さて、分け前を渡さないとな。
「ベレンガリアさん、はいこれ。金貨四百枚。」
当然足りない分は私が立て替えておいた。後で回収するから構わないさ。
「簡単に渡すのね。いいの? 私は何もしてないのに。」
「賭けたじゃない? 外ウマってやつだよね。負けたら奴隷なのによくもまあ賭けたよね。」
「そりゃ賭けるわよ。あんな勝ちが決まってるボロい勝負ないわよ。オディロン達も賭ければよかったのに。」
「それは駄目だよ。確かにカースが楽勝なのは分かってたけど、かわいい弟に賭けるなんてできないよ。」
オ、オディ兄! どんな心理かよく分からないけど嬉しい! 少し泣きそうだ。
「アンタってやつは……この前もカース君からコートを貰ったって大喜びしてたわよね。」
オディ兄ぃ〜! そんなに喜んでくれたんだね! 私には嬉しそうにお礼を言ってくれたけど、大喜びするレベルだったんだね! よかったよー!
さて、最初の奴、貴族四を起こすとしよう。結局誰がリーダーなんだ?
「ところでベレンガリアさん、今回はなぜ絡まれてたの? こんな面倒くさそうな奴らなんかにさ。」
「あー、こいつらね死んだパトリック兄上と仲が悪かった奴らなの。それで兄上が死んだり父上が王都に帰ったりで居なくなったものだから今頃になって私に憂さ晴らしに来たみたいね。他の意図もありそうだけど……」
他の意図ね……何てしょぼい奴らなんだ。こんな女の子を相手に何を考えてるんだか。
「リーダーは誰? そもそもリーダーっている?」
「ああ、さっき走って行った先頭の奴、名前は……忘れたわ。帰って来たら聞きましょ。」
その間に貴族四を叩き起こして絶対服従の契約魔法をかけておく。そして金貨百一枚を回収、四人ともいい金持ってやがる。意外と上級貴族だったのかな?
ちなみに貴族四は素直な奴で楽だった。だから高級ポーションをくれてやった。しまった、これじゃ赤字じゃないか!
まあ、トータルで儲けたからいいか。
ようやく三人が帰って来た。
見た感じ変化のない奴や服装が質素になってる奴、武器がない奴とそれぞれ違う物を売ったのだろう。
残金をきっちり回収して本日の儲けは金貨二百八十一枚か。まだまだ金貨千枚には届かないな。別に目標にもしてないけど。
「さて、お前達はしばらく絶対服従だ。そのうち解いてやるから心配するな。取り敢えず次のデメテの日の昼前にここに来い。話し合いをしようじゃないか。」
本当は絶対服従なんていう効力が強めのやつは魔力の消費が激しいからさっさと解きたいんだよな。かなや=さぬはらから聞いた話と多少違う気もするが気にしても仕方ない。
「さあ移動しましょうか。夕食よ。豪勢にいくわよ! もちろん私の奢りだからね!」
こうして私達五人はニ番街で一番の高級店で豪華ディナーと洒落込んだ。
私はデザートもドリンクもペイチの実を頼み、大変満足した。
ディナーの最中、ベレンガリアさんはテーブルに金貨四百枚を出して言った。
「このうち二百枚はパーティーの資金として私が管理するわ。残り二百枚は山分け、一人五十枚ね。」
何とも豪気な人もいたものだ。自分が体を張って稼いだ金の大半、九割近くを自分の物としないとは。これこそリーダーのあるべき姿なのだろうか。
「僕は要らないよ? ベレンちゃんが命を賭けで稼いだお金なんだし。」
「オディロンは分かってないわね。アンタが受け取らなければジェームスとヒャクータが受け取りにくいでしょうに。その辺りがまだまだよね。」
「僕は欲しいよ。こんな大金見たこともないからね。だから喜んでもらうよ。」
「確かに、オディロンが貰わないと受け取りにくいっしょ。」
「そうだね。それなら頂くよ。ベレンちゃんありがとう。」
「まあ結局はカース君のお陰だから、オディロンのお陰とも言えるんだけどね。」
こうして私達はかなり贅沢な夕食をお腹いっぱい楽しんだ。バカな貴族の相手で疲れていたので、余計に楽しかった。
七月も残りわずか。
そんなある日の放課後、私とアレクはファトナトゥールに来ている。
アレクのミニスカートを注文するためだ。まあミニと言っても膝上十センチ程度の予定だけどね。
「ふーん、その年で女の子にミニスカートを穿かせるのー。いい趣味してるのねー。」
ふふふ、自分が穿く趣味よりだいぶマシだろう。
別室での採寸が終わり、素材を渡す。
「エビルパイソンロードねー。ミニスカートにこれって贅沢と言うか無駄遣いと言うかー。すごい坊ちゃんねー。」
そんなことは分かっている。こんな防御も期待できない物に高級素材を使うなんて。でもアレクにはこれぐらいの素材でないと釣り合わないのだから仕方ない。
また、デザインはタイトにしてある。王都での流行りは短いプリーツスカートのように少しヒラヒラしているのだが。それよりはタイトな方がアレクには似合うに違いない。いずれ流行りのタイプも穿いてもらうつもりではあるがね。
タイトではあるが、サイズ自動調節機能を応用し、伸縮しやすくなっている。これなら体育の授業にだって使える。
魔石を持ってなかったので高くついたが、きっといい出来になるに違いない。二週間後が楽しみだ。
ところで、ミニスカートには何を合わせるべきだろう?
ロングブーツ? ハイヒール?
そして上半身は?
まあ私が気にしなくてもアレクがいい感じにまとめるだろう。楽しみすぎる。
現在私達はタエ・アンティに来ている。アレクの奢りでコーヒーを飲んでいるところだ。
そこに店からのサービスとしてケーキが出された。南の大陸から新しい原料が入ったとかで試作品を作ったらしい。
チョコレートケーキだった。芳醇なカカオの味と香りが広がる……のはいいんだが、苦い。これ砂糖も何も入れてないだろ……
「これ、まずくはないけど何か惜しいよね。」
「そうね。甘さが欲しいわね。」
コーヒーは苦くてもいいがチョコレートは甘くないと嫌だ。でもまあ、砂糖は高いもんなぁ……
「そうそう、今週末またスパラッシュさんと砂漠に行ってくるよ。ノヅチにはもう会いたくないなー。」
「やっぱり……大きかったの?」
「かなり大きいと思うよ。すぐ逃げたから正確には分からないけどね。でもノヅチが開けた大穴があるんだけど、湖にしてやったよ。涸れてないといいけどね。」
「ふふ、意味が分からないわ。カースったら滅茶苦茶したのね。」
軽く武勇伝を話してみた。あんな化物を目撃して生き残ったのだ。少しぐらい自慢したいんだ。
アレクとこんな話をするのも面白い。聞いてもらうだけだが。
うーん今週末が楽しみだ。
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