夕食はミスリルギロチンによる鉄板焼き。肉に野菜、魚に貝。とてつもなく贅沢なメニューだ。胡椒に魚醤、岩塩にワサビ、そしてソース類。調味料も万全だ。
薄暗くなった空を見ながら、玄関前でバーベキュー。少しずつ星が見え始めた。
「美味しいね! 胡椒とワサビを買っておいてよかったよ。」
「王都で買ったのね。本当に美味しいわ。昔は食べられなかったけど、この魚醤も美味しいのね。ホウアワビやサカエニナによく合うわ。」
「ガウガウ」
カムイは胡椒が苦手らしい。何も付けずに食べている。
「ピュイピュイ」
コーちゃんはソースが気に入ったらしい。
「ご馳走様。美味しかったわ。明日の朝は私が作るわね。」
「おお、それは楽しみだよ! さて、中に入ろうか。」
その前にカムイの小屋とコーちゃんの塒を出しておく。屋敷の玄関の両サイドに配置すれば、まるで番人のようだ。
「ピュイピュイ!」
「ガウガウ!」
二人とも喜んでいるようだ。特にコーちゃんの塒、汚銀の湯船は過去最大の大きさを誇る。
そして今から魔力をギチギチに込める!
「ピピュイピュイ!」
気に入ってくれてよかったよ。
「お待たせ。じゃあ中を案内するよ。」
案内と言いながらも、私は一直線に寝室へと向かった。
「ここが僕らの寝室だよ。」
そう言うが早いかアレクをベッドに押し倒す。もう我慢はしない。剥き出しの情熱を全てぶつける。
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「カース、やっと私達……ひとつに……」
「そうだよ。アレクの全ては僕のものだ。全部、何もかも僕が……」
こんなに人を愛しいと思うことなんてあるのだろうか。確かにアレクは比較する対象などいない美少女だ。身分も高ければ魔力も高い。この世界における最高の女性と言っていいだろう。
しかし、そんなことはどうでもいい。惚れてしまったからにはもうどうしようもない。私は幸せ者だ。
たった一度、情を交わしただけで……私達はもう立てなくなってしまっていた。抱き合い、力なくベッドに横たわることしかできない。
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夜明けまでアレクの蹂躙が続く中、私は貴族女性あるあるを一つ思い出した。
それは、魔力の高い女性ほど……
多情多淫だということを……
それから私達はコーちゃんがお腹へったと言いに来るまで部屋にいた。コーちゃんとカムイは放置だったもんな。ごめんよ。
「何か作るわ。待っててね。」
アレクが甲斐甲斐しい。妙に嬉しいな。
「ピュイピュイ」
再びコーちゃんが呼びに来てくれた。
食堂に行ってみると、数品の料理が並んでいた。私の鉄板焼きとは大違いで、立派な料理だ。
「さあ、食べましょうよ。」
「うん、ありがとね。いただきます。」
まずはスープから……旨い!
これは昨日玄関前で食べた肉や魚の骨を利用しているのか? いつの間に出汁なんかとったんだ? さすがアレク。いや、これは出汁ってよりフォンかな?
そこに柔らかく煮込んだ野菜や肉まで入っていて、体中に旨味が染み渡るようだ。
「すごく美味しいよ! いつの間にこんなに煮込んだの? フォンを取るのだってかなり時間がかかりそうなのに。」
「うふふ。驚いた? 『抽出』の魔法よ。カースの『乾燥』と似たようなものかもね。煮込んだのはマトレシア直伝よ。詳しくは内緒なの。マトレシアの宝物だから。」
なるほど、秘伝か。それは聞いてはいけないな。私は美味しいならそれでいい。それよりスープはそんなに熱くないのに汗が出てきたぞ? 体の芯が熱い……これは……
「元気になった? 王都で買った滋養強壮に効く野菜や調味料が入ってるの。これをカースに食べて貰うのも楽しみにしてたのよ。」
アレクは妖艶な顔で微笑みかける。全く……悪い子だ。まだスープしか飲んでないってのに……
私はアレクを抱き寄せた。
ちなみにコーちゃんもカムイも知らん顔して食事を続けている。出て行く気配はない。まあいっか。
先ほどまでのアレクの服装はケイダスコットンのワンピース、いつか私がプレゼントしたやつだ。
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時間の感覚がなくなり、体力もなくなり、いつしか私達は器具の揃ってない台所の床で眠り込んでいた。
目を覚ました時、コーちゃんとカムイも一緒に寝ていてくれたようで妙な一体感を味わうことができた。これが幸せか……
ちなみにせっかくアレクが作ってくれた料理なので、冷めていても全て食べた。もちろん美味しかった。
そして瞬く間に一週間が過ぎてしまった。
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『異世界金融ミッドナイト 〜転生した元教師は自由に生きる〜』
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