虫や鼠を相手に魔力放出をやってみたが、特に何もなかった。
風が吹く程度の影響すら感じないらしい。
直接触って流さないとだめかな?
木の成長ぶりや地面にも変化・変色等は見られない。
どうせ捨てるようなものだから継続してもいいのだが、どうしたものか。
放出された魔力は煙のようなものだが、煙と違うのは上に登らないことだ。
コーヒーにミルクを入れた時のようにじわじわと周囲に溶けて見えなくなるかのようだ。
まあ目には見えないので何となくそう感じるだけだが。
参考文献はないかと探してみたら、体内の魔力に関してはいくつかあったが、放出された魔力に関しては何もなかった。
母上に聞いても。
「魔力は魔法を使って形を与えてあげないと何にもならないわ。カースちゃんにはまだ早いから、次の誕生日まで魔力放出をがんばろうね。」
母上ですら知らないということは、誰も知らないと考えていいだろう。
もし罷り間違って私が何かを発見すれば第一人者となれるかな? 少し燃えてきた。
ふふふ、人が知らないことを知っていることは私の優越感を刺激してくれる。
ファンタジーでよくあるのは、魔力を武器に流して切れ味を上げたり、切りながら燃やしたりすることだ。
そこで包丁に魔力を流してみたが、だめだった。
袋や箱に魔力を集めようとした時のように、包丁がそこにないかのように魔力が散っていった。
ただ手から魔力放出をしているだけの状態と変化がないということだ。
これは包丁だからだめなのか金属全般がそうなのか、謎は増える一方だ。
大抵の場合魔力と親和性が高い金属がありそうなものだ、オリハルコンとかミスリルとか。
やがて季節は秋、誕生日まで後三週間となった。早いもんだなぁ……
さて、去年同様追い込みをかけて魔力をどっさり上げてやろう。
ちなみに現在は両手両足から同時に魔力放出を行った場合、五分ぐらいで空になる。
母上には手から出すようにと言われたが、手以外から出してはいけないと言われてないので、やってみた。
気分が良くはないが口からも出せる。
目からは無理だった。頑張ればできるかも知れないが。一応、肘や膝からも出せるが効率は良くない。
手足の指からも出せる。
特に手の指から出すと魔力が散りにくかった。少しだけ直進性があるように思えるのだ。勘違いかな?
さて、どうやって追い込みをかけてみようかな。
思いつかない……
取り敢えず、放出する割合を変えてみよう。
右手は全力で放出、左手は一割ぐらいで放出する。
何も考えず全力でするより余程難しい……
これはきっと今後の魔力の制御とかに関係するはずだ。緻密で微妙な制御をできるようになってやろう。
カース君は両手から全力で魔力を放出した場合、十分で空になります。
右手は全力、左手は五割だった場合は何分で空になるでしょうか。
こんな問題が頭に浮かぶ。
答えが分数になり気持ち悪いな……
他には全身から一気に放出できないか試してみたが、できなくはなさそうだ。
魔力は空になっても死ぬ訳ではないので、一気に全魔力を放出できたら面白いことになりそうだ。
これも要練習だな。
さあ、母上を驚かせてやるぞ。
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