夜も更けた。少し眠いがまだ寝るわけにはいかない。最後に残ったエルフを誘き出さないとな。
私とマリーとお兄さんで焼け落ちたギルドまでやって来た。アレクには見せられないことをするからな。
死にぞこなったエルフ、ガブ何とかをミスリルボードに乗せて五メイルほど浮かべる。
「命令だ。そこで踊ってろ。」
「くっ……」
「それから大声で助けを呼びな。拡声を使ってもいいぞ。三十分経過して男が現れなければ……」
『テーゲンハルトぉー! 助けてぇー! お願いぃー! 私まだ死にたくないのぉー!』
「心配するな。絶対死なせねーからよ。」
夜だが光源の魔法を使っているので、女エルフの姿はよく見える。ひょろひょろと無様な踊りだ。アレクの鋭いステップを見習いやがれ。
十五分経過。男エルフは現れない。
「おい! 来ねーじゃねーか! もっとしっかり呼べや! それとも捨てられたか? 可哀想にな! でもまあそんな貧相な体じゃ捨てられても仕方ねーな! この腐れブスエルフが!」
『うわぁあぁん! だずげでよー! デーゲーン! ごんなのってないよぉおおーー!』
「そうそう。せいぜい大きな声で助けを呼びな。」
「さすが魔王……よくこんな手を思いつくもんだ……」
「同性、しかも同郷の私としては見るに耐えないのですが、あやつの罪を思えば……致し方ないかと……」
お兄さんもマリーもドン引きしてる。私だって好きでやってるわけないだろ。姿を現さない最後のエルフが悪いんだ。おっ、生き残った冒険者がちらほら現れたぞ。こんな時に何やってんだって気になるよな。
ならばせっかくだからこいつらに……
〜〜削除しました〜〜
「さーて、そろそろ時間だ。どうやらお前は捨てられたようだな。まあ心配するな。俺が飼ってやるからよ。時々餌もやるから死にはしないさ。」
そう言ってミスリルボードを少しずつ降ろす。
「マリー、現れる気配はない?」
「ええ……ありません……坊ちゃん……」
そんな悲しそうな顔をしないでくれよ。あいつらの所為で何人死んだか分からないレベルなんだから。
そしてミスリルボードは地上に降りる。目を剥いて女エルフを取り囲む冒険者達。
〜〜削除しました〜〜
それから五分。伝言の魔法でこっそり命令を送る。
『………………』
〜〜削除しました〜〜
二十分は経った頃だろうか。現場にコーちゃんがやって来た。
「ピュイピュイ」
え? 何だって?
「ピュイッピ」
何と! 最後のエルフがゼマティス家を襲ったのか! 人質交換でも狙ったのか? それにしてもツイてない奴だな。母上に敢え無く制圧されたと。さすが母上、エルフだろうと敵じゃないな。
よし、それなら帰ろう。今さら吐かせる情報なんかなさそうだけど、落とし前は必要だもんな。
「おい、兄さん方よぉ。お楽しみのところを悪いがそろそろ時間切れだ。」
文句を言いたそうな奴の方が多かったが、知ったことではない。お時間五分前でーす。延長できませーん。
「お待たせ。さあ帰ろうか。まだまだ解決とはいかないだろうけど、少しは前進だよね。」
「そうですね……」
マリーには悪いが同胞の犯した罪が大き過ぎるよな。遊びで王都をぶち壊して大勢の人間を死なせたのだから。
それにしても、母上がいてくれるから守りを気にせず動けたのは大きいよな。まだまだ油断はできないけど。白い鎧と紫の鎧の奴らがいるだろうし、教団の幹部もいるだろう。狂信者なんか何人いるか分かったもんじゃない。その上盗賊まで来るとか。王宮は何やってんだよ。まああっちはあっちで大変なんだろうけどさ。
ちなみにエルフ女は歩けないようなので這ってこいと命令した。そして臭いので十歩離れて付いて来させている。外道にはそれが相応しい。せいぜい罪の重さを感じながら這い蹲ってやがれ。
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