異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

52、秋の大会(三年時)

公開日時: 2021年1月4日(月) 09:32
文字数:2,342

すっかり秋が来た。

秋と言えば恒例の魔力測定だ。今回は二百まで計れるタイプらしい。今回も貴族は全員二百かと思えばそうでもない。

まずパスカル君達三人組だが、パスカル君とエルネスト君は二百だが、イボンヌちゃんは百五十程度。


フランソワーズちゃんの派閥も二百を出したのは半分程度、彼女自身は百八十ぐらいだった。


ちなみに私達五人組はみんな二百だ。みんな毎日コツコツと魔力を増やしているのだろう。


フランソワーズちゃんが何か言いたそうな顔をしてこちらを見ているが、言えばいいのに。同じ組の仲間だぜ? 遠慮はいらない。

でも私も敢えて水を向けようとは思わないけどね。


それにしてももう三年生も半年か。卒業まで大体半分過ぎてしまった。早いものだなぁ……


そう言えば三学年から魔法大会とか剣術大会とかが冬前にあるらしい。

三年・四年・五年から一人ずつ代表者を決めて、その三人で学校の代表を決めるとか。そして学校の代表は他の街の代表と辺境一の学生の座を争うらしい。これが進学の際の評定に大きく影響するんだとか。


ウリエン兄上が評定を心配してなかったのは、剣術の部で優勝していたからだ。辺境一なのに、ウメールには勝てなかったらしい。

エリザベス姉上は魔法の部で学校の代表にはなったが、優勝はできなかった。

オディ兄はそもそも参加していない。

私も参加する気はない。

決勝戦の会場は持ち回りで今回は領都らしいからだ。選ばれる自信はあるが、馬車で行きたくないからだ。絶対嫌だ。


部門は三つ。

・剣術

・魔法

・学問

まずは一組、二組から三年生代表を決めるのだが、参加は自由。

スティード君は剣術。

サンドラちゃんは魔法と学問。

アレックスちゃんは魔法にエントリーした。

私とセルジュ君は不参加だ。


気楽に応援だけしていよう。




そうかと思えば……


「カース! なぜ参加してないの!? カースほどの魔力があれば五年生にも勝てるんじゃないの!?」


アレックスちゃんが朝から叫んでいる。


「いやいや、無茶言わないでよ。勝てるわけないよ。所詮僕は魔力が多いだけなんだから。」


そんな面倒くさいことなんかやりたくないんだよ。評定も関係ないし。


「そんなことよりアレックスちゃんは頑張ってよ。君の魔力こそ五年生に勝てるんじゃないの?」


三年生の代表に選ばれて当然って物言いだけど、多分間違いないだろう。なぜなら基本的に上級貴族ほど魔力が高いからだ。

我らが一組から魔法部門にエントリーしているのは……


・アレックスちゃん

・エルネスト君

・フランソワーズちゃん

・サンドラちゃん

・平民組から二人


剣術部門は

・スティード君

・グランツ君


学問部門は

・サンドラちゃん

・フランソワーズちゃん

・平民組から一人


ここから一組、二組合同で三年生代表を決めるのだ。


その結果、三年生代表は……


・魔法、エルネスト君

・剣術、スティード君

・学問、サンドラちゃん


となった。


うーんアレックスちゃん、残念。

貴族の格としてはアレクサンドル家の方が余程上だが、エルネスト君には敵わなかったようだ。まあ私が見たところ僅差だったようなので、今後の努力次第でいくらでも逆転できるだろう。


スティード君とサンドラちゃんは楽勝に見えた。さあ上級生のお兄さんお姉さんを相手に勝負になるのか!?

クタナツ代表選考は明後日だ!


ちなみに二組とは残酷なぐらい差があるようだった。下級といえども貴族か。血筋の差って残酷だよな……

これが現実か……




そして代表選考当日。

学問は各学年の代表三人が同じテストを受けるため優劣が分かりやすい。


しかし魔法と剣術は分かりにくい。

まずそれぞれが先生と対戦する。次にリーグ戦で全員が対戦する。

そした最後に巴戦を行う。

この三つの戦いの総評で代表者を選出することになっている。


その結果、サンドラちゃんが学問で代表に選ばれた。

魔法と剣術は五年生にただ二人の上級貴族がそれぞれ選ばれた。

スティード君とエルネスト君は二位なのか三位なのか分からない。一位以外は大した差はないということで公表されていないのだ。


改めて思ったが私の学年は上級貴族が五人いるが、これって多くないか?

五年に二人、四年に一人、二年にはおらず、一年にも一人だと聞いている。まあ偶然だろう。


さて大会本番は一ヶ月後、参加者の出発は二週間後、本番一週間前に現地に着く予定らしい。

それまでサンドラちゃんに勉強でも教えてあげたい気持ちはあるが、すでに彼女の方が成績が良い。

国語の読解分野ならまあまあ勝てるが、神代文字の読み書きでは勝てない。

算数は楽勝なので除外。

社会は全然勝てない、彼女は相当しっかり勉強している。五年生に勝つのも当然なのだろう。

よって算数だけは教えてあげられるが単元が分からない。何をどこまで教えればいいのかが分からないのだ。前世の中学・高校のように範囲が公表されてないためだ。

もしサンドラちゃんが聞いてきたら教えよう。


勝負科目は……


・国語

・算数

・社会

・その他


ということだけは分かっている。


その他って何だ? 魔物の生態とか?

長旅だし無事に帰ってきてくれればそれでいいんだけどな……


ちなみにサンドラちゃんはすでに割り算ができるのくせに、かけ算・割り算に何かコツはないか相談があった。

だから倍数・約数・素数・素因数分解について教えておいた。

もしこれを現代日本で小学生に教えようとしたら二週間はかかる、五年生にだ。授業時間で言えば十から十五時間ぐらいだろう。


それなのにサンドラちゃんはたった四時間で終わってしまった。一対一で集中的に教えたことを差し引いてもすごい理解力、さすがだ。なので勢い余って指数まで教えてしまった。

この様では算数でも数学でも抜かれる日が近いのかも知れない……


はっ!?

そういえば金貸しにとって対数は必須! 負けるわけにはいかん!

追いつかれないよう頑張ろう。

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