三回戦までとは違い一試合に時間がかかるようになり、ようやく私の出番が来た。
「四回戦第十五試合、カース選手、ブリジスト選手、武舞台に上がってください。」
『これは同門対決と言っていいのでしょうか!? ブリジスト選手は六等星の冒険者、将来を嘱望される二十五歳! 片や十等星のカース選手、どうやってここまで勝ち残ったのかが不思議なほどです! 王都風ファッションに身を包んだ彼はクタナツ出身! 武闘会舐めてんのか!? そして子供武闘会に二十五歳が出場するのはどうかとは思いますが、今大会に年齢制限はありません! 恥も外聞もかなぐり捨てて参加するのは自由なのです!
そんな二人の賭け率は……九対一! 当たり前だー! ブリジスト選手優勢です!』
さっきからこの実況ホントに酷いぞ。ダミアンの人選だな。美人特有の綺麗な声してんのに。
『時間となりました。賭けを締め切ります。では四回戦十五試合を開始します! 双方構え!
始め!』
『石壁』
『おーっとぉ! ブリジスト選手いきなり石壁だぁー! 堅牢に固めてからじっくり攻める腹でしょうか!?』
『狙撃』
『なっ!? ブリジスト選手の石壁にまるでチーズのように穴が開いております! そしてブリジスト選手の大腿部から出血! しかもカース選手を警戒していたのか、後ろにも配置した石壁すら貫通しているぅー!!』
「降参だ……」
『勝負あり! カース選手何をやったんだ! 開始わずか七秒で勝利です!! ダミアン様、解説をお願いします! 誰も見えなかったんじゃないですか?』
『あー、結果から判断すると氷弾などの弾系の魔法だろう。ただしあの石壁を打ち抜く威力、発動速度、そして石壁を抜けても狙いが狂わない魔法制御。俺が手本だと言わんばかりだ。ついでに言うなら石壁ができる前に撃つこともできたんだろうがな。』
『なるほど。ちなみにブリジスト選手の降参についてはどう思われますか?』
『賢明だな。さすがは六等星だけある。判断の遅れは死に繋がることをよく知っているんだろう。大腿部の出血だからな、ほっとけばすぐ死ぬ。それでいてポーションか治癒魔法ですぐ治るような位置を狙ったんだろうぜ、あの選手は。』
本当にこいつはダミアンなのか? 頭が回りすぎじゃないか。石壁を待ったのは慎重に行こうと思っただけだったりする。で、硬そうなもんだから狙撃で足を狙ったと。同年代なら狙撃を使う気はなかったけど、六等星ほどの相手なら問題ないだろう。
『四回戦全二十試合が全て終了しました。これより決勝トーナメントに進む十六人を選抜いたします。まず、先ほど勝ち残った選手の内、決着までの時間が早い順に十二名は勝ち抜けです。残り八名で決勝トーナメントへの進出、予選を争っていただきます。』
なるほど、時間も関係あるとか言ってた気がするな。
『ではその八名を発表いたします。呼ばれた順が対戦順でもあります!
シャイナール選手、アクラグ選手、カジミール選手、セドリック選手…………以上八名は武舞台周辺に集まってください。それ以外の選手はお好きにどうぞ。』
スティード君は十二名の側に入っているな。
「カース君、さっきは凄かったね! 対戦が楽しみだよ。」
「スティード君、昼は一緒に食べようと思って探したんだけど、ちっとも見つからなかったよ。」
「僕も探したんだよ。セルジュ君は見つかったよ。しばらくはのんびり観戦といこうか。せっかくだから解説してよ。」
「いいよ。分かる範囲でね。ダミアンの奴かなり詳しくない?」
『さあ観客の皆様! 決勝トーナメント進出を賭けた予選を行います! 予選第一試合はシャイナール選手対アクラグ選手です!
シャイナール選手は大量の魔力に物を言わせたごり押し戦法かと思わせて技巧派の一面もあります!一方アクラグ選手は華麗な水の魔法が持ち味の七等星冒険者です! どちらも油断できない対戦となるでしょう。』
『時間となりました。賭けを締め切ります。では開始します! 双方構え!
始め!』
『水球』
『水球』
『序盤はお互い様子見か、水球の撃ち合いから入りましたね?』
『お互いの対戦を見たのだろう。シンプルな魔法をぶつけ合うことで互いの実力を確認したようだ。どちらも慎重だな。』
『氷弾』『氷弾』『氷弾』
『水壁』
『あれだけの氷弾をあんな薄い水壁で防御しているアクラグ選手! あれはどうしたことですか!?』
『巧いな。水壁は魔力を込めればいくらでも厚くも頑丈にもなる。しかしそれをせず壁の中で水流を生むことにより少ない魔力で高い防御力を実現したようだ。』
『壁の中で水流を生む!? 意味が分かりません! 分からないが凄いぞアクラグ選手!』
『氷弾』『氷弾』『氷弾』『氷弾』
「くっ……」『水壁』
『おーっとどうしたアクラグ選手!? 苦しそうだー!』
『シャイナール選手の氷弾が徐々に速く大きくなってきている。数も増えている。そしてまだ魔力に余裕が見える。さすがは魔法学校の首席だな。』
『アクラグ選手反撃ができなーい! このままでは危ないですよ!?』
『氷弾』『氷弾』『氷弾』
「くそ……ネチネチ攻めてきやがって」『水壁』『水槍』
『氷壁』「効かんな。」
『アクラグ選手、起死回生の水槍を防がれて絶体絶命! どうするんだ!?』
『刃雨』
『氷壁』「そんな小雨では無駄だ。どうせなら槍を降らせたまえ。」『氷弾』『氷弾』
「ふっ……」『水壁』
「いつまで守っているつもりだい?」『氷球』
「足元を見てみな。」『水操』
『おーっとぉ! シャイナール選手の足元の水が彼の足首を捉えて円外に引きずり出ーす! これはアクラグ選手逆転か!?』
「バレバレだよ。」『凍結』
『なんとぉー! シャイナール選手読んでいたぁー! 足元の水を全て凍りつかせて自分の足をその場に固定してしまったぁー!』
「終わりにしよう。」『燎原の火』
「くそっ、参った!」
『勝負あり! シャイナール選手の勝利です! どうですかダミアン様?』
『いい勝負だったが……シャイナール選手の魔力残量が気になるな。ここまででも結構使っていたが、これから決勝トーナメント。強敵ばかり残っているからな。』
『ありがとうございます。確かにそうかも知れませんね。さあ二回戦行きましょう!』
最後の燎原の火はやり過ぎじゃないか? 降参を促すためと考えればおかしくはないが……
見たところシャイナール選手の魔力は残り半分、私が言うのもおかしいが魔力を無駄遣いし過ぎじゃないのか?
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