アレクから男関係について聞かれたソルダーヌちゃん。それが気になるバラデュール君。
「さあ、知らないわ。どうせ王族とか公爵家あたりと婚約させられるんじゃないかしら。」
「そんなことは知ってるわ。ソル自身が気になる男の子はいるのかって聞いてるのよ。」
「いるわけないでしょ。どこの誰とも分からない男と婚約する身よ? 無駄なことをしてもね。」
それはそれで可哀想な気もする。最上級貴族は大変だな。
バラデュール君も心なしかガックリしているようだ。
それからはみんなで和やかに歓談していた。こうやって他校の生徒と交流を深めるのも青春に違いない。
彼女たちはもう二泊してから領都に帰るらしい。ソルダーヌちゃんだけアレク宅に一泊したりするとか。
さて、エキシビションも終わりせっかくなのでみんなで出店を回ることになった。屋台の定番と言えば串焼肉。
何の肉かは知らないがいい匂いが堪らない。
「今日は私が払うわ。みんな好きに食べてね。ポーションのお礼よ。」
ソルダーヌちゃんは義理堅いのか。なら遠慮なく食べよう。意外とみんな立って食べるのは平気のようだ。貴族的にはしたない行為ってことになってるのに。立食パーティーと思えば似たようなものだろうか。
「クタナツのギルドに行ってみたいわ。強い人が多いんでしょ?」
どこの世界もお嬢様というものは好奇心が旺盛なのか?
「やめときなさいよ。あそこは遊びで行く所じゃないわ。ただでさえクタナツでは貴族の力が使えないのにギルドでは尚更よ?」
「そんなの分かってるわよ。だから行ってみたいんじゃない。それに何か食べる所ぐらいあるでしょ?みんなで食べましょうよ。」
私もアレクも最初は興味本位で行ったしな。やはり子供にとってギルドとは大人の未知なる世界なのだろう。
「カースどう? 連れて行ってもいいかしら?」
私に聞かれても困る。
「いいんじゃない? ミルクセーキでも飲んでようよ。入る前は一言挨拶するといいよ。」
この人数だと邪魔かも知れないが絡まれることもないだろう。
今日は人通りが多く馬車が使いにくい。よって全員でギルドまで歩くことになった。
お喋りしながら歩いたらすぐに着いた。
「お疲れ様でーす。」
「お疲れ様です。」
意外と閑散としている。お祭りだからかな。
私達は酒場に移動して席に着く。ミルクセーキもいいが、もっと高いメニューはないかな? 奢りなんだから。
あった。
「僕はキラービーハニーのミルクセーキにしようかな。」
「あら、それいいわね。私もそうするわ。」
クタナツ五人組とソルダーヌちゃんは同じメニューを頼んだ。領都の二人は遠慮がちに普通のミルクセーキを頼んだが、ソルダーヌちゃんによって結局全員同じメニューとなった。
「おいおーいいつからここは子供の遊び場になったんだぁ?」
「帰ってママのおっぱいでも吸ってろよー」
「怖いお兄さんが怒らないうちに帰った帰った」
「帰る前に有り金置いて行けよーそしたら安全だぜー」
まさかこのタイミングであの伝説のセリフ、『帰ってママのおっぱいでも吸ってろ』を聞くことになるとは。
「ううっ、ぐすん、ぼくのママはいないんです……おっぱいを吸いたくても吸えないんです。だから代わりにおじさんのおっぱいを吸っていいですか?」
水の魔法で涙もバッチリだ。
今や私は目からも魔法を出せるからな。
やったことはないが鼻や耳からも出せるだろう。
「あ、いや悪かった」
「バカ! 騙されんな! こいつらどう見ても貴族じゃねーか!」
「あぶねー騙された」
「俺もだクソ貴族が」
もうバレた。一人鋭い奴がいるじゃないか。いや、他がバカなのか。
「私も騙されたわよ。あなた凄いのね。」
ほぉー、ソルダーヌちゃんを騙せたのか。私の演技も大したものだ。
「おめーら他所モンだな。クタナツで調子に乗ってると弾かれちまうぜ?」
アステロイドさんとかに。
「ふざけんな! テメーこそ貴族だからって調子に乗ってんだろーが!」
「ガキが!」
「貴族がなんぼのもんじゃあ!」
「行く道行ったるぞ!」
あーあ、失敗か。
「カースに任せるとやっぱりこうなるのよね。ダメよねぇサンドラちゃん?」
「そんなことよりそちらのヒゲがダンディなおじ様? 一緒に飲みません? 私は本当に父がいないので甘えたい気分なんですの。」
うおっ、サンドラちゃんが悪女モードに入った! ちなみに今日のサンドラちゃんは貴族らしい服装をしている。晴れの舞台ってことでアレクが貸したのだ。たぶんそのまま貰っておいてと言うはずだ。
「お、俺か!?」
「いや俺だよな!?」
おっさん達が十歳児に翻弄されている……
「私、お酒って飲んだことないの。美味しいお酒を教えてくださる?」
それからサンドラちゃんの悪女っぷりは加速し、いつのまにかおっさん達は酔い潰れており私達の勘定もおっさん達が払うことになっていた。八人で金貨二枚。キラービーハニーは高いのだ。
「さすが辺境一の頭脳ね。面白いものを見せてもらったわ。これは御礼よ。やっぱり来てよかった。ありがとうアレックス。クタナツっていい所なのね。」
お嬢様は満足されたようで、サンドラちゃんに何かを渡していた。ミルクセーキが美味しかったので私も満足だ。
そこで解散となりアレクは私が、サンドラちゃんはセルジュ君とスティード君が送って帰った。領都の三人組は宿へと向かった。護衛っぽい人もいるから問題ないだろう。
それにしても有意義な一日だった。領都で家が手に入るかも知れないなんてラッキーだ。でも貴族街は嫌だけど、スラム街はもっとイヤだな。楽しみにしておこう。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!