異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

250、ダミアンからの贈り物

公開日時: 2022年11月23日(水) 10:12
文字数:2,014

アレクと三曲ほど踊ってちょっと休憩。何か飲もうかな、なんて考えていると。


「カース君! 成人おめでとう!」


スティード君!?


「あれ? アイリーンはいないのか?」


バラデュール君もいる。


「カース先輩、おめでとうございます……」


アレクの弟君おとうとくん、アル君じゃないか。



「みんな、来てくれてありがとう。僕も今日知ったんだけどね。」


「アルベリック、よく来たわね。」


「姉上が来いって言うから……」


「アイリーンはどこだ?」


「アイリーンちゃんはあっちで寝てるよ。」


バラデュール君はアイリーンちゃんに会いに来たのね。


そうかと思えば……


「カース君。成人だね。おめでとう!」


「セルジュ君まで!? わざわざありがとう!」


ぞろぞろと現れるではないか。嬉しいぞ。


「チャス魔王さん!」

「魔王さんコンチャッス!

「ごくろっす!」

「うぇいどもっす!」


貴族学校のぼんくら四人組まで現れた。大盛況だな。


「さあさあ、どんどん飲むといいよ。」


私とアレク、スティード君とセルジュ君はテーブルへ移動する。積もる話でもしようかね。




飲み食いしながらお喋りをしていたら音楽が止まった。


『カース! アレックスちゃん! ステージに来てくれや!』


ダミアンの声だ。何だ何だ?


「行こうか。」


「ええ。」


ステージ上には大岩が置かれている。あ、もしかして?


「オメーがこの前言ってたアレをやってやるぜ。俺からの成人祝いだ。」


「マジかよ! そいつは嬉しいな。コーちゃん、カムイもおいで。」


「ピュイピュイ」


「ガウガウ」


四人まとめて彫刻だ。どんな出来上がりになるんだろう。


「ポーズを決めな。俺様の美技を見せてやるからよ!」


よーし、それなら……


お座りをしたカムイを中心にして私とアレクが両側から抱きつく。コーちゃんはカムイの首に巻き付いてカムイの頭の上から顔を出す。一体感、楽しげな雰囲気ともにバッチリだ。


「よし! これで頼む! 魔力は込めるか?」


「いや、いらねー。今日の魔力はみんなから貰うことになってるからよぉ。」


なんと!


「じゃあ僕からね。」


セルジュ君!?


セルジュ君は岩に触れ、魔力を流している。


「これはキツいね……よくカース君はミスリルに魔力を流し続けることができたよね……」


「セルジュ君……」


そして二分……


「ダミアン様、そろそろ魔力が切れます!」


「よし、次だ!」


「次は僕だね。」


「スティード君!?」


スティード君は三十秒ぐらいで交代となった。


それからバラデュール君、アル君、魔法学校生と続いた。今までの中ではセルジュ君が一番長かったようだ。セルジュ君以外の貴族学校生は一人五秒と持たなかった。




「もう少しなんだがな。まあいいや、俺が込めるか。」


「待ちなよ。アタシがまだだよぉ。」


おお、ラグナ。


「さあボス。受け取ってくんなぁ。」


私が受け取るわけじゃないけどね。


やはり鬼気迫る勢いで彫刻をするダミアン。仕上げに入っているようだ。ラグナとダミアンの共同作業か。




「よし! 完成だ!」


そこにはぬらりと輝く私達の石像があった。この岩は大理石に似ているな。黒緑って感じの色だ。削る前には分からなかったな。


「こいつぁ深緑理石マルマロスってんだ。特に深い意味ぁねーがな。どうよ? きれーだろ?」


「ああ、驚いた。ありがとな。」

「ダミアン様、ありがとうございます。」

「ピュイピュイ」

「ガウガウ」


等身大で作ってしまうとカムイが大きすぎる。だからある程度バランスが整うようにサイズ調整がなされている。なんて奴だ……


「ダミアン……相変わらず凄い腕だな……嬉しいからこれを飲ませてやる。」


「ん? えれー古い樽だな?」


「まあ一杯飲んでみろ。ラグナも。」


「ああ、いただくよぉ。」


ふふふ、飲んで驚け。


「お、おい! カース、こいつぁ!」


「ボスぅ! 旨いよぉ!」


「ディノ・スペチアーレの二十年物だ。男爵から直々に貰ったんだぜ。」


「ピュイピュイ」


正確には貰ったのはコーちゃんだね。はい、コーちゃんも飲みな。私も飲むぞ!




う、旨い……


これのどこが荒削りなんだよ……


まろやかな風味、芳醇な香り。いや、男爵の酒はどれもそうなんだけど……これは桁が違う……センクウ親方が腕でも名声でも抜かれたと言うのがよく分かる。親方の酒は上品で繊細だと思ったが、ディノ・スペチアーレ二十年物は上品さでも上回っている。私の舌では表現できないが、美味すぎる……


「甘く複雑な香り、使ってる樽はそこら辺のナラー材なのにこの味の深さはどうよ?」


「ああ、旨いねぇ。アタシの好きなシャンパイン・スペチアーレもこいつの前じゃ安物のエールみたいなもんだねぇ……」


ダミアンとラグナが何か言ってる。樽だと? ダミアンはそこまで分かるってのか?


「お酒のことは分からないけど、この香りはバニールかしら? 微かに甘く香ってくるわ。」


アレクまで。やはり舌が肥えてる人間は違うな。


「ピュイピュイ」


大地の息吹を感じる? コーちゃんすごいぞ……


飲んでいいのは一人一杯だけだ。父上やフェルナンド先生にも飲んで欲しいからな。


こうして楽しいパーティーは続いていった。

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