガリアさんに何か食べるか聞かれたが、寝起きで食欲がなかったので断った。とりあえずカムイとコーちゃんを連れてギルドへ行こう。




ギルドでは意外とすんなり組合長の部屋に通された。カムイは外で待っている。


「おうおめぇか。毒針を殺ったらしいのぉ。」


「組合長のお膳立てのおかげです。ありがとうございました。」


本当かどうかは知らないが、母上が言うならそうなのだろう。


「おお、面倒だったぜえ。あいつらときたらよぉ、バランタウンやソルサリエまでしっかり入り込んでやがってのぉ。それどころかクタナツにもまだ残党がいやがった。平民のふりしてやがったぜぇ。」


「さすが組合長ですね。これはほんの気持ちです。」


ディノ・スペチアーレはもうないからラウート・フェスタイバルを差し出す。


「王都の酒かぁ。貰っておくぜぇ。どうじゃあ? 稽古つけてやろうか、おお?」


「ぜひお願いし『狙撃』ます。」


「ば、バカやろ! あーあ、壁に穴が空いたじゃねぇか!」


なんでこの至近距離での狙撃を避けられるんだよ……


「稽古は訓練場に出てからじゃあ。おめぇが魔法使うってんならワシもおもしれぇモン使わしてもらうぜぇ。先に出とけやぁ。」


「押忍。お待ちしてます。」


この前はさんざん痛めつけられたからな。魔法ありなら負けん。ぎったんぎったんにしてやるぜ。


コーちゃんは離れておいてね。危ないからね。


「ピュイピュイ」




さほど待つこともなく組合長はやって来た。


「何でもアリでええけどのぉ、建物に傷つけたらおめぇの払いじゃあ。それだけ注意しとけのぉ?」


「押忍。ではいきます。」


『散弾』


「そんな小雨が効くかあ! ドンと来いやぁ!」


私の散弾が小雨かよ。そんなら行くぞ?


『榴弾』


「うるぁあ!」


「げおっ……」


マジかよこのオッさん……ダメージ無視してパンチ一発で私の自動防御を破りやがった……もう少し深かったら前回の得体の知れない攻撃をくらっていたかも知れないな……それともドラゴンの装備だからきっちり防いだのか。腹に少しだけ衝撃が来たが……

ともかく、ミンチとまではいかないがダメージは与えた。両足なんてもう動くまい。それでも手は緩めんぞ?


『氷塊連弾』

『徹甲弾』


「おーらおらおらおらぁ! なんぼでも来いやぁ!」


全弾その場で殴って迎撃してやがる……何なんだこのオッさんマジで……


『榴弾』で注意を逸らして目眩しの『火球』

そこにトドメの『徹甲弾』


腹に命中したが、ダメージがあるのか? たぶん戦車の装甲でもブチ抜く威力だぞ?


「ふうぅ……ここまでじゃあ……おめぇ、カースよお……めちゃくちゃじゃのお……ワシぁよく生きてたもんだのぉ……」


「むしろなんで生きてるんですか。最後の一発はクタナツの城門でさえブチ抜きますよ?」


「へっ! 鍛え方が違うからのぉ……おう、魔女を呼んでくれやぁ。ちぃとダメージがでけぇ……ワシぁまだ死にたくねぇからよぉ……」


「分かりました。来てくれるかはともかく呼ぶだけ呼びに行きますね。」


この野郎……贅沢だな。母上に治療させようってか? まあいいけどさ。母上が判断することだからな。




「と、言うわけなんだ。どうする?」


「まったく……カースったら。行くわよ。組合長が死んだらクタナツが危ないじゃないの。」


「じゃあ急ごうか。乗って乗って。」


ミスリルボードなら一瞬で着くぜ。




「よお魔女ぉ……」


「あらあら組合長。なんて様なんですか。はいはい、治しますよ? あ、私のお尻を触ったらモノを千切りますからね?」


「へっ……イアレーヌはそんなこと言わなかったぜ……」


イアレーヌって誰だ?


「私は姉上じゃありませんよ? 治して欲しくないんですか? 放っておくと……もうすぐ死にますよ?」


「冗談じゃあ……治してくれやぁ……」


ああ、母上のお姉さんか。そういや母上は二女ってことだったな。


「はいはい。」


『臓腑修癒』


おおおぉ、組合長の傷が見る見る消えていく。


『快癒』


「さあ、治りましたよ。せっかくですからサービスしておきますわ。」


『回春励起』


なんだその魔法は?


「へっ、ワシにぁ必要ねえってのによぉ。だがありがとよ。命拾いしたぜぇ……魔女の息子が魔王かよ……笑えるぜぇ……」


「そろそろ引退だと聞いておりますわ。全盛期のようにはいかないものでしょう。」


「けっ、ワシぁ今が全盛期じゃあ。おうカース、魔女に免じて建物の払いは勘弁してやらぁ。穴だらけにしやがってよぉ……」


組合長相手にするんだから手加減する余裕なんかあるかよ。損害なんか気にせずやってやったさ。


「これで一勝一敗ですね。次は武器以外も装備を整えた上でやりましょうか。」


「けっ、次ぁギタギタにしてやんぜぇ。じゃあのぉ。月末の七等星試験、きっちり来いやのぉ?」


「ええ。約束ですからね。」


組合長も引退なのか。どことなく寂しくなるな。アステロイドさんによるとゴレライアスさんが次期組合長って話だったか。実力主義のクタナツらしいな。でも組合長って書類仕事も多そうだが、大丈夫なのか?

そんなことより私は組合長に勝った。これは気分がいいな。正面から打ち合って勝ったわけじゃないから思うところがなくもないが。満足だ。

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