異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

330、領都の魔法学校

公開日時: 2023年3月3日(金) 10:24
文字数:2,239

さてと、放課後までまだ時間があることだし、魔法学校に行ってみよう。外の訓練場に少し興味があったんだよな。使わせてもらおう。


顔馴染みの門番さんに挨拶をし、受付にて許可を取り、いざ訓練場へ。




しまった……まだ授業中か……

そりゃそうだ……

仕方ない。せっかく来たんだから見学でもしてよう。たぶん三十分とかからず終わるはずだ。今使っているのは何年生かな。知った顔がいないので五年生でないことは分かる。

二人一組で向かい合って魔法を撃ち合っている。どうやら水球に限定しているようだ。魔法学校だけあってみんなそれなりに腕はあるようで、連射速度も悪くない。ただ、みんな一度に一発しか撃ってないところを見ると、そういうルールなのだろう。


もう見るのに飽きてしまった。座って錬魔循環でもしてようか……いや、久しぶりに鉄キューブで遊んでみよう。鉄塊と点火と金操を駆使して小さい頃からコツコツと大きくしていた鉄の立方体だ。今では一立方メイル近くある。一体何トンあるんだ?

これを金操で少し浮かせてから……無理矢理変形させる。まずは球体へ……




きっつ……

加熱なしで鉄を変形させるのってかなり大変だよな。魔力の消費が半端ではない。でもだいぶ球に近付いてきたな。もう少し……




できた……半径六十センチ程度の鉄球だ。これってこのまま武器として使っても面白いよな。鉄塊の魔法でその都度作ってもいいけど、さすがに無駄が過ぎるからな。それに小さい頃からコツコツとこのサイズにまでしてきたんだし私の魔力が染み込んでいるような気がして愛着もある。よし、こいつはこのままもっと大きく育てよう。とりあえず『鉄塊』

半径を一センチ大きくしてみた。


よし、これでまた立方体に戻すぞ。これは中々にきつい稽古になりそ、ん? いつの間にか遠巻きに生徒達が私を見ている。あぁ魔力を使い過ぎたか……


「カース兄ちゃん? こんなとこで何してんの?」


その中から私に声をかけてきたのは……


「ステラちゃん? 魔法学校に進学してたの? 知らなかったよ。」


スティード君の妹ステラちゃんではないか。確か三つ下だから……この学年は二年生か。


「そりゃあ会ってないし言ってもないもんね。スティ兄に手紙では知らせてあるけど入学してから会ってもないし。」


「スティード君の口からも聞いた覚えはないね。どう? がんばってる?」


「ぼちぼちね。この前の子供武闘会見たよ。やっぱりカース兄ちゃんの魔法はすごいよね。で、何やってるの? 暇なら魔法教えてよ。」


「確かに放課後まで暇だよ。教えるって言われてもなー。何か聞きたいことはある?」


私は魔法を教えるのが苦手なんだよ。


「魔力の増やし方とか。あと魔力の消し方も。」


「増やし方? おすすめはやっぱり循環阻害の首輪だね。確かスティード君に一つ貸してるんだよね。で、最終的にはこんな首輪をしてみるのもいいかも。」


そういって拘束隷属の首輪を取り出す。王族用の特注品なんだぞ。


「へー、ちょっと借りていい?」


「いいよ。そこの君、すぐに外せるように注意して見ておいてあげてね。」


「は、はいっ!」


好奇心旺盛なステラちゃんは迷わずそれを首に巻く。そしてなんと、予想に反して……


「何これ……さいあく……」


「おっ、ステラちゃんすごいね。立っていられるんだ。」


「なんとか……あ、もうだめ……」


そう言って倒れてしまった。やるもんだなあ。近衛騎士ですらすぐに倒れたのに。同級生によって素早く首輪が外され私に手渡してくる。


「ど、どうぞ!」


「うん、ありがとう。じゃあついでで悪いけどステラちゃんを運んであげてくれる? これはお小遣いね。」


「は、はいっ!」


うん、素直な子供はかわいいものだ。浮身を使ってステラちゃんを運んでいった。


「あ、あの! ま、まま、魔王様ですよね! そ、その魔力の消し方はどうされてるんですか!?」


別の男の子が質問をしてきた。


「いや、実はこれ意識してやってるわけじゃないんだよ。ちょっと事情があってポーションを飲み過ぎてしまってね。それで一ヶ月近く寝込んで目が覚めたら魔法が使えなくなってしまったんだよ。それから二年ぐらいして再び魔法が使えるようになったんだけど、なぜかこうなってたの。何か魔法を使わない限り全然魔力を感じないよね?」


「は、はい! 先ほど感じた魔力は恐ろしく濃密でした!」


無駄に魔力を注ぎ込んだからね。


「あ、あの、じゃあ! 子供武闘会の時の……」

「そのウエストコートは……」

「ドラゴンとの戦い方は……」

「アレクサンドリーネ様との……」

「ダミアン様って本当は……」

「こっちの狼ちゃんの毛並み……」

「蛇ちゃんは本物のフォーチュン……」


さすがに無理だ。こうも一斉に喋られては聞き取れない。七つの魔法を同時に発動できる私でも七人の話を聞き分けることなどできるはずがない。そしてグッドタイミング。


「今日はこれまで。ではまた明日」


教師から声がかかる。あの教師は生徒達が私に群がっているのをいいことに何やら自分の仕事を片付けていたようだ。そして時間が来ればそそくさと解散。いち早く帰ろうとしている。うーん、前世の自分を見るかのようだ……


授業の時間は終わったのに子供達は私の周りから帰ろうとしない。不思議なものだが、たった三つ歳下でしかないのに、ずいぶんと子供に見えてしまう。キアラやシビルちゃんの方がもっと下なのに。


アレクにはすでに『伝言つてごと』で連絡してあるから後は待つだけなのだが……どうしたものか。


「へん! 魔王がなんだい! 俺の方が強いさ!」


おおー。やっぱ子供はこうでないとね。

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