夕食にて。
家族がそれぞれ近況を話している。
父上は開拓の様子を。
ついに石畳の道がグリードグラス草原を縦断したらしく、いよいよ城壁の建設に入るらしい。何でもクタナツ並みの城壁にするとか。
母上はキアラの魔力量を。
四歳にしてはぶっちぎりだが、さすがに母上は超えてないらしい。四歳なんだから当然かと思ったら、母上も魔力量が上がっているらしい。まさか私は抜かれてしまったのか?
オディ兄は金貨の貯まり具合を。
現在三十五枚らしい。もうすぐ十三歳の少年にしてはかなり貯めている方だろう。さすがに八等星への昇格はまだまだらしい。
先日の金貨五十枚はパーっと使ったらしい。真面目なオディ兄にしてはやるもんだ。
私は無尽流入門に向けて新たな決意を。
しばらくはギルドにも行かずあれこれ体を鍛えようと思っている。父上は苦笑いしていた。あれは『そんなことしなくても遊べばいいのに』という顔だ。
キアラはプールにハマっているようで水壁のみでプールを作り泳いでいるようだ。その上足の裏からジェット水流を出して高速で泳ぐことまでできるようになったとか。外壁と内側で魔法を使い分けつつ三つ目の魔法『水滴』を足の裏から高速で出すなんて。なんて恐ろしい子……コツコツと鉄でプールを作る必要などなかったのだ。まだまだ私は甘い……
ちなみにマリーは少しだけ熱い視線をオディ兄に向けている気がした。気のせいかも知れないが。この二人が上手くいくといいな。
そして恒例、大人達の夜。
「キアラの魔法はどうしたことだ? 凄すぎないか?」
「うふふ、カースも焦っていたわよ。本来魔法は何でもできるはずなの。それをキアラは体現しちゃってるのよね。」
「カース坊ちゃんの魔力量もとんでもないことになっているとは思いますが、四歳時で比べるとキアラお嬢様とどちらが上なんですか?」
「キアラね。そりゃあ今はもちろんカースの圧勝だけど。このペースでいけば凄いことになるわね。怖いぐらいよ。今でさえカースはとんでもないのに。」
「ははは、我が家は安泰だな……」
「だってあの子、キアラは経絡魔体循環をケロっとした顔でこなしたのよ? 私だって、カースでさえあんなに苦しんだ地獄の経絡魔体循環よ? きっと宮廷魔導士なんか目じゃない魔法使いになるわ……」
「はは……すごいな……じゃ、じゃあそれなら次の子供はもっと凄いのかな、はは。」
突如イザベルの雰囲気が変わる。
「あなた……ごめんなさい……無理なの……去年が私のピーク、もう私は下り坂なの……」
「んん? それは魔力の話か?」
「いえ、それだけじゃないわ……『王都の花』と言われた美貌も……魔力も……そして何より生殖能力が……」
「奥様……」
「イザベルお前……」
「房中錬魔循環は万能、だったのよ。私の魔力は二十年以上前に宮廷魔導士を遥かに超えた。それは貴方のお陰でもあるしフェルナンド様、その他の強い男達のお陰……でもやっぱり所詮は人の業……限界、副作用があったのね……多分私の母上も知らなかったのよ。そこまで到達できなかったから。」
「イザベル……」
「ここ一年ほど私の魔力は伸びていないの。貴方に房中錬磨循環をしているから減ってはいないけど。つまり下り坂なのよ。魔力の成長は登山と同じ……登れなくなったら、もう下るしかないの……魔女だ聖女だって言われてもこんなものよ。」
「イザベル、よく分からなくなったぞ。それは問題なのか?」
「私の魔力が上がらないってことは、貴方の魔力を上げることもできないってことよ? 何よりもう貴方の子を生んであげることが出来ないの! 問題じゃない!」
「いや、私は困らないぞ? お前と子供達、そしてマリーがいるんだ。何も困らないぞ?」
「貴方……」
「そもそも三十代後半なんだ、衰えても仕方ないだろう。永遠の命でも欲しいのか? それは無理だ。それでいいじゃないか。うちの子供達はみんな優秀過ぎる。無知な平民だった私の子とは思えないほどだ。カースが卒業したら隠遁生活もいいと言ったが後半年だ。あまり難しいことを考えても私には理解できんぞ?」
「貴方……」
「私はお先に失礼します。」
マリーはそっと部屋を出た。
「イザベル。お前は美しい。そして子供達は五人もいる。それでいいじゃないか。」
「貴方!」
「ああ、イザベル。」
夫婦の熱い夜は終わらない。
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