国王達は生き残った白い鎧の奴らを取り調べするそうだ。その情報次第で再び攻め込むと。どこに隠れてやがる……
試しに王城丸ごと魔力探査をしてもそれらしい反応がない。奴らの魔力が弱いからなのか、紫の鎧にそんな効果があるからなのか。たぶん後者だな。金操が効かないレベルで魔力と相性が悪いことに関係していると見た。
「おうカース。見事だったぜ。いよいよ本物の魔王じみてきやがったな。」
「アステロイドさん……ありがとうございます。」
「お前、もうすぐ十五歳だったな。俺がその歳の頃は冒険者に成り立てでよ、とにかく周りに舐められないことしか考えてなかったわ。」
「意外ですね。」
「当時のクタナツはよ、組合長達のパーティー『サウザンドニードル』の一強時代でよ。俺も憧れたものさ。」
「ベヒーモスも仕留めたそうですね。」
「おお、知ってんのか。組合長の部屋にはベヒーモスの牙から削り出したカイザーナックルがしまってあるらしいぜ。」
「素手でも強い組合長が、そんなのを装着したら無敵ですね。」
「そうかもな。俺達はすげぇ先達を持ったもんだ。……恐ろしい後輩もな。」
「は、はあ……」
「お前は今日、そんな偉大な先達が守り続けてきたものを守ったんだ。ゴレライアスはあと半年もすれば引退だ。あいつは次期組合長の有力候補だがな。俺だってそう先は長くない。これからはお前達の時代だ。」
「お、押忍……」
もしかしてアステロイドさんは慰めようとしてくれてるのか? この無骨な男が私などを……くっ。
「クタナツみてーな街はよ、舐められたら終わりだ。クタナツ、そしてクタナツ者と揉めるとヤバい、鬱陶しい、割に合わない。そう思われてなけりゃいけねーんだ。お前はそこをよく理解している。これからのクタナツを……頼んだぜ。」
「押忍……」
ヤバい、泣く……
冒険者稼業なんかノリで始めて、ランクすら上げてない私なんかに……
荒技、目の周辺に乾燥魔法だ。これを直接目に使うと簡単に失明してしまうが……
「ご指導、ありがとう、ございます……」
そう言って私は上を向いて一人、中庭散歩を始めた。
「アステロイドさん、カースを救っていただいてありがとうございます。」
「なーに、ホントのことを言っただけさ。全くよぁ、身内に甘い奴だよな。祖父の友人って、そりゃ他人じゃねーか。」
「そうですね。どうもあいつは高齢者に弱いみたいなんですよ。特に両親よりも歳上の人間には。」
「一体どこのどいつが魔王って言い出したのやらな。」
「そうですね……」
夏休みが終わったら、少しは真面目に冒険者をやってみようか。昇格試験を受けるのもいいかも知れない。
それにしても目の周辺に乾燥魔法をかけるアイデアはよかったな。涙が零れ落ちることを防いでくれた。アステロイドさんには助けてもらってばかりだ。いつかお礼をしないとな。
歩いてみて分かってきた。王城内の建物配置は意外に単純だ。中心にいわゆる王宮と言われる建物がある。王族の住まいだったり近衛騎士団や宮廷魔導士の詰所だったりと。そこから中庭がぐるっと王宮を囲い、その周上や外側に王国騎士団本部があったりメイドさんや料理人達の寮があったり、下級貴族の詰所や寮もある。
つまり、中庭を歩けば王城をぐるっと一周できるようになっている。
早起きしたせいか、もうお腹が空いてきた。いや違う、朝食を食べてないからだ。しかしまだ戻りたくないな。もう少し一人でいたい気分だ。ぶらぶらしてみるか……
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