翌日、エルネスト君と連れ立ってギルドへ向かう。悪いがコーちゃんとカムイはお留守番だ。少しは正体を隠さないとな。
「今日のところは普通に依頼を受ける予定なんだ。ギルドでメンバーを紹介するよ。」
「イメージがまだ固まってないけど、絡まれたらいつも通り対処するね。」
「うん、その辺りは任せるよ。それにしてもそんな格好のカース君を見るのは初めてだね。違和感がすごいよ。」
今日の私はそこらの平民風の小汚い服装なのだ。冒険者にすら見えないだろう。スパラッシュさんとヤコビニを捕まえた時を思い出すな。
「さすがに少し寒いかな。さっさと着替えたいところだね。」
もう十月も終わりだもんな。冬が来るなぁ。ムリーマ山脈で紅葉は見れるだろうか。
そしてギルドに到着。
「おうエルネスト、助っ人ってそいつかよ」
「弱そうじゃないか。大丈夫なのか?」
「そいつのとばっちりを食らうのはごめんだぞ?」
「エルネストが責任とれよな!」
なんだこいつら? 文句があるなら帰ってもいいんだぞ?
「紹介するよ。クタナツからわざわざ来てくれたカース君。彼の腕前は僕よりかなり上だよ。」
「どーも。」
「お前そんな装備で……冒険者舐めてんのか?」
「遊びじゃねーんだぞ?」
「足引っ張んじゃねぇぞ?」
「一応リーダーの顔は立ててやるけどよ」
「では今日の依頼だ。タイクーンを三匹、アジールを可能な限りたくさんだ。張り切って行こう!」
鯛と鯵か。魚の依頼なんて昨日は見なかったがやはりあるんだな。
メンバーの四人はぶつくさ言いながらも現場に到着。名前は聞いたが覚えていない。
どうやって魚を捕るのかと思ったら全員で岩壁から釣りを始めた。冒険者らしくないよな。でも周囲には似たような奴らも多い。この辺りはこれが普通なんだろうな。
「エルネスト君、僕は潜ってるから。昼には戻ってくるよ。」
「も、潜るの? 大丈夫? 魔物が寄ってきたら……」
「慣れてるから大丈夫だよ。釣りの邪魔にならないように沖に行くしね。」
「てめっ、遊んでんじゃねーぞ!」
「分け前やんねぇぞ?」
「俺らの邪魔だけはすんなよ?」
「助けてなんかやんねぇからな!」
エルネスト君はよくこんな奴らとパーティーを組んでるよな。そもそもこいつらのために私を呼んだってのに。まあいいや。私は貝類を狙うもんね。
沖を潜ってみると、ホウアワビやサカエニナだけでなく、知らない貝類がたくさんあった。片っ端から獲っておこう。真珠貝なんかあったりしないかな? アコヤ貝とか国蝶貝とかだよな? 見ても分からないのが問題だが。
おっ、シーオークも寄って来た。いただきだな。おっ、あれはウツボか? 結構大きいな。いただき。
さて、そろそろ昼かな。一旦様子見に上がってみるか。ちょうど絡まれてたりするといいのだが。
絡まれてた。
「おら、釣ったもん見せてみろや?」
「怪我したくねぇだろぉ?」
「さっさと出せや!」
エルネスト君達は五人、相手は三人。体は大きいが大した魔力は感じない。なのになぜあそこまで調子に乗らせてるのやら。
「何やってんの? 昼飯にしようよ。」
「か、カース君……」
「おめぇもさっさと出せ!」
「ちっとは獲ってきたんだろ!」
「やられちまうぞ!」
「俺らまで目ぇ付けられるだろうが!」
「そういうこった。さっさと出すもん出しなぁ?」
こいつら一生タカられながら生きていくつもりなんだろうか。
私は魔力庫からサカエニナをドバドバと出して見せる。
「なっ! サカエニナがこんなに!?」
「へっ、やるじゃねぇか。今日の所はこれで勘弁してやらぁ」
「明日もきっちり獲ってこいやぁ!」
「バカ言ってんじゃねぇぞ? 欲しけりゃ実力で来い。」
「あぁ!? ヒヨッコが舐めた口きいてんじゃねぇぞ!」
「やっちゃあぞコラ!」
「海に叩き落としてやんかオウ!?」
「お、おいお前早く謝れって!」
「この人達マジでやべぇんだって!」
「お、俺は関係ねぇからな!」
「こいつ何てことを……」
「カース君……」
さて、どうしてくれようか。
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