朝から母上の機嫌がとても良い。きっと昨夜いいことがあったに違いない。顔色もいい。
少し疲れたような父上によるとアッカーマン先生はすでに王都を発ったらしい。現在地は分からないが、領都辺りまで来ていてもおかしくないらしい。ならば遅くとも今月中にはクタナツに到着するはずだ。
時々見回ってみようかな。どんな人なんだろう。ドキドキする。先生の先生かぁー、六十代半ばらしいな。小さいのに剣の達人なんだよなー。
ちなみに私の身長は百四十センチぐらい。同級生の中では平均ぐらいだ。スティード君より低く、セルジュ君より高い。
ちなみに父上とフェルナンド先生は百八十センチぐらいで母上は百七十センチないぐらい。みんなスラっとしてスタイルが良い。ならば私もいずれそうなれるはずだ。頑張ろう。
さて、二学期から学校の授業が変わってきた。選択授業というのが始まって、各自の進路に合わせて好きな授業を受けることができるというものだ。
私は魔法二、体育二、社会一の割合にした。
全部体育にしたら体力が持たなかったので、こうなった。
その上、授業時間内で質問も要望も自由。ここぞとばかりに魔法や剣術、槍術についてあれこれ聞いてみた。
質問一、対象の動きを止める魔法はあるか?
回答、ある。
重くしたり凍らせたり麻痺させたりすればいい。
『重圧』『氷結』『麻痺』など。
質問二、対象を眠らせたり毒を盛る魔法はあるか?
回答、ある。
しかし制御が難しいため使いにくいらしい。
『睡眠』『快眠』『安眠』『昏睡』『永眠』『微毒』『中毒』『瘡毒』『猛毒』『毒焔』
やたら充実している……まだまだあるらしい。
質問三、地震を起こしたり隕石を落とす魔法はあるか?
回答、?
地震って何? 隕石って何?
そんな概念も現象もローランド王国にはないようだ。雷はあるが津波はない。
質問四、物体を切断するのに適した魔法はあるか?
回答、ある。
職人が多用する魔法で刃物に魔力を纏わせる魔法。発動までの時間が平均三十分程度かかるが、一度発動すれば魔力が切れるまで継続可能。
『木切』『石切』『金切』『魔切』など。
勉強になるなぁ。帰ったら母上に教えてもらおう。
体育の時間ではデル先生に色々聞いてみた。
「剣術だと無尽流とか無限流とかありますけど、槍術だとどんな流派があるんですか?」
「無限流? まあそれはいいや。槍術だと王都では『破極流』かな。他には『極蔵院流』に『胤田流』なんかがあるね。」
「たくさんあるんですね! その中で無尽流のアッカーマン先生が対戦したって話はあったりしますか?」
「あるかも知れないよ。アッカーマン先生が若い頃には剣術使いや槍術使い、体術使いとあれこれ対戦したらしいけど、負けたって話は聞いたことがないしね。」
無敵なのか! さすが先生の先生!
「じゃあ前々回優勝のアイシャブレさんって槍も使うらしいですけど、何流なんですか?」
「あはは、彼女も変わり種だからね。無尽流と破極流が半々だね。剣も使うけど本気の時はいつも槍だよ。まあそれを言ったら剣鬼さんだって薙刀や長巻を使ったりするしね。」
「そうなんですか! 知りませんでした!」
父上からも聞いたことがない。少し悔しいぜ。
「結局のところ相手次第だと思うよ。動きの鈍い防御の硬い相手にはやっぱり長物だよね。」
「へぇー! じゃあアイシャブレさんがフェルナンド先生に手傷を負わせたって話はどんな状況だったんですか?」
「それは初耳だなー。私の方が知りたいよ。とても興味深い対戦だよね。」
この後もあれこれ聞いたところ、無尽流は剣術の流派だが、アッカーマン先生は剣に拘ってはいないらしい。組み打ちもあるし、剣を投げてもいい。もちろん槍も使うし縄鏢も使う。若い頃は道場破り一歩手前のことをよくやっていたらしい。その過程で色んな武具に造詣が深いとか。その結果、一番相性がいいのが剣だったらしい。
凄い人だ……
不安になってきた。私は試験を突破できるだろうか……
読み終わったら、ポイントを付けましょう!