王都にて。
アレクサンドリーネは魔法学校に通う日々。シャルロットと同じ教室、同じ授業を受けていた。スティードとは毎朝毎晩顔を合わせている。二人ともゼマティス家で寝泊まりしているのだから。
「スティード君。アイリーンは元気してる?」
「うん。領都に帰りたそうにしてるけどね。ターブレ君が恋しいんだって。」
「ふふ、アイリーンも女なのね……」
「カース君も心配だけどエリザベスお姉さんは無事なのかな……」
「何よスティード君らしくもないわね。カースの心配なんかしても無駄無駄よ。のんびり待っておけばいいのよ。」
「そう……だね。せいぜい今のうちにカース君に差をつけておこうかな。」
そんなある日の夕方。
「大奥様。エリザベス様を名乗る女が来ております。いかがいたしましょうか?」
「エリザベス? 変ね? まあいいわ。連れて来なさい。」
そしてメイドによってアンヌロールのもとに案内されたエリザベス。
「おばあちゃん。ただいま帰りました。カースを犠牲にしておめおめと生きて帰りました……」
「エリザベス……助かったの! 本当に……おおエリザベス!」
祖母アンヌロールはエリザベスに抱きついて涙を流す。エリザベスも祖母に抱きついて嗚咽が止まらない。
「おばあちゃん……私……カースが……」
「いいのよ。よく帰って来てくれたわね。ありがとうエリザベス。」
「お姉さん! カースは! カースは!?」
そこにアレクサンドリーネも姿を現した。
「アレックスちゃん……ごめんなさい……」
そう言ってエリザベスは気を失った。よく見ると薄汚れており、かなりの強行軍でここまで来たことが窺われる。
翌朝。この日アレクサンドリーネとスティードはどこにも出かけていない。エリザベスの目覚めを待っている。
そしてついにエリザベスが目を覚ました。
「こ、ここは……」
「お姉さん! 大丈夫ですか! 私です! アレックスです!」
「エリザベスお姉さん! スティードです! カース君は!?」
「あぁ、やっと私……着いたのね……おばあちゃんかおじいちゃんは? 説明するわ……」
「待っててください! 呼んできますわ!」
アレクサンドリーネは慌てて部屋を出る。
「お姉さん……一体……」
「ふふ、スティード君……おじ様に優勝を伝えておいたわ……大喜びだったわよ。」
「お姉さん……ありがとうございます。」
そしてエリザベスのもとへアンヌロールが姿を見せる。
「エリザベス。大丈夫かい?」
「おばあちゃん。ご心配をおかけしました。私は元気です。でもカースが……」
エリザベスは状況を説明する。それが自身の恥を晒すことだとしても。
「では……お姉さん……カースは……」
「ええ、魔力ポーションを三十本近く飲んでまで私を助けてくれたの……バカな弟……」
「カースが……意識不明……」
「アレックスちゃん! 大丈夫だよ! だってカース君なんだから!」
「おばあちゃん……ゼマティス家秘伝のポーションがありますよね? 全部ください! 明日、私はカースのもとへ向かいます!」
息も絶え絶えにエリザベスは言う。
「エリザベス……いいわ。アントンにお願いしてあげるわ。きっと了承するわね。」
「おばあちゃん……ありがとう……」
そしてエリザベスは再び眠る。一体何度限界を超えたことだろうか。
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