おばさん襲来の翌日は、朝から来客ラッシュだった。
一人目はなんとも珍しい、マルセル・ド・アジャーニさん。スティード君に目を抉られて、私とも対戦をした男の子だ。二つ年上だったっけ?
「やあカース君。先日はどうも。色々と大変だったらしいね。会いたかったよ。」
「お久しぶりですマルセルさん。僕も話してみたいと思ってました。ところで今日は変なおばさんの件ですか?」
「マルセルと呼んで欲しいな。もっと気安くさ。そうそう、変なおばさんの件だ。うちとは無関係だと伝えに来たんだよ。」
「分かったよマルセル。思いっきりヤコビニ派だもんね。よく王都に来れたもんだよね。何しに来たんだろう?」
「あのおばさんね、ラフォートで男漁りばっかりしてたもんだからさすがのドナハマナ伯爵も怒ってしまったみたいなんだよ。おばさんはそれに反発して家出だってさ。」
そこまで知られてんのか。
「なるほどね。あ、紹介するね。フォーチュンスネイクのコーネリアスとフェンリル狼のカムイね。この子はコーちゃんと呼んであげてね。」
「かわいらしいね。マルセルです。よろしくね。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
「カース、私は?」
アレクのことを忘れているはずがない。マルセルがかっこいいから紹介したくなかっただけだよ。
「こちらは僕の最愛の女性、アレクサンドリーネだよ。」
「はじめまして。噂はかねがね。マルセル・ド・アジャーニです。あの決勝戦は社交界でも度々話題にのぼりますよ。」
「アレクサンドリーネ・ド・アレクサンドルです。マルセルさんのことはよく存じ上げておりますわ。」
そこからはお喋りしながらのティータイム。
そこにやって来たのがサンドラちゃん。
「おはよう。手紙を持って来たらとんだお客様ね。」
「サンドラさん、君にはいくら謝っても足りないと思っている。私の友人達が本当にすまなかった。」
そうだった。マルセルの友人? 取り巻き? がサンドラちゃんを誘拐したんだったな。すごく昔の出来事のようだ。
「もういいんですよ。散々謝っていただきましたし、お詫びもいただきましたので。」
「済んだことは大河に流して楽しくお喋りしようよ。その友人達は結局どうなったの?」
武闘会の時、国王はすでに処理したとか言ってたな。どう処理をしたんだろう。興味ないけど。
「五人とも勘当されたよ。サンドラさんが貴族じゃないために奴隷落ちにはならなかったんだ。しかし私の身の安全を損ねたってことでその親達が勝手に気を回してね。所払いもくらったことで王都からもいなくなったらしい。」
あー、国王の言った処理とは所払いか。一生王都に帰れないのかな?
「そういえばマルセルのお姉さん、オウタニッサさん。手が切り落とされても動いていたじゃない? あれは何の魔法か知ってる?」
「いや、私にも教えてくれないんだよ。あの時はびっくりしたなぁ。お互いすごい姉を持ったものだよね。」
「あ、もしかしてオウタニッサさんってウリエン兄上のハーレムに入るつもりなのかな? そしたら僕らは兄弟みたいな関係だね。」
「入るつもりみたいだよ……第二夫人の座はティタニアーナ様で確定したらしくて、第三夫人の座を狙ってるみたいなんだよ……」
マジか兄上……
あれだけのそうそうたるメンバーでハーレムを作ってしまうのか……
その気になったら王座だって狙えるメンバーだよな? 大丈夫なのか?
そこにさらに来客。
ソルダーヌちゃんとエイミーちゃんだ。
「お邪魔するわね。あらマルセル先輩? 妙なところでお会いしますね。」
「やあソルダーヌ嬢にエイミー嬢。カース君に会いに来たのかい?」
「そうですよ。愛しのカース君に会いに来たんですわ。」
「私は違います。」
エイミーちゃんが違うのは分かっているさ。
それからまた談笑が始まった。エイミーちゃんは珍しく着席しているし、何やらアレクと話しているようだ。
さらにそこにシャルロットお姉ちゃんまでやって来てワイワイガヤガヤだ。
「もうすぐお昼だし、みなさん食べていくでしょう?」
お姉ちゃんの発案だが、いいアイデアだ。今日は朝から祖父母、伯母さんもいない。何でも総登城だとか。伯父さんは行かなくていいのか?
まあ何にしても賑やかでいいことだ。なのにこの家の二男ギュスターヴ君は何をしてるんだろう?
途中で気付いたが、マルセルがお姉ちゃんを見る目。もしや恋する瞳ではないだろうか。
マルセルの姉オウタニッサさん、もしかしたらアンリエットお姉さんもウリエン兄上とくっ付く。その上マルセルまでシャルロットお姉ちゃんとくっ付いたら人間模様がめちゃくちゃだな。私にはあんまり関係ないからいいけど。
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