「狼藉者め!」
「神妙にしろ!」
「ここをどこだと思ってる!」
「無実の人間を捕まえることが騎士団の仕事か?」
ちっ、問答無用かよ。全員抜剣して襲いかかってきやがった。やるしかないか……
『榴弾』
少しはいい鎧を装備しているようだが、無駄だ。たちまち全滅。
そして比較的軽傷な騎士を叩き起こす。
「おら、起きろ。そのぐらいで死にはしないだろ。」
「ぐっ、な、何が……」
「俺が昨日連れてきた奴、クリークっつったか? そいつの所に連れて行け。」
「もう、いない……」
「はぁ? なんでだよ!」
「昨日の夜、釈放された……」
意味が分からん。何考えてんだ?
「あいつは犯罪者だぞ? なぜ釈放などする?」
「シザーズ隊長が……魔法尋問の結果無罪だからと……」
「はあ? 無罪!? 頭おかしいだろ! 弱みでも握られてんのか?」
ムカつくわー。マジでここの騎士団なんなんだ? たぶん誰も死んでないとは思うが皆殺しにするべきだったか?
こんなのもう私が気にするレベルを超えてるぞ? 腐敗しすぎだろ! 信じられないな。
せめてあの隊長ぐらいは拷問してみるかな。
いつも通り水壁に閉じ込めてから頭を叩く。ほーら起きろ。
「うぐぅ……貴様ぁ! 騎士団でここまでやったんだ! タダで済むと思うなよ!」
「お前が心配することじゃないさ。俺を魔王だと分かった上であそこまで舐めた真似してくれたんだ。バンダルゴウの街ごと更地にしてもいいんだぞ?」
「は、ハッタリだ! そんなことができるはずがない!」
「それはどっちの意味だ? 俺の実力的に無理なのか、根性的に無理なのか。まあ無辜の民を巻き込むつもりなんかないけどな。」
「はっ! どうせ出来ないくせに! 何が魔王だ! 今なら罪は軽くなる! 大人しく縄につけ!」
強気な奴だな。身動き取れないくせに。
『落雷』
「ぐあうぉうっあ!」
濡れた体にはよく効くだろ?
「さてと、なぜあの男を逃した?」
「し、知らん……」
『落雷』
「ぎゃばばばあうまぁ!」
ついでに水温アップ。
「あじゃぁじゃあ! やめっ! てっえ!」
「誰も助けに来んなぁ? バンダルゴウの騎士団は腑抜けの集まりか?」
ここで一番偉い奴とか、そろそろ来てもいい頃だよな。
来ないな。ならば拷問続行。
「ほれ、なんでだ? なぜあいつを逃した?」
「し、知らん!」
さすがは騎士。そこらの冒険者ならとっくに吐いているだろうに。ならば別アプローチ。
「お前、金が大好きだろ? これを見てみな。」
床に金貨をばら撒いてみる。とりあえず百枚。
やはりな。目の色が変わっている。汚職騎士あるあるだな。
「あいつはこの金貨より庇う価値があるのか?」
「ぐっ……」
なんで悩んでんだよ。本性がバレバレだ。
「喋りたくなったら言え。」
そう言って私は金貨を一枚ずつ魔力庫に収納していく。さあ、どんどん減るぜ?
「ま、待てぇ!」
無視。代わりに『落雷』
「ぐうっぁばばばぁ!」
金貨は残り九十枚。さらに一枚ずつゆっくり収納。
「分かっとぁ! 話す! 話すから!」
「ふーん、なら約束だ。金貨を減らすのをやめてやるから、正直に言えよ?」
「ああっぐうっ……」
よし、かかった。ここまでが面倒なのに、いつも仕事熱心な私。苦労人だよなぁ。
「これは何事だ! どうしたシザーズ!」
「騎士長! 助けてください! 狼藉者です!」
今頃かよ。騎士長ね。騎士団トップのお出ましか。悪いタイミングではない。
「上司に説明してやれよ。お前がやらかしたことをな?」
契約魔法が効いてるからな。自らの失態を正直に語ってもらおうか。
「わ、私が昨夜、罪人として連行されたトレイテルの店員クリークを釈放して、代わりに小遣い稼ぎがてら無実の人間を罪に落とそうとしたら、反撃されて、こうなりました……所詮魔王と言ってもただの子供だからと、舐めてたら……」
うわー、やっぱり最低ー。街ぐるみで腐ってんのね。やっぱ来るんじゃなかったわ。
騎士長も絶句しているが、それは部下の悪事を知ったからか、それとも自分の悪事までバレそうだからなのか。
「騎士長さんよ、これを見てもらおうか。」
国王直属の身分証と紫の防具を見せる。
「こ、国王陛下の直属だと!」
「そう。この街の腐敗具合と偽勇者の痕跡がここにあることを知ったら、国王陛下は自ら大きなドラゴンに乗って征伐に来るかも知れないな。」
さすがにあり得ないだろうけどね。さあ、騎士長はどう出る?
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