「おんどれらだけの控え室じゃねえんどぉ! マナーを守らんかいやワレぇ! 殺しぁげたるどぉコラおぉ!?」
いまいち言葉がよく理解できないが、言っていることは間違ってないんだよな。
「すまん。俺達が悪かった。静かにするから勘弁してくれ。これは詫びの気持ちだ。」
分厚い肉の塊をプレゼントする。
「お、おお、分かりゃあええんじゃいや。おんしゃあ魔王じゃろうが? えろう物分かりがええ奴じゃのお、おぅ?」
「ああ。そう呼ばれてる。お前こそ、その剣。ちょっと見せてくれよ。業物だな?」
「おっ? 分かるんかぁ? 仕方ねぇのぉ! 見せちゃろぉいや! バレちまっちゃあ仕方ねぇのぉ!」
やはりか……ローランド王国にあまりいない言葉遣い。そして見慣れない拵えの剣、いや刀。そいつが見せた抜き身の刀身は……紫だった……
「その剣、いや刀の材質……ムラサキメタリックだよな? どこで手に入れた?」
「おお? ムラサキメタリックを知っちょるんか!? ローランドもんもやるもんじゃのぉ! 魔法しか使えんヒョロガリどもかぁ思うちょったがよぉ! こいつぁヒイズルの名工センゴムラの作じゃあ! こいつにかかりゃあのぉ、おんどれらのオリハルコンなんぞぁ目じゃねえけぇのぉ!」
「ほおぅ? オリハルコンが目じゃないのか? そいつはいいな。欲しくなったぞ。 お前、名前は? 俺のことは知ってるんだよな? 魔王ことカースってんだ。」
「ヒイズルの勇者セキヤ・ゴコウじゃあ! 欲しけりゃとってみろやぁ!」
「いいのかい? 僕も欲しくなったよ。セキヤ君との対戦を楽しみにしておくからね?」
おっと、スティード君まで燃えているではないか。それにしても勇者だと? 大ホラ吹きやがって。スティード君にコテンパンにやられてしまえ。
「そんでこいつが勇者の相棒クワナ・フクナガじゃあ! 舐めとったら殺されんぞぉ!?」
「どうも。クワナ・フクナガと発します。みなさんお察しの通りこいつが勇者ってのは自称ですので、お気になさらないでくださいな。」
「どっちにしてもセキヤよぉ。お前との対戦が楽しみだぜ。その刀、銘は何て言うんだ?」
絶対奪ってやる。合法的に。
「こいつか? ムラマサってんだ。俺もてめぇとの対戦が楽しみじゃあ魔王よぉ!」
「実際のところナマクラですよ。数打ちの安物ですからねぇ。」
むしろムラサキメタリックが数打ちとは贅沢な話だよな。ヒイズルの民か……情報収集しないとな……
「それにしても、ヒイズルからよく来たもんだよな。長旅で大変だったろう? 酒でも飲むか? アレク、酌をしてあげてよ。」
魔力庫から酒を取り出す。ディノ・スペチアーレの二十年物は出さないけど。
「セキヤさんとおっしゃるの? 私、強い男の方って好きだわ。さあさ、お飲みになって?」
「お、おお、おっう、こ、こいつぁかっちけねぇ、ね、ねぇさん、えらく美人じゃあ……えへへ……」
こ、こいつ童貞かよ。一瞬でアレクの色香に血迷ってやがる。
「うわぁ男らしい飲みっぷりですわ! さあどうぞ。好きなだけお飲みください。クワナさんもどうぞ。」
「えへっ、うへ、そ、そうか? 俺ぁヒイズルでも随一の酒飲みじゃけぇのぉ! かはぁーうめぇ! ローランドの酒も捨てたもんじゃねぇのぉ!」
「僕はお酒が飲めないんで。残念だなぁ。アレクサンドリーネさんとおっしゃいましたね。やはりあのアレクサンドル家なんでしょう?」
「私は分家ですわ。本家とはあまりいい関係ではありせんの。クワナさんって落ち着いた渋い方なんですのね。」
おやおや、お互い情報の取り合いかよ。面白いな。
「なあクワナちゃんよぉ。ヒイズルはバンダルゴウをどうしたいんだ? ずいぶん力を入れてるよなぁ?」
ローランド王国の南東バンダルゴウ。ヒイズルが橋頭堡として獲りにきてるんだよな。そんな奴らがなぜフランティアまで来てるんだか。
「バンダルゴウじゃあ!? そんなん知るかいやぁ! そんなことぁ役人どもに任せちょきゃあええんじゃあ! 俺ぁそねぇなことよりローランドの強者と戦いたいんじゃあ!」
「僕らはバンダルゴウの港に上陸したんです。そこから武者修行を兼ねてここまで来たんです。やっぱり修行するなら魔境ですからねぇ。」
「まあ! なんて素敵なの! 遠く国を離れて単身武者修行だなんて! 流浪の騎士ね! 憧れるわぁ……」
アレクの芸者ぶりもすごい。でもあんまりセキヤへのボディータッチが多いのも嫌だな。
「へへ、そうじゃろう? 俺らぁローランドで一旗上げてのぉ! ヒイズルへ錦を飾るんじゃけぇのお!」
「食い詰めてヒイズルを飛び出しただけなんです。どうかお仕事ください……」
うーん、怪しい。とりあえずもっと飲ませておこう。酔い潰れやがれ。
さて、そろそろ決勝トーナメントが始まる頃だな。
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