この物語は実在の人物団体とは一切関係ありません。
ただしこの物語がフィクションかどうか決めるのはあなた次第です。
……。
ここ最近、同じような夢を見る。
探せど探せど捜し物が見つからず、それでも必死にそれを探している。
すると、いつも決まって黄金色に輝く何かに「それ以上はやめておけ――」と忠告される。
だが起きてしまえば、いったい何を探していたのかすら思い出せない。
西暦二〇〇七年冬――
二学期の期末試験も終わり、冬休みも目前に迫っていた。
テストの点数はいつも通り上位一桁。
学年で主席を競えるほど秀でているわけではないが、教師の考える良い生徒像で過ごしているおかげで内申点は非常に高い。
しかしそれを褒めてくれる家族はおらず、賞賛してくれる友はいない。
その日、身を寄せている親戚宅へ戻ると、母屋の方から怒号が聞こえてくる。
聞くつもりはなかったし、聞きたくもなかったが、離れ家に向かう途中で否応でも耳につく。
彼らは古い家をいくつか持っていて、その賃貸で生計を立てている。
家主の伯父は人一倍お金にがめついくせに、自身は酒とたばこ、そしてパチンコ三昧の日々。
自尊心の塊である伯母は、最近あやしい宗教にのめり込んでいるらしい。
家賃によって少なくない収入を得ているはずだが、どうやらそれを上回る出費がかさみ、それが夫婦喧嘩の原因となっているようだ。
――どうせ、かすめ取った保険金ももうないのだろうな。
ため息交じりに離れに戻りながら通学カバンを部屋の隅に起き、部屋の真ん中に置かれたイーゼルの前に座る。
夫婦喧嘩は離れにも届いてきて、うんざりとする。
伯母の「神様が云々――」という言葉が耳に届く。
それに対しさらに大きな声で「いる訳がないだろ」と伯父は声を張り上げる。
――ああそうだな。神なんていない。
意見も感性も合わない伯父に対し、珍しく意見があった。
百歩譲り神という存在がいたとして、そいつが何をしてくれるというのか。
神は何もしてくれない。
ならば神とは人の不幸を楽しむ畜生か、人に無関心な輩か、あるいは神とは名ばかりの無能に違いない。
唯一例外を挙げるなら、だがあの伯父伯母の間に子供ができなかったことは身近に感じられる神の功績と称してもいいだろう。
あんな人間に育てられるかわいそうな子供がいないのだから。
そして。
まだ高校二年生の自分が腹立たしかった。
さっさと出て行きたいのはやまやまだが、未成年後見人があの伯父と伯母である以上、何かと不都合は多い。
――ああ、虫酸が走る。
俺は掃き溜めを拒絶するように、鉛筆を手に取った。
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