「お前みてーなガキがグリフォンだぁ? 大口もいい加減にしやがれ!」
何だこの知恵の輪ができなくて癇癪を起こしたバカっぽい大男は。
「見たいなら見に来いよ。今から倉庫に出すからよ。」
「うるせぇ! 何俺様に指図してやがる! ガキの分際で口のきき方も知らねーのかよ!」
「お前それでも冒険者か? 情けないこと言ってんなよ。ベテランのつもりってんならそれっぽいとこでも見せてみな?」
周囲には多少人が集まっているようだ。いつもながら職員は止めもしない。
「ガキに舐められんなよ」
「そんなんだから七等星なんだろ」
「俺はバンドンに賭けるぜ?」
「じゃあ俺もバンドンだ」
「あれ? あのガキどっかで……」
「上等だガキぁ! 訓練場に来いや!」
久々のパターンだ。でもたまには何も賭けずにやるのもいいか。
「有り金出したら優しく済ませてやるぜ?」
急にニヤニヤし出した。うまくパターンにハマったとでも思っているのだろう。難癖つけて金を出させる、定番のパターンなのだろう。
「そっちこそ銅貨一枚出したら手加減してやるぞ? 持ってるか?」
「ガキぃ!」
奴はいきなり斧付きの大きい槍を取り出し襲ってきた。これはハルバードだったかな。
『金操』
奴が大きく振り上げたハルバードをそのまま後ろに動かす。その動きにバランスを崩した奴は尻餅をついて倒れこむ。そこに地面でバウンドしたハルバードがギロチンのごとく襲いかかる。
奴にとっては幸運なことに斧部分がギリギリで首をかすっただけで済んだ。ギリギリ首が飛ばないところで済ませるのが私の魔法制御の妙だ。
「まだやるのか? やるなら起きろ。」
「やるに決まって……」
確かに斧の部分は当たらなかったが、柄の部分が首を押さえていることに変わりはない。まだやると言うならじわじわと首を押し潰すまでだ。
「お前もしかして自分でも持てないような重い武器を使ってんのか? プッ……」
これには周囲の見物人も失笑を堪え切れないようだ。腕力だけはありそうな大男なのに。
「う、うるせ……」
ジタバタしてもハルバードは動かない。むしろ首に食い込んでいく。
「重いんだろ? 助けてやろうか?」
もう返事もない。
「見物されてる皆さーん。これって僕の勝ちでいいんですかね?」
「いいんじゃねー?」
「でもそいつしつこいぜ?」
「あーあ、負けちまったぜ」
「ありがとうございます。じゃあ勝負は終わりですね。」
私はいつも通り奴の頭だけを出して水壁に閉じ込める。
「お、おい何するんだ?」
「終わったんじゃねーのか?」
「勝負がつきましたので、落とし前の時間です。」
卵を片手に持ち替え右手には普通の木刀。さっきは卵を置く前に襲われたから両手が塞がってたんだよな。
顔を殴り、水温を上げる。起きないな……
さらに殴る。
「おら、起きろ!」
「お、おい、もうそこら辺で……」
「勘弁してやっちゃあどう……」
「お気遣いありがとうございます。僕は疲れておりませんので大丈夫です。」
「うう……」
やっと起きたか。打たれ弱い奴だな。
「魔力庫の中身を全部出せ。」
そう言いつつ殴る。
「魔力庫の! 中身を! 全部出せ!」
「ま、待て、出すから……」
殴る手は止めない。早く出せよ。
おっ、水壁内にポツポツと武器や鎧や小銭が放たれた。全部とは言ったけど現金以外は要らないんだよな。
「手持ちの金も出せ。」
奴は震える手で懐から財布を取り出した。私もそろそろ財布を買おうかな。さて、財布の中身だが、金貨一枚と銀貨三枚だった。魔力庫から出てきた小銭と合わせても金貨三枚に満たない。ギルドカードにはもっと持ってるのだろうか?
「うっわ貧乏人。お前七等星でそれかよ。だから俺みたいなお子様にタカってんのかよ。恥ずかしい奴だな。あ、見物人の皆さーん。ここにある装備はプレゼントしますよ。早い者勝ちでーす。」
するとさっきまで恐る恐るこちらを見ていた見物人達は争うように殺到した。私はグリフォンを倉庫に持って行こう。
「ところでグリフォンの羽で女性にプレゼントをするならどんな物がいいでしょうか?」
「よくあるのは帽子にワンポイント入れたり、ブローチにしたりですかね」
「あ、布団にしたらどうですか? 暖かいんじゃないですか?」
「どこの大貴族ですか! グリフォンの羽毛布団だなんて! 材料は足りるでしょうが作れる職人は希少ですからね。領都だとベイツメントで相談してみるといいでしょう。あそこにはいい職人が揃ってますから」
「ありがとうございます。じゃあ肉と魔石と羽毛を貰います。それ以外を買い取りでお願いします。」
ふふふ、高級羽毛布団ができそうだ。これで冬もあったかだな。
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