領都に無事到着。
「じゃあリゼット、セプティクさん。今日はありがとう。また何かあったら頼むね。」
「こちらこそありがとうございました。カース様のためなら何でもいたしますので!」
「ありがとうございました。今度こちらのお屋敷の方にも点検にあがりますので。」
そういやここの我が家にもスライム式浄化槽はあるもんな。浄化槽部屋の鍵がないが……辺境伯家に行けば分かるかな?
「ああ、頼む。じゃあまた。」
「ピュイピュイ」
「ガウガウ」
城門前で二人と別れて帰ろうと思ったら……
「リゼット、何やってんだ?」
「カース様のお屋敷までご一緒してはいけませんか?」
「そりゃまあ構わんが。」
辺境伯家三男の婚約者が街を見知らぬ男と歩いてもいいのか? 知らないぞ?
「会長! 探しましたよ! どちらに行かれてたのですかぁー!」
突然登場したのは役立たずの護衛。えーっとジャンヌだったか。
「あらジャンヌ。あなた今日も休みじゃなかったかしら?」
「確かにお休みをいただいてましたけど! ふと会長が心配になったもので! どちらに行かれてたのですか!?」
「ふふ、カース様とデートよ。野暮なことは言わないの。だから護衛はいらないわ。明日からまた頑張ってね。」
「そ、それはもう。で、会長どちらに行かれてたのですか?」
「天国かしら? カース様ったらすごかったんだから。」
「そ、そうなのですか! それは一体どこの連れ込み宿で!?」
何なんだこいつは……リゼットの浮気の証拠でも掴みたいのかな。役に立たないにもほどがある護衛だな。
「うふ、内緒。じゃあまた明日ね?」
「ああ、会長そんな……」
「あいつはいつまで泳がせとくの?」
「どうしましょう? たった一度だけ役に立ってくれたらそれでいいんですわ。それまではこのままですわね。」
「ふーん。色んな考え方があるんだな。」
スパイは排除するだけが能じゃないんだな。さて我が家に到着。
「おかえりなさいませ旦那様。」
「おかえりなさいませ。」
マーリンとリリスが揃って挨拶をしてくる。
「ただいま。アレクは帰ってきてる?」
「いえ、まだのようです。ではお食事はお嬢様の分もご用意しましょうね。」
「それで頼むよ。もちろんリゼットの分もね。」
「かしこまりました。」
「カース様ったらやっぱり優しいお方! ダミアン様に嫁ぐ我が身が恨めしいです……」
嘘つけ。
「ダミアンと結婚してもここに来る気満々だろ。どうせダミアンもちょくちょく来そうだし。」
「ですよね! ではお風呂にしましょう! さあ入りましょう!」
「ガウガウ」
そうかそうか。
「カムイと入っててくれよ。そんでしっかり洗ってやって。カムイを相手に点数稼ぎするのも悪くないだろ?」
「もぉー仕方ないですね。アレックス様が来られたらカース様もお風呂に来てくださいよ?」
「来たらな。」
「ガウガウ」
「カムイが早く洗えってさ。頼むな。」
「もぉー! 行くわよカムイちゃん。」
「ガウガウ」
ほんとカムイのやつ、いつからこんなに風呂好きになったんだ? 野生の誇りを失ってないだろうな?
さーてアレクはまだかなー。
「おう帰ったぜ。」
ダミアンかよ。ここはオメーんちじゃねぇぞ。
「おかえりなさい。」
「おかえりなさいませ。」
マーリンもリリスもきっちりしてるのね。
「おうカースいたのか。いい酒持ってきたぜ! 飲むよな?」
「おお。飲む飲む。ただしアレクが帰ってからな。オメーはそれまで適当に何か摘んでろよ。」
私はまだ食べないけど。
「ピュイピュイ」
コーちゃんは待ちきれないよなー。いいんだよ。好きに飲み食いしてていいからね。リリスがさっとツマミを出している。手際がいいし結構うまそうだな。
「おーリリス。いつもすまんな。ありがとよ。」
「いえ、お口に合えば幸いです。」
おっ、リリスとダミアン。何かあるのか?
「ピュイピュイ」
コーちゃんもリリスのツマミが好き? 飲兵衛だねえ。
アレクが来ない……
そろそろ日没だぞ……アレクが約束を破るはずがない。もしかして……何かあったのか?
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