アビス・イン・ワンダーランド~ゲームギルドの深淵へようこそ~

前世のゲーム知識を駆使し、光属性防御魔法で無双します。
RYU
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世界の絶望、そして再生 ②

公開日時: 2024年11月15日(金) 21:31
更新日時: 2024年11月15日(金) 21:34
文字数:3,073

モルガンは、じわじわヒカリに詰め寄る。


「私が傍で、ずっとヒカリちゃんを守ってあげる。」


ひかりお姉さんは、度々研究に勤しんでいた。


彼女はよく、『新世界の構築』『異次元への転生』などと言っていた。

「もしかして、この世界の創造主は、ひかりお姉さんですか…?」


「そうよ。この世界は、ひかりお姉さんが創ったのよ。ひかりお姉さんが開発してプログラミングした世界。そして、この世界がより高度に発展するようにプログラミングしたのも、彼女。そして、彼女は今もこの世界を創り続けているのよ。」


「そうなんですね。」


ひかりお姉さんは、頭が非常に良くプログラミングの才能もあり、度々企業から呼ばれていた。


だとしても、頭がついていけない…


一度に色々な情報が頭に入り、こんがらがる。


理解が追いつけない…


最後に、1つだけ質問する事にした。


「あの、バルバロネという最凶のVXを創ったのは、あなたですか?」


「それは、ひかりお姉さんが創った失敗作よ。何度も何度も実験し、そして失敗してきた証拠よ。それがウィルスとなったのね。それを強大にしたのは、私。それを使ってヒカリちゃんを脅かす存在が居ないか、ずっと、パトロールしていたのよ。」


「…」


ずっと、感じていた黒い影の正体は、コレが原因だったのか…?


そう言えば、あのバルバロネの手下であるクラーケンが自分にだけは無害だったのは、こういうことだったなんて…


「一度に、色々話し過ぎてごめんなさいね…後は、二人だけで、ゆっくり話しましょう。」


モルガンは、ニッコリ微笑みヒカリに近付く。

だが、その笑みは何処と無く不気味さを帯びている。


悪魔のような心に張り付いた、天使のような笑みといった感じである。


「い、嫌…」


ヒカリは、ぶるぶる震え後退りする。


モルガンは、軽く杖を振る。


すると、違和感を覚えた。

身体が人形のように硬くなっていく、五感がみるみる機械のようになっていくような感覚がしたのだ。


そこで、ヒカリはハッとした。


パックは、元々はモルガンの使い魔だ…


魔力の掛け方が同じだ。

あの時の眠気は、パックがモルガンの指示でやったものだ。


大会でパックが行方不明になった時、彼女は平然としてた。


「邪魔な住人は、永久に起きないわよ。ヒカリちゃん、これで、ずっと二人きりで一緒だね。」


モルガンは、ヒカリに近付きそして抱き着いた。


ヒカリは、全身に寒気を帯びぶるぶる震えた。


これは、ミオじゃない…

バルバロネの影響で、おかしくなってるんだ…


ヒカリは、全身の感覚が麻痺してきた。


ーと、そこに強烈な烈風に包まれた朱色の炎が辺りを包み込んだ。


ハッとし、振り返ると、そこには両手にサブマシンガンを構えたレティーの姿があった。


「ヒカリから、離れな!」

レティーは、両手にサブマシンガンを構え、怒涛の勢いで捲し立てた。



「何故、動いてるの?」

モルガンは、瞳孔を大きく揺らしてレティーを見ている。


「それは、お前が散々時間を歪めてきやがったからだよ。」


「何を言ってるのかしら?」


「創造主は、自分が間違って造ってしまった巨大なウィルス…通称、バルバロネを何とかして食い止めたかった。だが、奴は強大になり過ぎて手に負えなかった。だから彼女は、この世界を終わりにしてあたし達を新しいゲーム世界に転生させるつもりだったんだ。だが、お前はそれを拒んだ。だから、世界の終わりが近付く度に魔力を行使し、時間を巻き戻してきたんだ。ヒカリと、ずっと一緒に居たい為にね。少なくとも、100回以上は戻してるんじゃないかな?」


「それは、どういう事かしら?」


モルガンは、首をかしげニッコリする。


「お前は、時間を巻き戻し続け、その度に、ヒカリと初対面のフリを演じ続けてきたんだよ。」



「どうして、それが分かったのかしら?」


「私は、元々はヒカリを守る為に生まれてきたソフトだからだよ。あたしの中に、創造主のお気持ちが込められてるみたいだからな。そして、お前は、ヒカリの記憶を操作した。そして、幻覚を見せヒカリを混乱させた。100回以上時間を巻き戻しながらな。ずっと、ヒカリがキボウに見えるようにしたんだ。お前の話は、全部聞かせて貰ったよ。」


「盗み聞きしていたとは、イヤらしいのね。じゃあ、やってみる?」

モルガンは、悪魔の笑みを見せた。


「じゃあ、シールド展開していこうか?」


レティーは、満面の笑みを見せた。


「シールド…?シナリオには、そんなもの、入れた筈は…」


モルガンは、顔を歪めた。


「もう、下準備は、出来てんだよ。」

レティーは、勝ち誇った顔ね言い放った。


ーその時だった。


モルガンの周りに無数の六芒星の模様が浮かび上がった。


「…!?」

一瞬、モルガンの動きが、鈍った。


「ヒカリ、離れてろ!」


レティーの指示に従い、ヒカリはモルガンから離れた。

すると、モルガンの周りを、朱色の光の輪が覆い囲んだ。


「…どうなって…?」

モルガンは、騒然となりキョロキョロあたりを伺う。


「お前の弱点は、シナリオ通りにいかないことだ。だから、あたしはお前の心を読んで、パターンを把握することにしたんだ。お前の事は、ずっと怪しんで居たからな。」


「どうやって…」


モルガンは、ハッとする。


「だから、言ったろ。あたしは、ヒカリを守るために、創造主が創ったソフトなんだ。それが、あたしの使命だからな。」


そうだ…レティーは、ヒカリがピンチの時は、真っ先にヒカリの事を助けてくれた。


何かと自分のことを、気にかけてくれていた。


ひかりお姉さんは、私の事を大事に思ってくれていたのだと、ヒカリは目に涙を浮かべた。



「だと思ったから、ヒカリをキボウそっくりの顔にするようにあの時誘導したのに…貴女がヒカリちゃんを毛嫌いし、ヒカリちゃんと引き離せると思ったのに…」


モルガンは、初めて真顔になった。


「あたしは、中身で人を判断する主義なんでね。」


「そんなプログラミング…」

モルガンは、ハッと顔を歪ませた。



「あたしは、創造主の記憶や感覚、価値観をそのまま受け継いだから。それに、私程の魔力を読み取る能力の者は、この世界ではほぼ居ないはずだぜ。」


性格は全く違えど、優しい所や正義感の強い所は、ひかりお姉さんそっくりだ。


「こんなプログラミングは…」


モルガンは困惑し、瞳孔を小刻みに揺らした。


「プログラミング、プログラミング、うるさいな…そんなの無くても、上手くいくんだよ。じゃあ、シールド展開といこうか。」


「…!?」




六芒星は、モルガンを取り囲み手足の動きを封じた。


辺りに、朱色の爆炎が大蛇の如く荒れ狂う。


「ふふふ。そういう事だったのね…じゃあ、貴女を殺せば良い訳か…」


モルガンの声が、徐々に低くなっていく。


全身がみるみる硬くなっていき、そして樹木のような素材になっていく。


モルガンの身体がぐにゃぐにゃ歪み、両手が鞭を打ちそして身体がにょきにょき伸びていく。


口は真っ二つに割れ、髪もうねうねうねり樹木の幹のようになっていく。


純新無垢な天使の化けの皮が剥がれ、そこには歪な顔の奇怪な化け物が姿を現した。


辺りに、強烈なエメラルドグリーンの猛風が吹き荒れる。

それは、竜巻のようは怒り狂った龍のような凄まじさだ。


「ヒカリ、下がってろ!」

レティーが、ヒカリの前でサブマシンガンをかまえて妖樹に立ちはだかる。


「よ、妖樹…?」


ヒカリは、戦慄した。

これは、どういう事だろうかー?


あの、柔和で優しげなモルガンがこのような奇妙な姿をしている。


これが、本来の彼女の姿だろうかー?


「ちっ…コイツ、弱点を克服しやがったのか…?このままじゃ、ファンタジアがヤバい事になるぞ。」


レティーは眉を顰め、サブマシンガンを構えた。

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