アビス・イン・ワンダーランド~ゲームギルドの深淵へようこそ~

前世のゲーム知識を駆使し、光属性防御魔法で無双します。
RYU
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戦慄と地獄のバトルロワイヤル ①

公開日時: 2024年11月5日(火) 21:55
文字数:2,902

夢の中でヒカリは、亡くなったひかりお姉さんと談笑していた。


ひかりお姉さんは、純新無垢な笑みを浮かべている。

暖かく心地よい空気が、流れ込む。


一緒にゲームやって、純粋に笑いあった。




目が覚めると、自分は自室のベットで横になっていた。


現実に引き戻された。と、ヒカリは悔しくなった。

いつの間に、モルガンの店に戻って来たのだろう?



酷い寒気を覚えた。


それと共に、感覚器官はすっかり元通りになっていた。


熱にうなされている。


まさか、この自分が、体調不良を起こすとはー


衣服は、汗でビッショリだ。


熱は感じるのに、寒気も感じる、奇妙な感覚だ。


ドアが、キーと音を立てて開く。


ドアの奥の方から、衣類やタオルを抱えた赤ずきんが姿を現した。

「ちょっと、様子を見に来た。お前、起きてたんだな。」

彼女はヒカリの側の椅子に座ると、ため息を漏らし憂鬱そうに項垂れた。

「ごめん。悪かった。まさか、あの辺にウィルスが蔓延してたなんて、気づかなかった。」


彼女のその雰囲気に、

何処と無くひかりお姉さんと重なるものを感じた。


「だ、大丈夫で…ふ…」

ヒカリは首を横に振り声を絞り出そうとするも、呂律が回らない。


自分の手がやや青紫がかって見え、身震いした。


ー今度は、一体、何なのだろうー?


「ヒカリ、とりあえず脱いで。それから、これで拭いて。」


ヒカリは、衣服を脱いで赤ずきんから手渡されたタオルで汗を拭き取った。


赤ずきんは新しい衣服を渡し、ヒカリはそれに着替えた。


「あ、あの…あのパックという子、何者なんですか…?」


「あれは、奴の手下だ。奴は、闇の魔力が強い。まあ、強いウィルスを保有してるんだ。」


「そうなんですね…」


「かなりの熱だな…モルガンがお前のことを処置してくれた筈なんだが…」


赤ずきんは、首を傾げヒカリの額に手を当てた。


ーこうして見ると、彼女は意外と優しいー。


彼女は、高いヒールのニーソーブーツにウエーブがかった鮮やかなブロンドのボブヘアー、ツリ目がちなハッキリした華やかな顔立ちをしている。

態度も大きく、何事にも物怖じせす爛漫とした強い口調で話し、喫煙もする。

それは、ヒカリの前世での苦手なギャルを彷彿としていた。

ヒカリは彼女に苦手意識を持っていた。


「私が弱いからでふから…もっと鍛えて…ケホケホ…」


「あー、これ以上、喋るな。ちょっと、額に手を当てるぞ。」


ーと、赤ずきんはオペラグローブを外しヒカリの額に手を当てた。


赤ずきんは、深く呼吸をすると目を閉じた。


すると、ヒカリの額が朱色の光沢を放ち、熱を帯びた。


ーが、光は徐々に弱くなり無になった。


「やっぱりダメか…」

赤ずきんは、深くため息をついた。


「だ、大丈夫でふ…」

ヒカリの意識は、朦朧としてきた。

前世でも、今世でも自分は弱いのか…と、悔しく涙が溢れそうになった。


「悪い。抵抗あるかも知れんが、少し我慢してくれ。」


赤ずきんは、いきなりヒカリに抱きついた。


「…!?」


ヒカリは、一瞬、ドキッとし、彼女にひかりお姉さんのような温もりを感じた。

髪にほんのり薔薇のような香りがした。


ーそういえば、ヒカリお願いさんもこんな香りがしていたような…


身体の芯から熱くなっていく。

二人は、朱色の炎に包まれた。




「よし…解毒したから、これで大丈夫だ。しばらく安静にしてな。」


赤ずきんはその場を去ると、再びお茶とお粥を運んできた。


「ちょっと、お粥作ってきた。これ食って飲んだら、寝てな。」

「ありがとうございます。」

ヒカリは、お茶を啜りお粥を食べた。

身体の芯まで、じんわりと暖かいのが染み込む。

赤ずきんは、根は優しい人みたいだ。


「あ、そういえば、レティーさんは、あの時、大丈夫だったんですね…あと、眠っていた人達や、人形になった人達は、どうなったんですか?あれも、パックの仕業ですか?」


いつの間にか、赤ずきんをそう呼んでいた事に気づいた。

レッドは彼女の名前で、レティーはその愛称だ。

モルガンや周りの者も、時折、彼女をそう呼んでいる。

ヒカリは今まで遠慮して言えずにいたが、心の距離は近付いたようだった。


「ああ…私は、尋問受けて変な薬を飲まされ、奇妙なドレスを着せられてな。あと、眠りの呪いだが、茨が消えた時、解除された。後は、ギルドの土属性の部隊が処置してくれたから大丈夫だ。パックは、私がとっ捕まえて、尋問した。ギルドは引き渡せってうるさいんだが…私は、どうも引っかかる事があってな。」


「あの、人格が変わったことですか?あの装置は…」


「いや…それは、途中から素に戻ったから、大丈夫なんだ。装置も、大分カラクリは解けた。大方脳髄に電気信号を与えて操作する予定だったのだろう。これで悪巧みを働いていたことだろう…」


「そうですか…」

彼女は、強靭な精神の持ち主なのだろう。

自分なら、そんな破天荒な目に合ったら精神が持たないー。


「矢張、大会に出るしか無さそうだな…奴らに会うのが嫌なんだが…特に、アイツは…」


赤ずきんは、眉間に皺を寄せた。




それから、更に二週間が経過した。

ギリシャのコロッセオドームを彷彿とする、豪勢な建物の中で、例の大会が開催された。


「皆さん、お待ちしましたー!!!」

女性司会者が、爛漫な笑みを浮かべながら声を張り上げた。


「では、今回のゲームのルールを説明します。一対一、及びグループ形式でのバトルロワイヤル戦となります。コースの辺りに警備隊を配置してありますので、安心してプレーしてくださいませ。一回戦は、ギルド部隊、スコーピオンから、赤ずきんのレッド、キグナスから不思議の国のアリス…では、二人とも、位置について。」


赤ずきんとアリスは、ドームの中央に立つと互に睨み合った。


「お久しぶりです、レッドさん。こうして二人で話すのは、初めてですね。」

アリスは、丁寧な口調で控えめな笑みを浮かべお辞儀をした。


「お姫様ぶったお辞儀の仕方は、やめな。お前らの魂胆は、知ってんだから。」

赤ずきんは、顔を顰めるとぞんざいに言い放った。


「相変わらずですね。」

アリスは、意味深に微笑んだ。



「では、始めー!」

司会者の合図とピーという笛の音で、バトルが始まった。



ーと、あたりに甘い香りが立ち込め、霧が漂った。



メキメキと奇妙な形の巨木が生え、それは、前世で見た『不思議の国のアリス』の世界観を彷彿としていた。

花がニョキニョキと生え、高さが三メートルくらいに伸びた。


それは、まるで、自分達が不思議な世界に迷い込み、小人のように小さくなったかのような摩訶不思議な感覚に陥った。


辺りに歓声が湧き上がった。


ーと、その直後だった。


その場にいた者、ほとんどが奇妙な高揚感に襲われ、ケラケラ笑う者や怒り出す者まで現れた。


硫黄のような毒のような鼻を突き刺す匂いまでする。


「どうですか?これが、私のゲートスキル、『夢の国』です。どうぞ、幸せなひと時をお過ごしくださいませ。」


アリスは、バカ丁寧にスカートに手を添えお辞儀をする。


「ふん、何かと思えば、下らないね…」

赤ずきんは、両手にサバイバルガンを携えやる気を見せる素振りをした。



ーレティーさんは、何か、作戦があるのかな…?


ヒカリは眠気と戦いながらも、その摩訶不思議で奇妙な光景をドームの裏口から固唾を飲んで見ていた。

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