異世界金融

〜 働きたくないカス教師が異世界で金貸しを始めたら無双しそうな件
暮伊豆
暮伊豆

198、エリザベスの尽力

公開日時: 2022年1月7日(金) 10:37
文字数:1,307

王都にて。

アレクサンドリーネは魔法学校に通う日々。シャルロットと同じ教室、同じ授業を受けていた。スティードとは毎朝毎晩顔を合わせている。二人ともゼマティス家で寝泊まりしているのだから。


「スティード君。アイリーンは元気してる?」


「うん。領都に帰りたそうにしてるけどね。ターブレ君が恋しいんだって。」


「ふふ、アイリーンも女なのね……」


「カース君も心配だけどエリザベスお姉さんは無事なのかな……」


「何よスティード君らしくもないわね。カースの心配なんかしても無駄無駄よ。のんびり待っておけばいいのよ。」


「そう……だね。せいぜい今のうちにカース君に差をつけておこうかな。」





そんなある日の夕方。


「大奥様。エリザベス様を名乗る女が来ております。いかがいたしましょうか?」


「エリザベス? 変ね? まあいいわ。連れて来なさい。」


そしてメイドによってアンヌロールのもとに案内されたエリザベス。


「おばあちゃん。ただいま帰りました。カースを犠牲にしておめおめと生きて帰りました……」


「エリザベス……助かったの! 本当に……おおエリザベス!」


祖母アンヌロールはエリザベスに抱きついて涙を流す。エリザベスも祖母に抱きついて嗚咽が止まらない。


「おばあちゃん……私……カースが……」


「いいのよ。よく帰って来てくれたわね。ありがとうエリザベス。」




「お姉さん! カースは! カースは!?」


そこにアレクサンドリーネも姿を現した。


「アレックスちゃん……ごめんなさい……」


そう言ってエリザベスは気を失った。よく見ると薄汚れており、かなりの強行軍でここまで来たことが窺われる。





翌朝。この日アレクサンドリーネとスティードはどこにも出かけていない。エリザベスの目覚めを待っている。


そしてついにエリザベスが目を覚ました。


「こ、ここは……」


「お姉さん! 大丈夫ですか! 私です! アレックスです!」

「エリザベスお姉さん! スティードです! カース君は!?」


「あぁ、やっと私……着いたのね……おばあちゃんかおじいちゃんは? 説明するわ……」


「待っててください! 呼んできますわ!」


アレクサンドリーネは慌てて部屋を出る。


「お姉さん……一体……」


「ふふ、スティード君……おじ様に優勝を伝えておいたわ……大喜びだったわよ。」


「お姉さん……ありがとうございます。」


そしてエリザベスのもとへアンヌロールが姿を見せる。


「エリザベス。大丈夫かい?」


「おばあちゃん。ご心配をおかけしました。私は元気です。でもカースが……」


エリザベスは状況を説明する。それが自身の恥を晒すことだとしても。






「では……お姉さん……カースは……」


「ええ、魔力ポーションを三十本近く飲んでまで私を助けてくれたの……バカな弟……」


「カースが……意識不明……」

「アレックスちゃん! 大丈夫だよ! だってカース君なんだから!」


「おばあちゃん……ゼマティス家秘伝のポーションがありますよね? 全部ください! 明日、私はカースのもとへ向かいます!」


息も絶え絶えにエリザベスは言う。


「エリザベス……いいわ。アントンにお願いしてあげるわ。きっと了承するわね。」


「おばあちゃん……ありがとう……」


そしてエリザベスは再び眠る。一体何度限界を超えたことだろうか。

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