さあて、いよいよアレク達の出番だな。どんな戦いになるのか楽しみだ。
『さあ会場にお集まり下さいました紳士の皆さんお待たせしました! 若者世代に絶大な人気を誇る美少女! 氷の女神アレクサンドリーネ選手の登場です! そしてペアは、磨けば光る苔の珠! 破極流の槍使い! なんで魔法学校に入学したんだぁーアイリーン選手っ!』
『対するは! 何という運命のいたずらか! 実の姉弟で戦うなんて! 騎士学校三年! 順位は二位と三位! アルベリック・ボーベンツ組だぁー!』
おお、アル君か。しかも二位だって? すごいじゃないか。フェルナンド先生の薫陶が生きてるのかな。でもアレク達に比べて紹介が短いぞ。
『さぁーて賭け率はと、七対四かい。さすがにお嬢は人気だねぇ。』
ちなみにマーリンとリリスには好きに賭けていいと金貨を五枚ずつ渡してある。儲かったら元手だけは返してもらう予定だ。
『さあ一回戦第五試合! 始めますよ! 双方構え!』
『始め!』
「いくわよアイリーン!」
「おお!」
『氷弾乱舞』
いきなりアレクの大魔法だ。数百発の氷の弾丸がアル君達を襲う。
『氷壁』
さすがだな。騎士の卵とはいえ上級貴族。あっさりと防いでのけた。しかし……
「甘いぞアルベリック!」
すでにアイリーンちゃんが間合いを詰めている。
「甘いのはアイリーンさんだよ」
氷壁ごと貫く勢いで突きを繰り出したアイリーンちゃんだったが、突如目の前が霧で覆われていた。
「避けてアイリーン!」
とっさに身を捻った結果、二本の鋭い『飛突』を躱すことができた。あの二人もやるねえ。
反撃とばかりにアル君と相棒君は飛突を繰り出している。さすがにスティード君のと比べると速度も鋭さも足りないが、三年生にしては上等な威力ではないだろうか。
『燎原の火』
アレク……めちゃくちゃするな……武舞台の半分が炎で覆われてしまってるぞ。
しかもアル君の剣がどこかへ飛んで行ってしまってる。これもアレクの仕業か。
「隙ありだ!」
武器を失くしたアル君にアイリーンちゃんの槍が襲いかかる。髪の毛が燃えてるぞ……
「いいや!」
マジかよ……アイリーンちゃんの渾身の槍撃を真剣白刃取りしやがった……もちろん私にはできない。アル君やるなぁ。
しかしアイリーンちゃんだって成長してるんだ。すぐに槍から手を離してアル君に蹴りを入れてる。
『氷壁』
防がれたか。しかし、この勝負アレク達の勝ちなようだ。
「ボーベンツ!?」
「ぐふっ、悪りぃアル……やられちまった……」
アル君の相棒はアレクによって腹を斬り裂かれていた。早く手当てをしないと死ぬぞ?
「アルベリック。まだやる?」
「くっ、姉上……」
そんなことを聞きながらもアイリーンちゃんとアル君の一対一になっている。アレクは手を出さないようだ。
「お前の相手は私だ! 剣がなくとも騎士は戦い続けるものだろう!」
「ぐぅ、アイリーンさん……」
『さぁー白熱して参りました! アルベリック・ボーベンツ組はボーベンツ選手が脱落し残ったアルベリック選手が一人奮闘しております!』
『なかなかかわいい坊やじゃないかぁ。奪ってやりたくなるねぇ。』
ラグナの奴、アル君に手を出したら殺すぞ?
そして、数分後。
アイリーンちゃんの猛攻に耐え、逆転のチャンスを狙っていたであろうアル君に……アレクの『氷塊弾』が直撃した……
「アイリーン。何をモタモタしてるのよ? さっさと片付けないから終わらせたわよ。」
「あ、ああ、すまん……」
『勝負あり! 下馬評通りアレクサンドリーネ・アイリーン組の勝利です!』
『お嬢はやるねぇ。アイリーンと一対一と見せかけて弟が油断した所に一発たぁねぇ。ボスの伴侶だけあるねぇ。』
さすがアレク。相手の隙を見逃さないよな。惚れ直してしまうぜ。
「アレク。お疲れだったね。見事だったよ。」
「カース、見ててくれたの? ありがとう。どうだったかしら?」
「いい動きだったと思うよ。特にアイリーンちゃんがアル君の相手をしている間にあっちの子を仕留めたところなんて見事だったよね。」
よく騎士の卵を相手に接近戦なんか挑んだよな。まああれは接近戦ってより隙をついてぶっ刺したって感じだったが。
「あの子は油断できない相手だったの。だからこの短剣まで使ってしまったわ。仕方ないわよね。」
サウザンドミヅチの牙から作った短剣。私の防御をも貫くヤバい短剣だもんな。学生の身分では防ぐ術すらないよな。私でも簡単には防げないんだから。
「それよりアイリーンちゃんは動きが悪いね。やっぱりあの問題が改善されてない?」
「そうらしいわ。ゴモリエールさんに依頼は出しているらしいけど、返事がないそうよ。どうなることかしら……」
アイリーンちゃんも大変だよな。胸の成長も良し悪しか……
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