異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

163、領都の夜

公開日時: 2021年4月11日(日) 10:03
文字数:2,509

宿に入った私達は宿泊の手続きをする。と言ってもギルドカードを出し料金を払うだけだ。

従業員に案内され移動する。なんと五階建てだ。最上階まではエレベーターまである。まあ従業員が足元の板に浮身を使うだけなのだが。


案内されたのは所謂スイートルームだろうか。前世で泊まったことなどないから広くて快適そうだということしか分からない。


「ご用の際はそちらのベルをお鳴らしください。ではごゆっくりどうぞ」


従業員も受付も私達が子供だからと言ってぞんざいに扱ったりしない。これは少し嬉しいな。


「さーて、お風呂でも入ろうか。アレクの所より大きいんじゃない?」


アレクは何も言わない……

むしろ姉上が帰ってから口を開いてない……


「どうかしたの? 」


「べ、別に、カースとお風呂に入りたいわけじゃないんだから!」


久々に聞いたツンデレアレク。でもこの場合はツンデレなのか?


「そうだね。もちろん別々だよ? 先に入ってね。お互い子供ってことで。」


「そ、そうよね! ま、まだ子供だもんね! そんなことは大人になってからよね!」


そんなことってどんなことだよ。風呂ぐらい一緒でもいいけど、アレクがその思考ならだめだな。全く上級貴族ってやつは……可愛いぜ。


アレクが風呂に入っている間に洗濯をしてあげてもいいが、やめておこう。私は紳士だからな。


さて、待つ間は暇だから錬魔循環しながら鉄キューブを浮かせてよう。と、思ったが浮かない。くっ、それなら鉄スノボにしよう。これならギリギリ浮かせることができた。循環阻止の首輪を卒業できるのは一体いつになることやら……


そんな時、ドアが激しく叩かれた。このレベルの宿でそんな叩き方するか? 火事とか?


少し警戒しつつドア越しに声をかける。


「誰だ?」


「開けろ! 開けんか!」


従業員じゃないな。なら無視しよう。護摩の灰だったら大変だ。よくここまで入ってこれたな。

まだ叩いて何か喚いてる。従業員は何やってんだ? 

ベルを鳴らしてみた。

誰も来ない……

相変わらずドアは叩かれている。


もしかして、緊急?

実はこいつって押し込み強盗とか?

これはいかん!

ひとまずドア前に鉄キューブを置いておく。


「アレク! すぐ出て服を着て!」


私は躊躇わず浴室へ入る。鍵などついていない。


「アレク! 」


寝てる? いや、のぼせてるのか?

くそ、こんな時に……

仕方ない、湯船から出して……どうすればいいんだ!? あ、意外と胸がある! くっそーこんな時に私は、私はぁ!


落ち着け、まずは乾かそう。慎重に乾燥魔法をかけて水を飲ませるんだ。この前バランタウンで練習したので大丈夫だと思う。水操みなくりでゆっくり飲ませる……

服を着せるのは難しいのでローブをかけて、額に氷霰こおりあられで冷やした布を乗せておく。


こんなとこだろう。さて、ドア前はどうなった? 今一度ベルを鳴らしてみる。

ドアを叩く音はすでにないが油断できない。

そして窓も油断できない。ここは五階だが屋上からなら近いものだ。ガラスではなく木製なので簡単に蹴破られたりはしないだろうが……


よし、今のうちにアレクをベッドに運んでおこう。まずは銀ボードに乗せてベッド脇まで、そこからベッドまで手動でゆっくり動かす。

もう一度水を飲ませておこう。

それから鉄湯船を逆さにしてベッドを覆う。いつか野宿をした時の利用方法だ。


これでアレクは安全だろう。


さて、どうする?




およそ五分後、ゆっくりドアがノックされた。


「誰だ?」


やはりドア越しに声をかける。


「先ほどの案内係のアンナでございます」


「先ほどの不審者は何者だ?」


「ご説明いたしますので、お開けいただけますか?」


「そこでしろ。」


「い、いえ、それは直接……」


怪しいぞ? 確かにこの声はさっき案内してくれた人だ。

ならば鉄キューブを少しズラして……浮かせられないから大変だ。


「今開ける。」


閂を外す。


途端にドアが激しく開けられる。

しかし開かない。顔が見える程度までしか開かない。


やはり不審者か。男が案内係の首に刃物を当てている。マジで押し込み強盗だ。


『狙撃』


これだけ隙間があれば十分なので頭を打ち抜いた。


「不審者はそいつだけか?」


「あ、ありがとうございます……まだ一階に五人ほど……」


「押し込み強盗か?」


「いえ、それが……辺境伯様の……四男様で……」


何それ? 意味分からん。


「入れ。」


鉄キューブを動かし係を中に入れ、再びドアを固定する。


「奴らの目的は?」


「その……このお部屋が塞がっていたことで癇癪を起こされまして……」


嘘だろ……そんな奴がいるのか……

それで従業員の首に刃物って……許されるのか? フランティア辺境伯家と言えば王都でのアジャーニ公爵家にも匹敵するほどの大貴族。許されるのか……家格で言えばギリギリでアレクサンドル家に勝てるぐらいか。


優しく金で話をしてくれたら素直に譲ったものを。バカが……


「何人まで同時に連れてこれる?」


「わ、私を含めて四人ほどでしたら……」


「なら二人連れて来てくれ。そこで寝てる奴が呼んでるとか何とか言って。」


「わ、分かりました」


その間に首輪を外して奴の死体を収納しておこう。血の跡もきっちり洗ってと。

オディ兄ほどではないが、私も洗濯魔法はそこそこ使えるのだ。


おっ、上がってきたな?

エレベーターを降りた所を後ろから……『狙撃』


弾丸一発で二人の頭をまとめて撃ち抜く。


「さて、後三人か? もう二人、難しいなら三人まとめてでいい。連れて来い。」


「は、はい……」


こいつも災難だよな。目の前で何回も人死を見せられるとは。


それにしてもこいつらっていつも横車押しまくってんだろうなー。全然警戒してないんだもんなー。


おっ、二人か。係のやつ上手くやったな。

全く同じ方法で二人とも片付けた。

魔力庫のことを気にしてなかったが、貴族の連れだ。普通消滅する設定だよな。実際何もばら撒かれることはなかったし。


さて、残りは四男だけか。


上がってきた。


『落雷』


室内で落雷を使うのはかなり難しい。だが魔力でごり押しすれば問題ない。

取り敢えず気絶させた。


「ご苦労。もういないな? で、こいつが四男でいいのか?」


「は、はい……そうです……」


「分かった。ここはもういい。後で呼ぶ。そしたら亭主と来い。」


あー面倒だった。さて、こいつはどうしよう。一応生かしておいたけど。

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